シリア情勢:イスラエルの武力介入強化とそれがもたらす懸念 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

シリア情勢:イスラエルの武力介入強化とそれがもたらす懸念

過去数日イスラエル軍はシリア空爆を頻繁に実施してきた。ここに至って、シリア側発表によれば、シリア軍がゴラン高原に違法に侵入したイスラエル軍の装甲車両を破壊した由である。

シリア内戦は混迷しているが、この混迷を密かにほくそえんでいたのはイスラエルであったと言えよう。シリアが混迷してイスラエルへの脅威を及ぼす余力がなく、シリア=レバノン=イランという反イスラエル枢軸が機能しないことは、イスラエルにとってはよいシナリオであったはずだ。ところが、最近ではレバノンのヒズボッラーがシリア政府側に加担し、シリア戦局が動き始め、イスラエルとしてもシリア政府の背後にいるヒズボッラーとイランを懸念せざるを得なくなってきた。

シリア政府は、イスラエルを内戦に巻き込むことは、アラブ諸国の反イスラエル感情を煽ることを承知していたはずながら、シリア内戦への介入を逡巡するイスラエルの友好国=西欧を懸念し、このようなシナリオを採用することは避けてきたようだ。しかしながら、①イランとヒズボッラーの支援なしには立ち行かないシリア政府として、シリア領土を経由してのイランからヒズボッラーへの武器供与を受け入れざるを得ない、②ヒズボッラーのシリア内での展開が見られる、③ヒズボッラーのナスル・ッ=ラー指導者が「ゴラン高原をイスラエルから解放する」と主張した、④ロシアの仲介等でシリア内戦停戦に向けた対話の可能性が若干出てきた、等の情勢の変化は、シリアの選挙区にも影響を及ぼしつつあるようだ。

特に、イスラエルは、シリアにヒズボッラーが展開し、あるいはイラン製の武器がシリア並びにヒズボッラーの手に渡ることを受け入れることはできないはずだ。このため、本年初頭以来、武器を運搬していたとされる車両等を空爆してきたのである。それにも限度があり、「先制攻撃」と「自国の安全を保障するバッファー確保」を得意としてきたイスラエルとしては、シリアの現況を看過することができなかったのであろう。

いずれにせよ、イスラエルの関与は域内におけるシリア内戦のあり方を大きく変更させる可能性があり、大変懸念せざるを得ない。シリアの隣国は、シリア政府は継続させたくない一方で、ジブハト・ル=ナスラのような勢力がシリアのキャスティング・ボードを握るのは是非避けたいというジレンマの中に居たが、新たにまた、大きな不安定要素が頭をもたげてきたのではないだろうか。

http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2945418/10779675