特定秘密保護法案の反対討論(予定していた原稿です) | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

特定秘密保護法案の反対討論(予定していた原稿です)

本日午後4時8分、与党は特定秘密保護法案の委員会採決を強行しました。議長に対して採決の無効を訴えているところなので、見守りたいと思っていますが、何かあったときのためにと用意していた委員会での反対討論、強行採決により無駄になりましたが、ここに掲示させていただきます。


会派を代表し、特定秘密保護法案に対し、反対の立場から討論させていただく。

 これまで幾度も繰り返してきた通り、秘密保全制度は必要である。しかしながら秘密保全の必要性は、そのことが抱える危険性や国民の権利をいたずらに阻害することを正当化し得ません。我々は慎重な審議を求め、稚拙な法案だからこそ、対案を提示して政策面で正々堂々と討論してきました。

 反対の第一の理由は、法目的を取り違えていることにある。
 民主党内においては、本法案をめぐり様々な議論があったが、修正では不十分という結論になった。それは、第一条に記されている目的からそもそも全く異なるからであった。政府提出の法案の目的が漏洩の防止を図ることにあるのに対し、民主党の対案では漏洩の防止と平行して、そもそも国の情報は国民のものであるとの認識に立ち、国民の権利と両立させることを目的としています。一時停止違反から食品偽装まで、国民の生命に危険が及ぶかもしれない行為はすべて死刑にすれば抑止になるといったような極めて単純な議論が法制化されることに等しい発想に基づく法律であってはならない、立法府の責任を全うしなければならないとの考えの下、我々は全く異なる法目的にしがたい、対案を提出したのです。本法二十二条において配慮規定が置かれていることは重々承知しています。しかし国民の権利との両立は政府にご配慮いただくものではなく、政府の責務として情報の保全と両立が図られるべきものであると信じているのです。

 反対の第二の理由は、オーバーサイト(監察)の制度が評価に値しないことです。国民の権利を制限する法律で、且つ国民の目から隠される部分が想定されるこのような法律においては、国民生活に影響が及ばず、政府が恣意によって行政の瑕疵等を隠蔽することがないと国民に信じてもらうことが必要です。そのためには、かかる疑念を払拭し、国民の信頼を得られるような制度的担保が不可欠です。それが文明社会の法律です。しかしながら、この法律は行政にとって都合のよい運用がなされる方に大きく傾斜しており、監察の制度が極めて緩やかで、文明国の法律として成立していません。

具体的に申し上げます。

 この監察制度の不備の一つ目の例として、内部の監察制度が極めて弱いことが上げられます。安倍総理は、昨日になって突然、内閣官房の下に「保全監視委員会」なるものを設けると発言されました。また、第三者的に総理が監督するとも述べてこられました。しかし、内部によるお手盛りの監察制度は、バランスのとれた制度的担保にはなり得ません。たとえば米国の場合には、国会による強力な監察制度の上に内部監察制度があり、しかもこれらの組織は相互に重層的に監視する制度となっています。総理の「重層的な制度」という言葉は、評価にすら値しないのです。また、将来においてこのような第三者的組織を検討されるとのことですが、法案を審議している今こそ、それを提示すべきであります。民主党は、対案として提示した五本の法律の一つ「情報適性管理委員会設置法案」において、詳細な制度設計を法案として提示しています。本来ならば、与党がしっかりとした制度設計を示し、野党に対案を迫るのが筋ではありませんか。法案化には時間と労力が伴いますが、消費税だけ先食いし、三党合意で約束した社会保障制度改革を先送りする政権による、将来やりますとの意思表示を信じることは困難です。

 第二の理由の監察制度の不備の二つ目として、恣意による秘密制度の濫用を自制する制度的担保が欠如していることが上げられます。民主党案では、秘密指定事項だけではなく秘密指定禁止事項を定め、不正な指定を告発者にとって不利なく内部告発する制度を担保しています。米国においても、行政官が不正な指定を行ったり、それを見逃すことは懲罰の対象です。

 第二の理由の監察制度の不備の三つ目として、国民の代表たる国会による監視が完全に欠如していることが上げられる。法律の修正案では、国会への提供条件および秘密指定の概要等に関する報告面でわずかな前進がありましたが、監察制度と呼ぶには足りず、秘密指定や文書廃棄、適性評価等に対する議会の厳格な監察制度はありません。大統領関連文書の破棄について、60日前までに議会に通告し、同意を得る必要がある米国のような制度が、この法案からは欠けています。

 反対の第三の理由は、立法事実への疑問です。漏洩の立法事実、これまで適用されてきた漏洩に対する実刑がこれまでの再考の5年の半分以下に留まっている等、厳格な罰則を伴う立法を行う十分な事実があるか疑問です。また、昨日の福山理事の議論でもありましたが、総理や森担当大臣が幾度にも亘り強調してきた、原稿では秘密を管理する統一の基準がないとの答弁も、虚偽であることが明らかになっています。

 反対の第四の理由は、指定の範囲の広さです。具体的な立法事実・立法の必要性に反して、法案では指定の範囲が広いままになっています。大声を上げるデモが本質的にテロと同義であるとの与党幹事長の発言にもあった通り、解釈の余地があまりに広いテロリズムに始まり、第一条の定義にある外部からの侵略等の「等」が不明確など、明らかにすべき点は数多く存在している。

 反対の第五の理由は、審議の不十分さと大臣の虚偽及び未熟な答弁により、あまりにも多くの疑問が解かれていない点にある。ルールに則ることのない与党の稚拙且つ民主主義への挑戦ともとれる運営により、審議は尽くされていないどころか、既に経過した審議時間すら邪魔され、その回復もなされていない。また、審議の最中にも、大臣の理解度不足か、未熟な答弁能力によるのかは不明だが、質問に対して答えないことはまだしも、虚偽の答弁により審議が深まっていない。たとえばその例としては、特定秘密の指定が解除されれば公文書規定にしたがい処理されるので、廃棄されることはないという大臣の主張が、1年以内の文書の破棄が現実に行われていることを政府委員が答弁で認めたことにより、覆されていることなどが上げられる。それに加えて、4日になって新たに提言された機関は全く審議されていない。

 反対の第六の理由は、配慮規定の不十分さにある。既に多くの指摘があるとおり、第22条に付け足しのように書かれている一般の国民、取材者に対する配慮規定は、不明確である。さらに、スパイ等の行為に目的化した24条に対し、25条は共謀しただけで処罰の対応になり得、答弁ではこの問題もクリアされていない。

 時間の関係でその他の理由をすべて説明できないことは残念だが、項目だけ列挙させていただくと、反対の第七の理由は、国会との関係、第八は、適性評価のあり方、第九の理由は、秘密保護期限延長のあまりに広い例外規定、第十の理由は、取材の自由との関係、そして第十一の理由は罰則、最後の大きな理由は、この法案を提出した政府与党の不誠実な対応にある。不誠実且つ不十分な政府与党の対応にもかかわらず、我々は委員会の場での審議に応じてきたのは、ひとえに、この法案の問題と疑念を公の場で明らかにし、知恵を結集するためである。それにもかかわらず、政府は答弁者を確保せず、審議権を奪い、不誠実な答弁に終始した。国民への責任を放棄し、民主主義を踏みにじったのである。

 我が国においても、国民の権利を制限する法律は数多くあるが、先人は知恵を出し合いそのような法律を文明国にふさわしいものとしてきた。疑問と懸念が残る法律に対し、なぜ我々は先人や他国の経験を踏まえて、知恵を出し、文明国に誇れるような法律に仕立て上げる努力を放棄するのであろうか。立法の無作為は、犯罪に他ならない。秘密の保全と主権在民のバランスを取るために、審議を尽くすことは、我々の責務ではないだろうか。

自民党の皆さん、これだけ批判と疑問の多い本法に対し、あなた方はただの一人も疑問もなく、自らの頭で考えることもなく、官邸の意向の名の下に走狗に成り下がるのですか。不十分な審議の中、不作為の罪に荷担するのですか。今一度、議員の責務を再考いただけるよう、お願い申し上げたい。

公明党の皆さん、衆議院で本法案に賛同された皆さん、少なくともこの法案に関する限り、あなた方が国民の声に耳を傾け、よりよい法律にしていくためのバランサーであり、良識の表明者であります。この委員会でも、良識に従い議論されてきた某党の委員が、いつの間にか差し替えとなったようですが、それが政党としての責務の放棄ではないことを信じています、今一度申し上げますが、皆様の役割は、審議を打ち切り、不完全なままにこの法律を通過させてはならないと信じています。

繰り返しますが、法案の中身について政策面から審議を行うべきとの立場から、対案の提示を通じ、わずかな時間ながら議論してきました。我々は、国民の代表としての国会議員としての責任を全うすべく、このようなひどい法律に現状で賛成することは、歴史に対する犯罪に等しいとの信念から反対せざるを得ないとの見解を表明し、反対討論とさせていただきます。