特定秘密保護法案:民主党の対案提出 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

特定秘密保護法案:民主党の対案提出

 政府提出の特定秘密保護法案に対し、民主党としての対案となる法案5本(特別安全保障秘密管理法案、情報適正管理委員会設置法案、国会法改正案、公文書管理法改正案、自衛隊法改正案。すでに提出済みの情報公開法改正案を加えれば6本)を衆議院の後藤祐一議員、階猛議員と共に起案し、本日、提出した。さらに、今日19時半過ぎから与党に対して説明を行い、現在提出されている法案に代えて採択するよう要求した。

 政府提出の特定秘密保護法案は各方面から懸念を喚んでいる。国家の情報は国民の資産であるという原則は重要であるものの、秘密にとどめなければならない情報は当然存在する。したがって、これを管理するための法案は必要であるが、今回の政府提出案はあまりに稚拙で、まれにみる「ざる法案」と言わざるを得ない。また他党提出の対案も、評価するには至らないと考えており、民主党として、確固たる法案を対案として提出せざるを得ないとの結論に至った。

 細部については割愛するが、民主党提出5法案の主たる問題意識と概要は以下の通りである(図もご参照)。


1.目的
 政府案が国際情勢の複雑化に伴う秘密の漏えいへの懸念から法案を設置することを目的としているのに対し、民主党案では、国家の情報は国民に属する国民主権の原則に立ち、秘密の保全とその管理を両立させることを目的としている。この点は米国の秘密管理のあり方と同様であり、政府与党との大きな差である。

2.オーバーサイト機能の付与
 秘密保全の必要性は存在するが、それが秘密である限りにおいて必ず国民から見えない部分が残される。このような問題に対し、小生の知る限りの先進国の法律は、オーバーサイト(監視あるいは監査)の制度を設けて、政府が恣意で情報を隠ぺいしたり、国民の知る権利を必要以上に制限することを妨げている。それは例えば、国会による監視であったり、あるいは内部告発制度である。
 しかしながら政府案では、秘密の基準を決めるのも政府、秘密を指定するのも政府、取扱者を限定するのも政府、公開および提供の基準を制定するのも、解除を判断するのも政府になっている。政府は、指定の基準について第三者の意見を聴き、問題となれば裁判に委ねるべきとしているが、意見を聴くだけではオーバーサイトではなく、また米国の判例を見る限りにおいて裁判所は外形証拠や政府の説明責任を判断するのみで中身の妥当性に立ち入ったことはなく、不十分である。
 そこで民主党案では、国会が指名する第三者委員会が30年後の非開示情報の適否を判断し、適正評価に対する不服を受け付けて審査し、指定の基準を定めると共に、国会における審議のために情報提供を義務付け、政府がそれを拒む場合には、国会議長がその適否を判断できるようにしている。また、秘密を扱う者(主として公務員を想定)が秘密に相当しないと考える情報がある場合には解除の審査を第三者委員会に求めることができるようにしている。

3.処罰の対象と重さ
 漏えいの量刑は、本法案の基礎となっていた有識者会合が参考にすべきとした防衛秘密に合わせて最大5年とし、それに比例すべきとの法制局の見解に従い教唆による取得行為は最大3年とした。その一方で、現在教唆による取得行為の対象は、公務員に対する取得行為のみに限られているところ、政府案が対象としている契約した業者等への教唆や未遂行為への取得行為に拡大することは見送った。
 秘密保全に伴う罰則は、教唆等の「行為」によって判断され、政府案ではスパイ行為も報道関係者の取材行為も同様に「行為」で判断される。スパイ行為を認定するには、「行為」のみならずその背景や組織等も併せて議論されるべきであり、「行為」のあり方で、スパイ行為と知る権利を持つ国民の行為を同様に扱うべきではないことが、取得行為の対象を制限した民主党案の考え方の根底にある。

4.立法機関と行政機関の関係の整理
 政府案では、情報を国会に「提供できる」が、その適否を判断するのはあくまでも行政側である。しかし、行政調査権を有する国権の最高機関としての国民に直接選出された国会が、政府のコントロールの下に置かれるような規定は、我が国の三権分立のあり方と民主主義に対する挑戦にほかならない。立法と行政の関係は、行政にとって都合の良い制度の下にあるべきではなく、国権の最高機関たる立法機関の定めるところに従い、緊張関係になければならないはずである。
 そこで民主党案では、原則として政府は国会に対して情報を提供しなければならないものとした上で、政府が情報提供を拒否する場合には、両院の議長が副議長の意見を聴取しながらインカメラで審理し、国会への提供の可否を判断する形にしている。

5.対象の限定と禁止事項の設定
 政府は特別防衛秘密、防衛秘密および国家公務員法による漏えい防止に関する法律、および特別管理秘密や省秘といった運用による秘密制度を持ち、あるいは公文書管理法に基づく非開示制度が存在する。このような中で重罰を伴う特別の秘密は、その対象を厳しく限定し、それが政府の恣意で運用されるような基準の下に置かれてはならない。
 そこで民主党案では、①運用基準を第三者委員会が定めるものとし、②その対象から「特定有害活動の防止」を外したうえに「テロ行為」を「国際テロ行為」とし、③あいまいな基準となっている「その他」と記述された部分を明文化し、④秘密指定の事項と共に秘密に指定してはならない事項(政府の瑕疵の隠蔽等)を定め、恣意を極力排除している。

6.解除のルール明確化
 政府案の特定秘密は5年ごとに更新され、30年後に内閣総理大臣の承認をもってさらに延長されることになっているが、民主党案では、30年後の更新には前述の委員会の承認が必要とされている。さらに、現在、運用の下でそのほぼすべてが破棄されている特別防衛秘密並びに防衛秘密については、公文書管理法による管理の規定の下に置くこととしている。

 繰り返しとなるが、秘密の保全は必要ながら、主権在民、国民の知る権利、三権分立、政府による恣意の防止等の国のあるべき原則がないがしろにされる如き法案については、大幅な修正が必要である。このような観点に立ち政府案を吟味したが、あまりにも大幅且つ複数の法案の見直しが必要との結論に至り、対案提示となった。
 なお、一部マスコミからは民主党案の提示が遅いとのご批判をいただいた。正直なところ、1週間前でも提示の準備はできていたが、政府側が野党反対であれば強行採決も辞さずとの姿勢をちらつかせていた中、重要なこの法案の議論をしっかりと審議する時間を取るためにあいまいな態度で引っ張らざるを得なかったことを付言しておく。
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