ゴラン高原において拘束された国連平和維持要員の解放について | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

ゴラン高原において拘束された国連平和維持要員の解放について

今日は、東日本大震災二周年にあたり、天皇皇后両陛下をお迎えしての追悼式典に参加してきました。あらためて、命の重さと命に対する政治家の責任を痛感しました。

さて、遠くシリアとイスラエル国境に所在するゴラン高原では、21人のフィリピンの国連の平和維持部隊(UNDOF)要員が拘束され、心配しておりましたが、無事に解放されたようです。
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http://www.cnn.co.jp/world/35029330.html

ゴラン高原の情勢は、シリア情勢悪化に伴い流動化してきておりました。11月には、オーストリアの部隊が襲撃を受け、2名が負傷、輸送した車両すべてから銃痕が発見される深刻な事態になっていました。
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http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5i0PmLeoeOvEvAI_sValMaPIMRcrQ


ゴラン高原には17年間の長きにわたり自衛隊の部隊が駐留し、活躍してきたことは、ご高承の通りです。小生は昨年末まで防衛大臣政務官兼内閣府大臣政務官(PKO担当)を拝命しておりましたが、ゴラン情勢の深刻化に伴い、部隊の安全確保および最終的な撤退に向けて、ほぼ毎日、この件にかかわってきました。具体的な活動については、http://www.oonomotohiro.jp/img/press/201302.pdf
をご参照いただきたいと思いますが、各省にまたがる所管の調整、大臣等の説得、現地情勢の把握、直近の状況を知るための現地訪問や直前の部隊訪問、あるいは政権交代時期における政治的空白を懸念しての決断に向けた環境情勢等、可能な限りのことをしてきたつもりです。

ゴラン高原の部隊については、シリアの大使館に勤務してきたときの小生の所管であり、正直、思い入れも強かったのでさびしくはありましたが、これも自分の宿命と幕引き役を担いました。

いずれにせよ、今回のフィリピンの事件では、特段の被害もなくホッとしました。

国連平和維持部隊の難しさは、中立をいかに担保するかにあります。厳格に中立を維持しても、接受国(この場合、シリア)からは、兵力引き離し地域が反体制派の拠点となっているとして不興を買い、逆に反体制側からは、シリア軍による攻撃で負傷したり食糧等が尽きた場合に、国連が十分な人道的配慮をしていない等の非難を浴びます。今回の事件の背景にも、このような「中立」のむずかしさが存在しているようです。

ゴラン高原はかつて、世界で最も安全なPKOと言われてきましたが、今では我が国にとってのPKOへの関与、そして国連PKOのあり方に問題を提起する場所になってしまいました。そして何よりも、国際社会の「意図的無関心」の中で、シリア政府側および反体制派にとり、さらに何よりもシリア国民にとっても、いたずらに人命を奪われる状況が継続し、それが情勢を複雑化させています。

人の命に対する責任が、政治家に対して広範な意味で問われていることを示す事態と考え、情勢を注視し、これからも可能な働きかけを行ってまいります。