国民の人権を侵害しかねないPSCS協定実施法で質問を行い、付帯決議を付しました。 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

国民の人権を侵害しかねないPSCS協定実施法で質問を行い、付帯決議を付しました。

 5月27日、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施(PCSC協定実施法案)の審議に際し、内閣委員会で質問に立たせていただきました。

 この法案は、両国政府が、これまでは日米犯罪共助協定(MLAT)に基づき、指紋を含む犯罪捜査の証拠の交換を行ってきたのに対し、犯罪捜査情報の内、指紋情報と人定事項等に絞って、オンラインで迅速に情報の交換を行おうために締結した協定を、国内で実施するために定める法律案です。両国捜査当局の捜査のための情報交換の迅速化は、テロ防止等の観点からも好ましい方向ではあるものの、国民の人権に配慮する担保が制度として甘いという致命的な欠陥を抱えていました。
 また、MLATでは、法務大臣及び国家公安委員長が情報提供の可否等について判断の責任を負っているのに対し、この実施法では、警察庁長官がひとえに責任を負っています。いったん法律が通ってしまえば、警察は捜査に関連するためとして、情報を国会等に提供しないことがほとんどであり、また現在の日本の警察制度では、警察の独立を担保するために、警察庁に政治家はおらず、政治家の国家公安委員長が長を務める国家公安委員会が全体として警察を管理する責任を負うのみです。つまり、公務員としてもっぱら法執行責任を負う警察庁長官は、ともすれば法執行と国民の人権配慮、国際協力等のバランスの採れた見方をなおざりにしてしまう危険があるにもかかわらず、この法律では政治家が関わる制度になっていないのです。

 このため、私は党内を説得し、衆議院で通過した法律ながら、修正案を提出すべしとして、急きょ修正案を作成し、与党と折衝し、米側に提供した情報を目的外使用もしくは第三国に渡す場合には、警察庁長官が事前に国家公安委員会から同意を得る制度を提案しました。しかしながら、政府与党は頑強に抵抗し、参議院で対案を示して反対するか、あるいは付帯決議等で担保して賛成に回るか、というぎりぎりの交渉を迫られました。結局、このままでは、国民の人権がないがしろにされたままの法律になりかねないため、本来の思いとは異なるものの、この件以外にも懸念されるいくつもの事項について、将来における政府の法的措置を検討させる条項を盛り込んだ付帯決議(本文末尾)を付すことで、賛成し、結果、本法案は可決されたのでした。

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 このPCSC協定実施法に関する内閣委員会の質疑は、以下の通りです(私の質問の部分は、短縮するために要旨となっています)。

大野元裕君 
 PCSCの協定及び実施法を質問する前に、この1週間の間に埼玉県警が誤って約二千四百人を道交法違反で逮捕をしていたことが判明する、パソコン遠隔操作事件で、五人が拘束され、起訴された以外の二人が自白していたと自白強要が疑われる、男性警察官が電車内で男性に痴漢をして逮捕される等の不正事件が相次いでいます。先般の秘密保護法もそうでしたけれども、政府の情報を守るために、教唆でさえ処罰の対象にするようなことを政府側はしているわけですから、警察に対する信頼確保という観点からもしっかり措置いただきたいが、いかがでしょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 今、警察官の不祥事あるいは誤認逮捕等、今警察が抱えている問題について、ファクトベースでの御指摘がございました。私も、こういう事件が残念ながら起きてしまった、極めて遺憾でございます。したがって、まずこの誤認逮捕の問題でございますけれども、これについてはやはり新手の犯罪ということは言えると思います。こういった教訓をしっかり生かして今後の捜査の向上、技術の向上に生かしていくということが極めて大切であります。
   (中略)
 それからもう一つ、懲戒処分を受けた者の数、一番多かったのがたしか平成十四年に五百六十八人という数字でございまして、そのときにも警察官の不祥事を撲滅しようということでいろんな取組をいたしました。その結果、平成二十一年には二百四十二人に減少しましたけれども、残念ながら二十二年から増加傾向で、二十四年では四百五十八人ということになりました。私も国家公安委員長としてこの問題は極めて問題視をさせていただきまして、やはり国民の信頼と期待に応える強い警察、これをしっかり確立していく必要があると。
 そもそも日本の警察は、例えば刑法犯の検挙率でも世界一ということもあって、そういう資質はあるはずであります。しかし一方では、こういった懲戒処分等の不祥事がこれだけ増えたということで、今その徹底的な取組をさせていただいておりまして、その結果として、二十五年には三百八十九人に減少いたしましたけれども、改善の兆しは若干見えているというところだと思います。
 しかし一方では、今後とも、やはり警察において、幹部の警察官はもちろんでございますけれども、現場の一人一人の警察官に至るまで規律と士気を高めて、やはりそういった気持ちをしっかり持ちながら職務に精励をしてもらうということが、これは基本でございますので、私どもとしても、そういった視点に立って国民の期待と信頼に応える警察になれるように、公安委員長としても警察を徹底的に督励をしていきたいというふうに思っております。

大野元裕君
 公安委員長、三百八十九名に減ったという胸を張っていただくところではないと思います。私自身、与党時代に民主党の中の警察PTの事務局長として、とにかく警察のいいところをPRさせていただくが、悪いところはしっかりと究明しようというスタンスで臨ませていただいたので、これは警察に対する信頼というのは極めて重要で、絶対に失われてはならないものだと思います。
 さて、日米間の捜査に関する情報の相互提供につきましては、MLATとPCSC協定についての比較を一覧にさせてお配りをさせていただきました。
 つまり、本協定及び実施法が施行されれば、両国間の情報の提供のうち、指紋の情報やあるいは主として人定情報に関しましてはオンライン等を通じた措置により迅速化をする。その一方で、これらの情報がより迅速で容易に提供されるということは、国民の個人情報がより簡便な形で提供されるということを意味しており、それは万全の措置で予防されなければならない。つまり、円滑な法執行、国際協力、さらには国民の人権、これらはバランスが取れた形で政府として責任を持たなければいけない。
 ところが、既に安倍政権は、特定秘密保護法案の審議を通じて明らかになりましたけれども、専ら国家の安全保障や行政上の手続を理由に、監査の制度をないがしろにし、国民の人権を軽んじるという政治姿勢を示し、国民の批判を集めてきました。本協定においても、人権に万全な措置をとらなければ、そういった御批判が評価として定着しかねないと懸念しています。
 そこで、まずは国家公安委員長に対して、これらのバランスをいかに取るのか、お伺いしたいと思います。

国務大臣(古屋圭司君)
 警察法の二条一項に規定がございまして、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、公共の安全と秩序の維持に当たることをその責務とされています。また、二項では、憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することはあってはならないと。こういうことで、もう委員御承知のように、警察法の第二条にそういう規定がされておりまして、警察は常日頃からこの規定をしっかり心に刻んで、人権の保護とそして警察の捜査とのバランスというものをしっかり取りながら警察の職務の執行に努めてきておりますが、私、国家公安委員長として、やはり常々警察活動とそれから人権保護のバランスを取る、極めて重要ですから、やっぱりそういったことをしっかり私自身も強く認識をして、今までも警察庁を督励してまいりましたし、今後とも国家公安委員長としてそういう考え方にのっとって取り組んでいきたいというふうに思っております。
 この協定の運用に当たりましても、やはり両者のバランスをしっかり取って、適正にその運営が確保できるように、国家公安委員会の委員長として警察庁を指導、そして督励をしてまいりたいというふうに考えています。

大野元裕君
 それでは、そういったその姿勢に従って、本法、本協定で人権の保護がしっかり担保されているかについて検証したいと思います。
 まず、警察庁に伺いますが、ICPOを通じて、過去に我が国からアメリカに対して提供した情報の件数及びMLATに従いアメリカ側に捜査情報を提供した件数はどの程度でございましょうか。

政府参考人(栗生俊一君)
 平成二十三年から二十五年までの三年間の数字で申し上げます。インターポールルートで米国から指紋情報の照会を求められたのは二件でございます。
 また、法務省によりますと、平成二十二年から二十四年までの三年間において、MLATに基づく米国からの捜査共助受託件数は十一件であると聞いております。

大野元裕君
 今のところ、その程度なんです。本協定が定めている目的外使用、あるいは第三国への提供について本協定は定めていますけれども、具体的にどのようなケースを想定されているのか。

政府参考人(河野章君)
 協定の第八条に規定がございます。第八条、情報の処理に関する制限というところでございますけれども、もう大野委員よく御承知のとおり、この協定は犯罪の捜査のための人定情報等のやり取りをするということになっておりますけれども、相手方、相手国から提供された情報の利用目的を限定しております。その協定に定める目的以外のところについての使用ということが必要が生じた場合には、そのような利用について相手国に対して、情報提供した国に対して書面により事前の同意を求める必要がございます。また同様に、第三者に開示する必要があるときにも書面による同意というのがなければいけないとなっております。
 このような、どのような場合にこれらの必要性が生じるかということにつきましては実際の運用において個別に判断することになりますけれども、この協定の元々の作りというのは、先生今もおっしゃったとおり、捜査の必要ということとそれから情報の保護ということで、提供される人定情報等の利用については非常にその目的というものを限定しておりまして、その目的外利用についての規定はございますけれども、これは、この規定があることによって目的外使用というものを当然に前提とするというよりも、この協定に定める目的においてのみ情報は使用できて、目的外に使うときには書面による同意が必要であるという、そういう手続を定めたものでありまして、この目的外使用というものがどんどんどんどん起こるということを想定したものではないということを申し上げたいと思います。

○大野元裕君
 手続については既に私がお配りした中で細かく書かせていただきました。今のお話ですと、済みません、想定はない、どういった形で目的外で利用するのか、第三国に提供するかについてケースを想定していないということでよろしいんでしょうか、改めて教えてください。

政府参考人(河野章君)
 この協定におきまして提供される情報というのは非常に個人情報という機微なものでありますので、捜査の目的とか本来それを必要とする目的に限定するというのが基本でございます。その中で、もし仮にそういった目的外の利用が必要になってきた場合に書いておるということでありまして、この協定の中で当然にそのような目的外利用があるということを想定して作られておる規定ではございません。

大野元裕君
 この一覧を見ていただくとお分かりになると思うんですけれども、提供の条件で二次照会やあるいは条件付の提供、さらには目的外の利用というときの手続が示されています。また、これまでなされている日米の間のMLAT、先ほどから申し上げている国際刑事共助条約に関して言うと、これも簡便ではありますけれども手続が示されています。
 MLATは、提供する責任者は法務大臣若しくは国家公安委員長で、そして指定する者がこれを提供しますけれども、判断は政府が行うことになっています。このPCSC協定も政府が行いますが、実施の法律を見ると全て主語は警察庁長官です。
 本来、法のバランスを取るためには、MLATでは大臣ですから、こちらでも大臣にするべきだと思います。もちろん、具体的なケースが想定できるのであれば、迅速化を図るために警察庁長官でもいいと思いますよ。警察庁の中には政務はおりませんよね。要するに、公安委員会が管理をするという形で監督をされておられるわけであって、例えば副大臣も、当然政務官もおられないわけです。全く政務が、つまり政府が本来判断をするべき。しかも、先ほど河野さんはおっしゃいました、とても機微な情報ですとおっしゃいました、それを想定もしていないのに、なぜか手続だけは役所がやる。これは納得できない。公安委員長、これでよろしいのでしょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 先ほども答弁させていただいたことにも関連するんですけど、警察法第二条の規定がございますので、人権保護とのバランスを図りながら警察の職務を執行していると、こういう現実ですし、私も警察活動と人権保護のバランスを取ることの重要性を常に認識しながら警察庁を管理しているところでございまして、この法案については、米国からの照会について回答する国内連絡部局を指紋情報等の保有機関である警察庁ということにしていますけれども、米国に提供する情報は証拠として用いるということは前提にしておりませんし、また、警察庁が既に保有している氏名とか生年月日等の事項とか刑事処分の経歴といった情報に限定をされるということなので、先ほど御指摘あったMLATと同列に扱う必要はないのではないかなという印象を持っております。
 国家公安委員会としては、やはり協定の実施状況について必要な報告を常に求めるということを通じて運用の適正が図られるように、警察法に基づき警察庁を適切に管理をしていくと、こういう考え方でおりますので、その管理下で警察庁による同意の運用の適正化を図っていくべきだと、こういうふうに考えています。

大野元裕君 
 大臣のことは信じています。ただ、立派な大臣であればいいんですけれども、もちろんいろんな方おられて、制度的担保が必要だという話でお伺いをしているんです。事前のレクでお伺いしたんですけれども、目的外使用をあえて言えば、裁判における使用を目的とするようなケースが考えられますと聞いています。大臣、今、証拠としては採用されない、証拠としては前提としていない、しかし、目的外使用では裁判を前提としているというお話を伺っていますので、裁判で取り上げられるものは私は証拠というんだろうというふうに私は考えておりますので、ちょっとそこのところは理解の相違があります。
 いずれにせよ、これ裁判で日米でもしも使用される証拠につきましては、手続として、先ほどから取り上げているMLATの方で規定をされています。ところがこのMLATは、先ほど申し上げたとおり、法務大臣が責任を負っております。本協定によって知り得た情報が裁判で利用されるという場合も、法務大臣が判断をするべきではないかというふうに思うんです。つまり、証拠として採用されて、それが裁判で利用される場合には。
 これ法務省にお伺いしますけれども、PCSCを基に提供されたとしても、目的外使用で裁判で取り扱われるときには改めてMLATの方で手続に法務大臣の関与を得てやるということでよろしいんでしょうか。

政府参考人(上冨敏伸君)
 御指摘のとおり、日米刑事共助条約に基づいて米国から共助要請があった場合、法務大臣におきまして同条約三条の政治犯罪性等の拒否事由の有無を判断して共助要請に応じるか否かを決定しております。
 一方、当局といたしましては、実施法案第四条に基づいて提供される追加情報の、その目的外使用に関しまして、必ずしも法務大臣が同意をするか否かを判断しなければならないものとは認識しておりません。同意の判断主体、判断手続等につきましては、本協定及び実施法案の趣旨、目的等に照らして定められるものであると考えておりますので、その具体的な在り方につきましては、本協定及び実施法案を所管していない当局においてはお答えする立場にはございません。

大野元裕君
 法務大臣、大臣が政務としてしっかり責任を持っているところで、入口としてMLATで来たものについては法務省が責任を持たれる。裁判でも使われる。しかし、PCSCの方で目的外利用で裁判で行われるときには、何の政務の責任も経ないで、法務省の方から行くべきルートであっても、法務大臣に必ずしも同意を求めるわけではない。つまり、入口によって実は変わってしまうんですね。その制度的な担保がこちらではなされていないんですよ。
 法務省の方から本法案の趣旨に基づき云々という話がありましたけれども、だからこそ、この本法案の担保のところが危ないと考えます。大臣が冒頭におっしゃったとおり、人権に対して配慮をする、そこはしっかり国家公安委員長として見ていく、であれば、これは制度的に問題があると、これが私の一番大きな問題意識であります。
 本協定から来る場合には、指紋情報が自動でやり取りされます、二次情報が照会されます。そして目的外使用を求められたときには、少なくとも、法務大臣の意見を求める、あるいは政務がしっかりと監督していくべきではないでしょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 先ほど答弁申し上げましたとおり、警察法の二条がございますので、やっぱり個人の生命とか身体、財産の保護、一方では警察の捜査、このバランスをしっかり取ると。もちろん、第二項では憲法の遵守義務も入っておりますので、しっかりそれを認識して取り組んでいくということが大前提でございますので、そういう考え方からすると、この協定の趣旨と、それから、法律の実際の運用に当たっても、必ずしも法務大臣の今御指摘のような助力を得なくても、国家公安委員会と警察庁においてその適正な運用を確保できるというふうに私は考えておりまして、そのように国家公安委員長としてもしていきたいというふうに考えています。

大野元裕君
 大臣は大変人がいいんだと思います。性善説でお考えなんだと思います。
 制度的担保というのは、これが機微な情報だからこそ、最悪の場合になってもやはりそこを担保する、あるいは、警察庁の信頼を国民から得るためには、こういう制度ができていますよとしなければならない。警察の多くの方は一生懸命やっておられることは承知しています。ただ、制度的な担保として、MLATは法務大臣が責任を持つんです。法案に書かれているんです。しかし、法の中での制度的担保はなされていないというふうに私は理解をしているんです。
 性悪の大臣や警察官がいるとは言いませんけれども、やはり本協定の実施に際しても、本来、警察庁の長官は法執行だとか日米の警察当局の協力を円滑に進めようとか、どうしてもそういったことが先に、優秀な官僚であればあるほど、そうお思いになるんだと私は思いますよ。
 そうだとすると、バランスの取れた形、つまり、先ほども一番最初に申し上げました、法執行、国際協力、人権への配慮、こういったものをバランスを取っていくためには、法律において制度的な担保をするべきである。そこはバランスを欠くような状況であってはならないし、同じ結論だとして、ルートが違うだけで証拠になるとすれば、やはりそこは同じように制度的な担保を政務として負うというのが法律の責務ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 今、私ども警察の国家公安委員会制度とほかの省庁のシステムの差のようなものを御指摘いただいていると思うんですが、警察法というのは、あえて、ほかの省庁のように言わば通常の大臣制じゃないんですよね。いわゆる公安委員会制度を採用して、どういう方が公安委員長になってもその中立性を担保するという立て付けになって警察を管理運営することになっておりますので、法務省とはやはり警察というのは異なりまして、この公安委員会がしっかりとした管理をするということによってこの協定の運用を図っていくということに尽きると思います。
 この考え方はもうずっと公安委員会制度ができてからの長年の伝統と確立されたものでございますので、私もそういう考え方にのっとって、国家公安委員長として対応していきたいというふうに考えております。

大野元裕君
 不十分な御答弁です。
 国家公安委員会の制度改革について、パンドラの箱を開けるようなまねを私はするつもりはありません。私が言っているのは法的な担保。
 具体的に申し上げましょう。例えば、本協定では、私の理解によれば、第一ではオンラインで迅速に捜査協力を進めましょう、二番目に、それに基づく二次照会として必要な場合には人定事項等を提供するということを定めています、第三に、目的外の利用あるいは第三国への提供の規定というものを三段階ぐらいで定めているんだと理解をしています。もちろん、全てにおいて国家公安委員会が全部一々見ろということをやったら、迅速化という目的から離れてしまいますから、そんなことを私は申し上げるつもりはありません。しかしながら、最後の、なかなか想定ができない、しかしながら機微な問題だよというふうに河野さんもおっしゃられたような、いわゆる目的外使用や第三国の提供に対する同意という第三番目の点については、少なくともそこだけは政治が関与するべき。
 しかし、国家公安委員会が独立して、しかも委員長としてではなくて国家公安委員会として、いわゆる様々な皆様の御意見もいただいた上で様々な管理をされるということであれば、委員会ですから、そこのマンデートとして担保するためには、国民の人権を守り、警察の信頼を確保するという両方の観点からも、第三国への提供や目的外利用の判断のところでは、一番最後のところだけは国家公安委員長が関与するような制度的担保をすることが、公安委員長がおっしゃっている、一生懸命管理します、誠実に適正にやりますということを国民に対してもきちんと裏打ちをすることになるのではないかと思います。それができないという、それは適切でないとされる理由を、改めて伺いたい。

国務大臣(古屋圭司君)
 警察法上、警察庁長官は国家公安委員会の一般的管理に服しているということを鑑みますと、委員が御指摘をされている言わば目的外利用とか、第三者への提供のみに係る同意のみを取り上げて国家公安委員会の関与を法律上の要件等とするということについては、私はある意味で慎重な検討が必要であるというふうには考えていますけれども。
 一方、国家公安委員会としては、協定の実施状況について必要な報告を求めることができますので、現実にそういう必要な報告を求めて運用の適正を図っていく、こういう対応をすべきだと思いますし、私としてもそういう考え方にのっとって警察庁をしっかり指導監督をしていく、これが国家公安委員長としての責務であるというふうに考えております。

大野元裕君 委員長、実は私が一番最初にこの件疑問に抱いたのは、事前の警察庁のレクで、どういう形で公安委員会に承認を求める、あるいは報告するんだと、こういう話を聞いたときに、その件数、第三国への提供や目的外利用の同意についてはその件数については報告をするつもりがありますという話なんですよ。
 今、報告を受けるというお話がございました。しかし、先ほどから言っているように、人定事項のような非常に機微な事項です。そして、MLATで定められているのとバランスが取れていません。なおかつ、第三国の提供については、アメリカはファイブアイズのように英語をしゃべる国々との間で情報の交換提供を行っている。そういった様々な環境に鑑みれば、私は、単に件数の報告だけでいいのか疑問だと思っています。
 だからこそ、当初は、修正法案を出させていただこうと思ったんです。そこについては担保する、あるいは、この全部警察庁長官と書いてある主語、ここのところを何とかしなきゃいけないと思ったんです。ただ、与党側から芳しい反応はいただけなかった。そこで、我が党としては、先ほど理事会でも諮っていただきましたけれども、とにかくこれ何もなしで通すというのはちょっと厳しいなと思って、そこについては、附帯決議を百歩譲ってお願いをさせていただくという形にしたんです。
 公安委員長、今の段階でこれを修正するというのはなかなか難しい、若しくはお約束されるというのはなかなか難しいとしても、例えばですけれども、本法案の実施後、実施の状況を見た上で、公安委員会の事前の承認を得るような法的な措置を含めて判断されるべきだと思っていますけれども、いかがでございましょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 まず、国家公安委員会としては、やはり警察法に基づく管理の下で適切な運用を図るということはもう当然のことでございますけれども、今御指摘いただいたように、運用開始後一定の期間を見ながら、当該同意の件数であるとか、あるいは内容の状況を踏まえて、必要があるというふうに認められる場合は更なる運用の適正化への措置を講じていくということも、これは検討するということもあり得るんでしょうね。そういう認識でおります。

大野元裕君
 MLAT本法と違うのは、二次情報について、附属書の中に三年以上の刑罰や一年から三年の刑罰に該当するものについては三十四項あって、これについては自動的に目的外に利用できることになっているんです。つまり、範囲が狭いけれども自動で目的外利用できるところは広い、これがこの法律の特徴だと私は思っています。
 三十四の除外事項には、日本では犯罪でないものも含まれています。それだけではありません。例えば、相手国の同意がなくても目的外の利用できるような情報を提供するときに、傷害でも殺人でもいいですが、そういった容疑がある、そしてアメリカから情報の提供を求められた。そのときに、例えば特許法の侵害なんかも自動で提供できる目的外の使用の中に入ているんです。すると、この人が何らかの利益に絡んだ事件でそういったことを起こした、あるいは特許のように我が国の企業が損益を被るようなことがある。ところが、それを分かっていながらこれを提供する。そうすると、これはその殺人事件なり傷害事件以外の特許等の侵害についても、人定事項が特定されるとか、そういったケースを想定できないとまで断言するのは少し尚早だと思っています。
 だとすると、このような懸念が生じるときには、例えば経産省とかそういったところに対して意見を求めることが私は適当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 第二次照会で回答するのは、本法案において警察庁が既に保有をしている氏名とか生年月日の人定事項とか刑事処分の経歴といった情報に限定をしておりますので、これらを目的外利用として裁判において証拠に用いることは余り通常は考えにくいとは思いますけれども、一方、二次照会の回答は、この協定第五条二項の規定により国内法で定められる範囲内で行われることとされておりますので、これを受けて、この法案では、必要かつ適当と認められると判断した情報に限りこれを提供することができるというふうな法律の立て付けになっています。
 したがって、米国に提供した情報が、協定八条の規定による目的外利用によって我が国の安全その他重要な利益が害される、こういうことが認められる場合には、必要に応じ関係省庁に相談をするなどして、その提供しようとしている情報が必要かつ適当と認められるのかどうかについて慎重に判断をするように警察庁をしっかり指導をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。

大野元裕君
 そのとおりです。ただ、先ほど申し上げたように、MLATには我が国の安全その他の重要な利益というところが入っているけれども、こっちは入っていないんですよ。だから聞いたんです。今大臣がおっしゃったのは、とても大事なポイントだと思います。時間が限られているので、最後の質問をさせていただきます。
 既に保有している指紋情報や人定情報、こういったものが対象であるとおっしゃっておられました。これが、指紋情報はオンラインで行くわけですよね。そして、二次情報、これが次に判断をして提供される。この対象については、少年法によって保護処分等を受けた者、あるいは捜査中の人、さらには公判中の方々も含まれています。
 これらの方々の情報を犯罪者のそれと同じように一概に対象にするということは、違和感もあるのではないか。特に懸念されているのは、確かに情報が求められたときは公判中で指紋を取られ、人定事項を持取られ、それが提供されたものの、確定判決で無罪が出た。こういった場合には、提供された情報が被疑者として提供されて、無罪になってもそれはそのまま残ってしまう、しかも目的外利用等も含めて懸念も残る。こういったところで考えると、被疑者が確定判決で無罪となった場合には、相手国に対して通知をし、必要であれば削除を求める、あるいは我が方としてはその方について目的外使用や第三国への提供のもし照会があった場合には拒否をするといった方針を定めていただくべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

国務大臣(古屋圭司君)
 例えば誤認逮捕のようなものがあって、捜査手続に瑕疵があった場合など、言わば必要かつ相当と認められる場合においては、この協定十条、今御指摘いただいた十条の規定に基づいてアメリカに対してその旨を通知をする、こういった慎重な運用を努めていくべきだというふうに考えています。

大野元裕君
 もう一度申し上げますけど、私は削除を求めるべきだと思います。一番最初にも申し上げたとおり、こういった事例が、五人が拘束されて二人が今拘束されている片山被告以外に認めているような状況がある以上、時には間違いはあるでしょうが、誤認逮捕だと分かった、無実だと分かったときには、不利益を被るようなことについてはしっかりと回復をしなければならないのは、警察あるいは公安委員長の務めではないかというふうに思っております。
 これらの懸念はありますが、この法律をそのまま通すのではなくて、しっかりと附帯を付けることによって将来において善処を求めることをお願いをして私の質問を終わります。いま一度、こういった状況がある以上是非、権利を回復する、あるいは不利益にならないといったことについての、大臣からの意見を伺います。

国務大臣(古屋圭司君)
 今、十条の話ししましたけど、十条二項に不開示等の適切な措置をとると書いてありますので、しっかりこの法案の中身を反映した形の対応をしていくということも心得て取り組んでいきたいというふうに思っています。

大野元裕君
 終わります。

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委員長(水岡俊一君) 
 この際、大野君から発言を求められておりますので、これを許します。大野元裕君。

大野元裕君
 私は、ただいま可決されました重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、みんなの党及び新党改革・無所属の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の実施に当たり、両国の国民の安全を強化するために重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的とするとともに、国民の人権に十分な配慮を行えるよう、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。
 一 被疑者として指紋を採取された者で米国に情報を提供された者のうち、無罪判決が確定した者については、必要かつ相当と認める場合には、被提供国たる米国に対し、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(以下「協定」という。)第十条1の規定に基づきその旨を通知するとともに、目的外使用又は第三国等への開示に同意しないよう、慎重な運用に努めること。
 二 協定及び本法の実施に当たっては、国家公安委員会はその状況を適切に管理し、指紋提供件数、追加の情報の提供に至らなかった件数、追加の情報の提供を求められた件数について定期的な情報の提供を受け、必要な場合には、随時その実施状況の報告を求め、運用の適正を確保すること。
 三 協定及び本法に基づく追加の情報等の目的外使用及び第三国等への開示の同意に当たっては、国家公安委員会はこれを適切に管理し、政府は、警察庁長官より国家公安委員会にできる限り事前に必要な報告をさせ、運用の適正を確保すること。また、当該同意については、その件数、内容等の運用状況を踏まえ、必要があると認められる場合、法的措置を含め、更なる運用適正化のための措置を講じること。
 四 我が国が提供した追加の情報が、協定第八条5(1)の目的に基づき、我が国の安全その他の重要な利益が害されるおそれがある場合には、警察庁長官は追加の情報の提供に当たっては、関係する省庁に意見を求めるなど、慎重に検討すること。
   右決議する。
 以上でございます。