予算委員会における集団的自衛権に関する総理とのやり取り | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

予算委員会における集団的自衛権に関する総理とのやり取り

 少し前のご報告で恐縮ですが、3月5日の予算委員会で安倍総理等に集団的自衛権の行使の問題について質問させていただきました。
 この委員会におけるやり取りの争点は、①総理のいう憲法の解釈とは、条文の解釈そのものの変更か、あるいは小松法制局長官(当時)が過日触れたあてはめの変更か、②閣議決定を行って、国会の審議を経ないままに法案の提出を行うのか、③国際法の授権する集団的自衛権であるにもかかわらず、総理の言う例は国際法違反ではないか、という点でした。
 ①については、法制局長官の発言を引いて質問したのに、長官は、学説であって法制局長官としてお答えする立場にないと述べました。自分の発言に責任を持てないひどい「逃げ」だと思います。
 ②については、総理は閉会中であっても審議する旨及び「国会から求められれば当然我々は御説明をするという義務を負っている」ことを初めて認めました。
 ③については、総理は集団的自衛権があくまで国連憲章に基づくものであることを理解されていないようで、国際法に基づく権利であることを理解して議論せねばならないのに、「国際法との関係についてつまびらかに判断をする立場にはございません」と述べたのです。しかし、自らの無知を認めない答弁にも限界があり、さらに追及した結果、外務省がたまらず、「憲法におきましても、政策といたしましても、国際法を、確立した慣習法を遵守するということでございますので、その範囲で当然やるということだ」と答弁するに至り、追い込まれた総理は、「答弁の時間もいつも長過ぎるというふうに言われて」いるので、舌足らずになったと、弁解にならない弁解を行ったのです。当然、小生の方からは、精緻な議論をといつも言っているのは総理なのだから、答弁に責任を持つべきと苦言を呈しておきました。

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 この予算委員会の質疑は、以下の通りです(私の質問の部分は、短縮するために要旨となっています)。長くて恐縮です。

大野元裕君
  総理は集団的自衛権に関して様々な答弁をされておられますが、二月五日の本委員会におきまして、集団的自衛権の解釈変更についても何度か言及をされておられます。総理が言うところの憲法解釈の変更とは、いかなる意味ですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 今までも、憲法解釈については自衛官が文民であるかそうでないかという解釈の変更はあったわけでございますが、その際は法制局の答弁、法制局長官の答弁であったわけでございますが、法制局というのは、長官が度々累次答弁をしているように、内閣に対する助言を行っているわけでございます。
 内閣としてこの憲法について、行政府として、内閣として解釈をしていくということになるわけでありますが、この集団的自衛権あるいは集団安全保障等々についての、またPKOもそうなんですが、憲法との関係について安保法制懇において今議論をしているところでございまして、様々な事態を分類をいたしまして、そうした分類におきまして、我が国の安全、そして国民の生命を守る上において今までの解釈でいいのかどうかということについての議論を行っているところでございます。そうした議論の結果を待ち、その上において法制局を中心に協議をいたしまして、必要であれば、必要ということになれば解釈の変更を行っていくということになるわけであります。

大野元裕君
 総理がおっしゃったとおり、文民条項、それ以外にも、安全保障に関連しては様々な形で憲法の解釈に関し政府の答弁が変わっているものがあります。例えば、戦力の保持であるとか、あるいはPKOに関する林法制局長官、高辻法制局長官の議論ですとか、さらには日本有事の際の公海における米艦防衛、これは中曽根政権時代だったと思います、こういった変化があります。これらは憲法の、しかしながら、解釈及び運用の変更には当たらないというのが政府の統一した説明、見解でございました。
 法制局長官、この見解は現在も維持を同様にされているかを教えてください。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 平成十六年六月十八日の島聡衆議院議員に対する政府答弁書、同じ答弁書でございますけれども、憲法の解釈、運用の変更に当たり得るものとして明示しているのは、憲法第六十六条第二項に規定する文民と自衛官との関係に関する見解のみでございます。
 御指摘の戦力、PKO、日本有事の際の国会における米艦防護に関する政府の一連の答弁で示された見解は、憲法第九条に関する従来からの政府見解の体系全体の中に整合性を持って位置付けられているものと認識しておりまして、憲法の解釈、運用の変更に当たるようなものがあったとは認識してございません。

大塚耕平君
 長官、今の大野委員の質問は、文民規定は憲法の解釈変更ではないかということを聞いたわけですが、もう一回答えてください。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 今まで政府が憲法の解釈、運用を変更した例というものは、六十六条二項の文民条項だけに関するものだけであるというのが政府の認識でございます。

大野元裕君
 改めて確認させていただきます。
 政府が唯一の憲法の解釈・運用の変更とされた六十六条二項の文民条項については、憲法の条文の解釈変更というよりも、時代に伴う自衛隊制度の変化により、変わらぬ憲法の精神に鑑み当てはめが変わったと、こういう認識でよろしいんでしょうか。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 お尋ねの、これは条文の解釈変更ではなくて当てはめの問題なのではないかという御質問でございますが、この条文の解釈変更に当たるのか当てはめの変更に当たるかにつきましては、突き詰めると用語法の問題に尽きるものと考えております。
 ただいまの文民の解釈につきましても、憲法の解釈を変更したものか、又は、法規範、つまり、シビリアンコントロールの観点から、武力組織の方は閣僚になることができない、こういう論理に自衛隊の性格の変遷というものを当てはめて、その当てはめの結果であるというような考え方もございまして、そこのところは議論があるところでございますと。
 この私の衆議院外務委員会における答弁は、文民と自衛官との関係に関する見解の変更については、政府自身が、内閣自身が憲法の解釈、運用に当たるということを閣議決定もして明示しているものではございますが、学者の方などの中には、これを当てはめの変更であると指摘される向きも皆無ではないという事実を踏まえて述べたものでございます。

大野元裕君 その後に、先ほど私がお読みしたところがあるんです。当てはめの問題はあるというふうにおっしゃっていて、先ほどの御答弁でも、その後、自衛隊制度がある程度定着をしてきたと、そこで変わったんだと、そういう御説明だったと思いますので、いま一度、法制局長官、私が先ほど読んだところ、客観的な事情が変化すると、その当てはめの問題というのはあるわけでございますという答弁について、もう一度御説明ください。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 憲法の条文自体の解釈の変更ということと、この当てはめの変更ということにつきましては、学者の方々の中にも、何がそれに当たるのかと、いろいろな御議論がございまして、非常に関係については微妙なものがございます。
 一説によれば、規範自体を変更したのではなくて、対象となった事象が変化したことによるいわゆる当てはめの結果が変わるということがあるのだという主張をされている学者の方もいらっしゃいますし、過去、例えば戦力の解釈につきまして、当初、これはかなり早い時代には政府は近代戦遂行能力という言葉でもって説明していたものを、その後、自衛のための必要最小限度を超えるものはこの憲法第九条二項で禁止されている戦力なのだと、こういう説明になっておりますけれども、ここは、内容を変更したのではないけれども、基本的な考え方には変更はあるわけではないが、説明ぶりを変更したものという考え方でございます。
 このように、憲法解釈の変更、当てはめの変更、それから説明ぶりの変更というものにつきましては、なかなか相互の関係は微妙で、どこからどこまでがどこに当たるのかということは微妙なことがあるということを申し上げているわけでございまして、その上で、繰り返しになりますけれども、憲法六十六条二項の文民の解釈につきましては、政府自身が閣議決定をもってこれは憲法解釈、運用の変更をしたものであるということを認定しているということを申し上げているわけでございます。

大野元裕君
 外務省になるんでしょうか。我が国の集団的自衛権の解釈についてはいろんな説があって、大体一九七二年から八一年ぐらいにかけて政府の解釈というものは定まってきたのではないかと言われていますが、この一九八一年以降、国際法上の集団的自衛権の概念は変化したのでしょうか。

政府参考人(石井正文君)
 集団的自衛権とは、国際法上一般的に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利と解されておりまして、このような概念に変化はないものと考えております。

大野元裕君
 そうすると、今までの議論を受けて総理にお伺いしたいんですけれども、国際法上の集団的自衛権の概念は変わっていないんだそうです。そうだとすると、六十六条の文民条項はいろんな説があるという話もありました。しかしながら、規範そのものに対する認識を変えるという意味でのいわゆる解釈の変更に当たるようなケース、若しくは、そうではなくて、規範は不変だけれどもその対象とする事象は変わったというケースの二例、学説があるというお話を法制局長官からもいただきましたが、今回もしも、集団的自衛権の解釈の変更、総理が踏み込んでおっしゃった言葉ですけれども、あるいはその適切な解釈について行うとすれば、これは当てはめが変わる方にはどう考えても当てはまらない。つまり、憲法そのものの解釈、規範を変えると、そういう理解でよろしいんでしょうか。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 集団的自衛権とは何かという御質問に対して、私は昨日も答弁いたしましたし、これは国際法上の概念であるということを申し上げているわけでございます。その国際法上の概念である集団的自衛権はどういうものであるかというのは、これは外務省の所管でございまして、今、石井国際法局長が答弁したとおりでございます。
 今議論をしておりますのは、従来、憲法の問題として例外的に武力を行使する場合があるのかという問題を議論してきておりまして、従来はるる説明を申し上げているような論理に基づいて、いわゆる自衛権に関する三要件、これを満たす場合を除いては武力の行使はできないと、これが憲法の規範だということを申し上げておるわけでございます。
 それで、今、そこのところの解釈というのを変更する余地があるのか、それで全く変更する余地がないのかということを議論をしているというわけでございまして、そこは変更して、これは結論出ておりませんけれども、武力行使もできる場合があるとすると、その部分というのは、国際法上は、憲法九条に基づいてできることであれば何でもやっていいというわけでは、当然のことではございません。これは、憲法には第九十八条二項というのがございまして、我が国が締結した条約及び確立された国際法規はこれを遵守すると、これも憲法上の規範でございますから、憲法上許容されるものであっても、それが国際法に照らしても合法でなければならないわけでございまして、そこの部分につきましては、それは集団的自衛権なのかもしれませんし、またその他の法理なのかもしれません。
 ですから、集団的な自衛権の行使、解釈を変更するのか、それは当てはめなのかという御質問は、ちょっと私は残念ながら理解できないわけでございます。

大野元裕君
 それは御質問を聞いていただいていないから理解していないだけの話です。
 集団的自衛権についての概念が変わっていないとすると、当てはめの方ではなくて、二説ある場合ですね、憲法の規範そのものの認識を変更するという方に、学説二つあるとすれば当たると思いますが、憲法規範そのものの認識を変えるということを総理はおっしゃっているのでしょうか。そういうことを総理にお伺いしているんです。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 今、学説に準拠して答弁はすることはできないわけでありますが、我々はそもそも、今法制局長官が答弁をさせていただいたように、自衛権はあると、そしてその自衛権の発動については三要件があるということでございますが、その中において、特に必要最小限というもの、今までの答弁の中におきましては、この最小限という観念を超えるものであると、集団的自衛権の行使についてはですね。
 そこのところについて、しかし、今国際情勢が大きく変わる中において、一国のみにおいて自国の安全を守ることができない、その前、例えば三要件の中において我が国に対する急迫不正の侵害ということがあるわけでございますが、事実上そういう状況もあるのではないか。我が国事態に至らなくても、事実上我が国の言わば生存権そのものに大きな影響があるのではないかということを議論をしているわけでございまして、そうした観点の中において、今まで、基本的な考え方の枠内の中における集団的自衛権の行使というものがあるのではないかということを議論しているところでございます。

大野元裕君
 次の議論に入る前に一つ総理に確認しておきたいんですが、これまでの累次の答弁の中で、法制懇の報告を受けますと、そしてその後に与党内で協議をしてもらって閣議決定、そしてその後、国会、法案等で審議をしていただくというこの段取りは変わりないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 基本的に、今、安保法制懇で様々な観点から議論を行っている、集団的自衛権の行使だけではありませんが議論を行っているわけでございまして、この結論が出るわけでありますが、当然この結論については皆様にオープンにさせていただくところでございます。
 今までも、中での議論については、代表的な議論については御紹介をさせていただき御議論をいただいているところでございますが、これを結論を得た上において法制局を中心に協議を進めます。そして、その中におきまして、当然、与党、自民党、公明党とも協議を進める中において、もし解釈が必要ということ、解釈の変更が必要ということになれば、我々は閣議決定を、与党と協議した上において閣議決定を行い、そして政府としての見解がそこで確定するわけでございます。
 当然、その上においては、国会からその説明を求められれば、当然我々には、その過程においても状況について御説明をしていくことは当然でございます。その上において、自衛隊がすぐに活動の範囲を変えられるかといえばそうではないわけでありまして、その上において自衛隊法等関連、この変更に関わる自衛隊の行動に関する法律等々についてはその改正が必要であろうと、こういうことになるんだろうと、このように思います。

大野元裕君
 少しずつ総理のおっしゃる憲法の解釈の変更、若しくは適切で新たな解釈というものが明らかになった気がいたします。
 というのは、憲法の規範そのものの中で、先ほど法制局長官がおっしゃった三つの要件の中で必要最小限の部分、生存権について変更する必要があるかどうか、ここの部分に焦点を絞っていくということであろうと私は今の御議論の中で理解をいたしました。
 私自身、実は個人的には、当然の話だと思いますけれども、生存権を含む基本的法益、これをないがしろにしてまで今のがちがちの解釈を維持するべきではないと強く思っています。
 しかしながら、私は、三つの理由から総理のおっしゃる今のプロセスについては反対でございます。閣議決定を行う前に十分に国会で審議を行うべきだと思っています。
 三つの理由の一つ目は、今議論したとおり、憲法そのものの基本、こういったものを変えていく、もしかすると六十六条と若干性質が違うような解釈の変更になる可能性がある。そうだとすると、憲政史上初めてのことでもあり、我々は国会でこれを議論するべきではないかというのが一つ目の理由です。
 そして二つ目は、これは国民的な関心事であるということであり、我々国民に選ばれた国会がしっかりと総理のお考えというものを承って、そして議論をすることを、国会で議論した上で閣議決定に臨んでいただくということが適切だと思っています。
 そして第三に、国際的な関心あるいは懸念、こういったものを呼んでおりますので、真に我が国の安全保障にとり集団的自衛権の行使が必要であれば、その行使の在り方について真剣に前向きに議論をするためにも、これ当然、法制懇の議論が出て、個別のケース、これ総理は何度もおっしゃっています、個別のケース大事ですよ。だとすれば、個別のケースが出た後に閣議決定、特に、もしも与党との議論が長引いて、閉会中に閣議決定で、次の国会が開かれたときには個別の法律が出てくる、こんな状況では私はあってはならないと思いますが、改めて、総理、国会における審議を閣議決定の前に尽くすという、あるいは国民の前にしっかりと示すということについてはいかがお考えでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 国会の日程との関係においては今ここで確かなことを申し上げることはできませんが、まだ安保法制懇の中で協議が続いているわけでございまして、結論を得るのがいつかということと、同時にまた、与党との協議がその後あるわけでございまして、いずれにいたしましても、国会開会中に結論が出た場合、結論というのは安保法制懇の結論が出た場合は、そのことは世の中に出ていくわけでありますから、当然そのことについて、国会が開会中、あるいはもし、いつ出るかということでありますが、いずれにいたしましても、国会、例えば国会開会中であれば、当然、こうした機会にこの結論についての御説明ということは当然できるわけでございます。
 また、万が一国会が開催されていない場合でも閉会中の審査ということは可能であろうと、このように思うわけでありますが、閣議決定に至るまでは、これ政府としての判断、解釈が確定していないわけでありますから、私たちの、政府としての解釈を確定的にその段階では述べる、安保法制懇の結論については述べることができるわけでありますが、閣議決定をしないと政府としての統一的な判断がこうなったということについてはその段階では申し上げることはできませんが、しかし、言わば安保法制懇で議論したことについて国民の皆様の前で、国会で議論するということは当然行われると、このように思っております。

大野元裕君
 第二次世界大戦後、あらゆる戦争は違法とされていますが、国際法の観点からその例外の一つとして集団的自衛権を国家に授権している法的な根拠は何ですか、教えてください。

政府参考人(石井正文君)
 集団的自衛権は国連憲章第五十一条におきまして、「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定されているものでございまして、国連憲章の起草に際して確立した概念であると考えております。

大野元裕君
 それでは外務大臣、我が国の憲法九十八条では国際法の遵守をうたっています。しかし、国連憲章や国連の慣習法、国際慣習法が求める義務について我が国はどんな拘束を受けて、もしもそれを破って例えば自衛権と称して武力攻撃を行ったような場合には、他国からどのような評価を受けることになるとお思いですか。

国務大臣(岸田文雄君)
 委員御指摘のように、憲法第九十八条二項は、日本国が締結した条約及び確立した国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする、こうした規定を設けています。国際社会における法の支配の確立、これは我が国の外交政策の柱の一つであります。国際憲章を含む条約及び国際慣習法が求める義務、これを遵守することは当然のことであります。
 そして、御質問の、こうした、国際法上正当な根拠がない場合、日本がこうした規定を破った場合どうなのかという御質問ですが、国際法上の正当な根拠がない場合、国際関係における武力の行使を行うこと、これは国際法違反であります。国際社会から違法な武力行使という評価を受けるということになると考えられますが、ただし、今申し上げましたように、国際社会における法の支配の確立を外交政策の柱の一つと位置付けている我が国は、国際憲章を含む条約及び国際慣習法を遵守すること、これはまず当然のことであります。そして、今御指摘の憲法九十八条二項においても、我が国が締結した条約、確立された国際法規を誠実に遵守するとされておりますので、我が国が国際法上違法な武力行使を行うことはないと考えます。

大野元裕君
 このような国際法が授権している集団的自衛権ですが、総理、お配りをしております資料にございますが、総理の国会答弁の幾つかを示させていただいております。その中で、「例えば、我が国の近くで武力攻撃が発生して、米国がそれに対応して集団的自衛権を行使している中において、攻撃をしかけた国に武器弾薬を供給しようとしている船舶を、米国からその船舶をとめてくれと言われても我が国は対応できない、それでいいのかどうかということですね。」とおっしゃっておられますが、これは国際法上の集団的自衛権を行使する対象ということでおっしゃったのでしょうか、確認させてください。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 今御指摘の例示は、安保法制懇の中での議論を紹介させていただいた事例でございまして、このような事例への対応は、国際法上は集団的自衛権の行使に当たる場合、そして国連の集団安全保障措置の一環としての対応に当たる場合、これは国連決議があった場合でありますが、その時々の状況によって議論が行われているところでございます。

大野元裕君
 我が国の近くで武力攻撃が発生する、それに集団的自衛権を行使している米国に対して非交戦国行為とみなされるような、例えば支援を行うということをどう検討をするんでしょうか、教えてください。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 今申し上げましたように、これは集団的自衛権の行使に当たる場合ですね、つまり、言わば、当たる場合と、今申し上げましたように、国連決議があった場合は集団安全保障措置の一環としての対応ということになるわけでありますが、前者の場合においては、その当該の言わば米国に対して攻撃をした国に対して武器弾薬等が運ばれているという状況の中において、その船舶に対しての措置を行うことが集団的自衛権の行使に当たるのかどうかということ等について今検討しているところでございます。

大野元裕君
 で総理は、我が国の近くで武力攻撃が発生し、米国がそれに対応して集団的自衛権を行使している中で、我が国は何をするかとおっしゃっておられます。
 ニカラグアのICJ判決では、慣習国際法上、武力攻撃の犠牲者とみなす国の要請がない場合に集団的自衛権の行使を許す規則はないとしており、集団的自衛権を行使している最中の米国に対して我が国がそういった行為をなすということは、国際法上規定がないのではないでしょうか。

政府参考人(石井正文君)
 御指摘の一般国際法上の集団的自衛権の行使の要件は何かということについて申し上げますと、ある国家が集団的自衛権を行使するための要件は、武力攻撃を受けた国からの要請又は同意があること、他に手段がないこと、必要最小限度の実力の行使であることというふうに一般的に考えておるということでございます。

大野元裕君
 外務省のおっしゃるとおりだと思います。集団的自衛権を行使しているアメリカに対して、日米同盟はあるわけですけれども、それに対して非交戦国と見られるような行為を行うことは、もう一度お伺いをいたしますけれども、国際法上は許されていないのではないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 今、私が今御紹介した事態に対して国際法との関係についてつまびらかに判断をする立場にはございませんが、安保法制懇の中において、そういう事態の中において、同盟国である米国に対する攻撃が発生して、そしてその事態が、例えばその事態が我が国に及んでくるということも容易に考えられるという状況もあるわけでありまして、その状況の中においてどう判断するかということであります。
 そして、それは例えば、昨日も紹介させていただいたわけでありますが、当該国のその紛争地域となったところにおける邦人の救出等について米軍に依頼しなければならないという状況がある中においてのそういう状況も考えられるわけでございまして、そうした様々な可能性の中から議論が行われているということでございます。

大野元裕君
 違うんじゃないですか。おっしゃっていることが、今米国に対する攻撃がある場合にと、それはそのとおりだと私も思いますけれども、総理がおっしゃったのは、我が国の近くで武力攻撃が発生して米国がそれに対応して集団的自衛権を行使している中において、ということは、米国に対する攻撃はここで述べられておりません。
 そして、先ほど精緻な議論というふうにおっしゃいました。精緻な議論とおっしゃって、既にこれ答弁として総理がなされたことでございますので、私はこれは不適当な例だと思いますけれども、もう一度、これは撤回されるおつもりはありませんか。

大塚耕平君
 外務省にお願いします。総理によく御理解いただけるように、八六年のニカラグアの国際司法裁判所の集団的自衛権行使の要件をちゃんと説明してください。

政府参考人(石井正文君)
 今、ニカラグア事件の判決そのものを私持っておりませんが、一般的に申し上げますと、先ほど私申し上げたとおりでございまして、ある国家が集団的自衛権を行使するための要件は、武力攻撃を受けた国からの要請又は同意があること、他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力の行使であることということで、このラインに沿って判決も積み立てられていたと承知しております。

大塚耕平君
 今、大野さんが繰り返し質問しておられるのは、総理や法制懇が御検討、御発言になっている内容はその要件の現に武力攻撃を受けているというものに該当しないんじゃないかということを聞いておられるんですが、正しいですね、この考えは。

政府参考人(石井正文君)
 この問題について私が具体的にお答えするのが適当かどうか必ずしもあれでございますが、今、私の理解するところは、総理がおっしゃっておりますのは、まさに懇談会の中で今議論が行われている事態についてこういう議論が行われていますよということで紹介をなさっているということだと思います。
 その上で、政府としてどう対応するかということは懇談会の報告を受けて別途考えるということも総理おっしゃっているところでございまして、その際、当然政府としての対応と申しますのは、岸田外務大臣が申し上げましたとおり、国際法に沿った形で行われると、これは憲法の要請でもあるということだと思います。

大塚耕平君
 議員の皆さんは今の三要件聞いていただいたので分かったと思いますので、今の外務省の発言に関連して法制局長官に聞きます。
 今、外務省は自分たちが解釈する立場にないと言いましたが、昨日、法制局長官は国際法の解釈は外務省の所管であり内閣法制局の所掌ではないと発言されましたが、その法的根拠は何でしょうか。法的根拠ですよ。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 突然のお尋ねでございますので、条文は持っておりませんけれども、外務省設置法の所掌事務の規定がございまして、私の記憶では、その所掌事務の中に国際法の解釈、適用、実施というものが外務省の所掌事務として明記されているというふうに記憶してございます。

大塚耕平君
 その矛盾を解決してください、今。外務省は自分の仕事じゃないって言ったんだから。

政府参考人(石井正文君)
 申し訳ございません。私が先ほど私が申し上げていいのかというふうに申し上げましたのは、総理がおっしゃいました懇談会における議論、それをクオートされたことについて私がどうこう申し上げるというのは差し控えた方がいいかという意味でございまして、国際法の解釈については、今法制局長官からもございましたように、私が当然責任を持って、大臣の下で責任を持ってやらなきゃいけない仕事だと思っております。

大塚耕平君
 ということは、先ほどの三要件に適応しない状況の中で集団的自衛権の行使を日本が後々行うということについては、外務省はどういうお立場でしょうか。

政府参考人(石井正文君)
 これまた岸田外務大臣の答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、政府といたしましては、憲法におきましても、政策といたしましても、国際法を、確立した慣習法を遵守するということでございますので、その範囲で当然やるということだと考えております。

大野元裕君
 国際法があくまでも授権しているこの集団的自衛権に関して、大臣がおっしゃったとおり、国際法を遵守するのは我が国の義務だと私は思っております。
 そういった中で、総理が御紹介をされた、総理の多分勘違いではなくて紹介されたということですから、集団的自衛権の行使は武力攻撃を現に受けているという当該国からの要請がなければならないということでございますので、このケースには私は当たらないというふうに思います。そこについては改めて御認識を新たにしていただきたいと思います。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 当然、安保法制懇で議論をしていることは、国際法上、集団的自衛権の行使に当たらないというものについて、それを当たるということに変えていくものではないわけでありまして、国際法の中において、つまり逆でありまして、つまり、国際法上と集団的自衛権については、国際法上は権利があるけれども我が国の憲法上は行使できないという、この考え方であります。
 そして、その中において、言わば国際法上の中における多くの国々が行える権利について、我が国の、我が国においてもそれを行使できる範囲があるかもしれないということについての議論を行っている、個々の事例について議論を行っているわけでありますが、今申し上げました事例については、我が国近傍で、我が国近傍ということでありますから、言わば米艦、米国が、そこにおいて米国が攻撃を受けなければ、例えば、密接な関係にある、密接な関係がある、それは言わば米国が攻撃を受けているわけでありまして、米国に対しての攻撃が発生をしなければならないわけであります。
 つまり、言わば近傍における武力攻撃事態があり、米国が更に攻撃を受けているという状況の中において、米国が攻撃を受けている、米国が攻撃を受けたという状況の中において、米国側から依頼があり、その艦船を止めてくれということでありますから、言わば米国に対する攻撃が発生していて、その当該国から依頼があると、こういうふうに私は理解しているところでございます。

大野元裕君
 米国の攻撃がなければならないということはここには書いてないんですよ。総理の答弁ですよ、これ。総理の御答弁ですよ。しっかりと、総理というしっかりとした、それだけの責任を負っている方が、精緻な議論とおっしゃったのは御自身ですからね、そこについては、だったらこのときにはこういうことですというのをやはり付け加えるべきだろうし、あるいは訂正するべきではないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 それは、こういう中で答弁を行っているわけでありますから、答弁の時間もいつも長過ぎるというふうに言われておりますので、その中で答弁をしているわけでありますが、当然、私は同盟国との関係においても述べているわけであります。もちろん、集団的自衛権の解釈は必ずしも同盟国に限られているということではございませんが、その中において、近傍の国において、に対する武力攻撃があって、そしてその中で集団的自衛権の行使する米国が攻撃、米国が攻撃されてということを私は申し上げているわけであります。
 だから、米国に対する攻撃は発生しているわけでありまして、その上において、要請がなければ、要請があってその船を止めてくれと言われても止めなくてもいいのかと、そういう議論であります。

大野元裕君
 国際法の要件について舌っ足らずで済ますのは、私は済まないと思いますので、是非そこのところは正確に、総理が精緻な議論とおっしゃっているわけですから、精緻な議論をお願いをさせていただきたいと思います。
 北岡法制懇の座長代理が、集団的自衛権行使については五要件を付ければいいんじゃないかという話が出ています。しかしながら、国際法は授権しています、その中で我が国の制約がある、これは分かります。しかし、だったらこの国際法の原理というのは当然守らなければいけないもので、遵守しなければいけないものであるというのは、外務大臣がおっしゃったとおりです。
 この五要件の中で、私の理解では、二つ、つまり、放置すれば日本の安全に大きな影響が及ぶ場合及び国会の承認、これを除くと明示的に集団的自衛権が慣習法として要請をしている三つの要件にすぎず、これをわざわざ国内で定める必要もないのではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。

政府特別補佐人(小松一郎君)
 誠に恐縮でございます。私がお答えするのが適当な問題か分かりませんけれども、この安保法制懇で北岡座長がいかなることを、本当におっしゃっているのかと、五要件ということをおっしゃっているのかどうかということについて、私は直接聞いたわけでもございませんし、多分、政府の中で直接聞いている方がおられるのかどうか私も分かりませんので、政府としては答える立場にはないのではないかと考えます。

大野元裕君
 集団的自衛権に関する議論について今進めさせていただいてきて、総理の先ほどの舌足らずというんでしょうか、そういった答弁もありました。また、外務省の方から、政府がやっているわけではないので、法制懇でやっているものなので法的手当てについては今のところ、現時点ではお話しできないという話もありました。さらに、これ余り議論は深められませんでしたが、既に国際法上の要件になっているものがわざわざこんなところに盛り込まれている。
 だからこそ、私最初から申し上げているのは、閣議決定の前にしっかりとここで議論をして、そして練り上げた上で国民的な御理解を得る、そして国際的な理解も得る、これが重要ではないかということを最初から申し上げているわけでございますけれども、総理、改めてお伺いします。これ、時間を掛けて十分に国会の中で議論をするようなお時間を閣議決定前にいただけないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)
 従来から答弁をさせていただいておりますように、安保法制懇において、様々な状況について、言わば日本国民の命、そして国益を守る上において様々な事態でこの行使について、自衛隊の活用について、憲法の解釈に今までの解釈とは抵触するという可能性があるということについて、事態について議論をしているわけでございますが、その結論が出た上において、出た上において、先ほどの議論もそうなんですが、それが出た上において法制局を中心に、そこで結論が出てから法制局を中心に政府で議論を進めていくわけでありますが、もちろん与党と調整をしていく中においてですね。そこで政府が初めて議論を固めて、議論が固まった段階で政府の立場について、先ほど二つの事例についてお話をさせていただきました、二つの事例につきましても最終的にどうなるかということは今の段階では分からないわけでありますし、今の段階では安保法制懇の議論がまだ結論が出ておりません。
 結論が出た後について、政府としてそれをどう解釈するか、あるいはその結論に対してどう憲法との整合性が付いていくか、あるいは解釈の変更が必要かどうかということを政府として決めていくわけであります。当然、それは更に深い議論を、深い精緻な議論をしていく必要があるわけでありまして、その上において閣議決定して政府の立場が決まるわけでございます。
 決まった段階においては、決まればそこで当然我々は政府の立場として、政府としての解釈についてここでお答えをすることができるわけでございますし、さらに、その上において自衛隊法を改正をしていく必要が当然あるんだろうと、こう思いますが、自衛隊法を改正していく上において様々な、これは言わば縛りが掛かるということもあるでしょうし、国会との関係も定まってくるということもあるんだろうと。より具体的に、実際に、できる権利は持つけれども、さらに実際にできることが法的に決まっていくわけでありまして、当然そこでは国会で御議論をいただかなければ法律は成立をしないわけでありますが。
 その間の議論についてどのように、その一番前の議論ですね、ですから閣議決定する前の議論については、これはまた国会との関係において国会でお決めになることだろうと、このように思っておりますし、我々は求められれば当然その段階における結論についての御紹介はさせていただきますが、しかし、その段階においては、先ほども御説明をさせていただきましたように、政府としての立場が決まっておりませんから、私たちはこうですよという確定的な答弁はできないわけでありまして、言わば法制懇の議論の御紹介ということでしかないと、こういうことになるわけでございます。
 いずれにいたしましても、今日も大野委員また大塚委員とも中身についてのある程度の議論をさせていただきましたが、実際はまだこれは安保法制懇で決まっていない中の議論の一部を私の記憶の中で御紹介をさせていただいているということでございますが、いずれにいたしましても、国会から求められれば当然我々は御説明をするという義務を負っていると、このように思います。