予算委員会で質問に立ちました:安倍内閣の危機管理体制 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

予算委員会で質問に立ちました:安倍内閣の危機管理体制

木曜日に予算委員会の外交集中審議で質問に立たさせていただきました。

政府を監視する国会の責任として、安倍内閣の口だけでやる気のない危機管理体制を取り上げ、改善を求めました。この質問の議事録は、公開され次第、ご案内させていただきたいと考えていますが、指摘した概要は以下の通りです。


まずは、アルジェリアにおける邦人拘束・殺害事件が、在外における人質拘束事件としては最悪の10人の邦人被害者を出すに至ったところ、その体制を問いました。事件は早い時期に悲惨な結果の幕引きとなりましたが、万全な体制を敷くことは、政府の最低限の責任と考えたからです。

アルジェリアでは、高い教育を受けた方々はフランス語を話しますが、一般の方と円滑にコミュニケーションをするにはアラビア語が必要です。しかしながら、今回50人近くに達した現地対策本部の日本人の中でアラビア語を解するいわゆる「アラビスト」は、なんとゼロでした。政府は、アルジェリア政府や日揮、BP等の情報に依存し、そこから情報が得られなければお手上げという態勢を敷いていました。つまり、特にアラビア語が必要になる郊外の現場付近の街における状況の調査や犯行グループとの交渉をする気すら、初めから無かったのです。安倍総理の言うあらゆる手段を使って情報収集に努めるという答弁は、あまりに空虚でありました。深刻な状況に直面する人質の方々の状況を真剣に考えた布陣とは、かけ離れていたと言うほかありません。

2004年にイラクで発生した5人の日本人人質事件や同年の香田さん殺害事件の際、政府は外務副大臣を現地に派遣して現地対策本部を立ち上げ、可能な限り高いレベルから働きかけを行う体制を敷いたのですが、今回は政務官レベルでした。このレベルの問題もそうですが、情報が錯綜する中で、アルジェリア政府に強くプッシュすることもできていなかったようです。この政務官は日本テレビに対して、「軍のオペレーションは秘密であり、アルジェリア政府ですら承知していないんです」と述べておられましたが、21日にアルジェリアのサラール首相は、「軍の特別作戦に際し、大統領は毎時間ごとに情勢をフォローしていた」と明言しています。情報を得るための働きかけが弱かったか、レベルが低くて相手にされなかったか、あるいは日本の働きかけにもかかわらずこのような発言をしてもかまわないとなめられていたか、のいずれかでした。

ちなみに、今回の事件で最大の被害者を出したのは日本でしたが、政府の飛行機がアルジェリア政府の許可を得て到着できたのは22日でした。これに対して、アメリカもイギリスも、18日にはアルジェリアに航空機が到着していました。距離の差を考えても、その行動の遅さ、あるいはアルジェリア政府への交渉能力の差が、明確に出たと考えざるを得ません。政府は、陸上輸送が可能になるような自衛隊法の改正を考えているようですが、現行法で可能な空路の輸送体制を着実に敷くだけの外交力を問わなければなりません。

また、今回の事件の現場となったイナメナスは首都アルジェから1000㎞以上離れており、情報が錯綜したことは事実であり、現地の政府のチームにとって大きな困難であったことは事実でした。しかしながら、可能な限り早期に、また現地の近くに赴く努力も不十分だと判断せざるを得ません。たとえばイギリスは、19日の時点で在アルジェリア大使が率いるチームが現場から160㎞地点まで前進していました。しかしながら日本は、イナメナスから500㎞地点のガシュトゥーユに日揮の事務所があったにもかかわらず、一人の政府関係者もそこまですら赴かなかったのである。これらの指摘に対し岸田外相は、「城内政務官は20日夜に現場に到着し、同地に来た最初の外国の政府関係者」と胸を張っておられましたが、英国のキャメロン首相が報道で明らかにした通り、19日夜の時点で英政府関係者が、翌20日朝の時点で大使が同地に到着していたことすら知りませんでした。

また、事前の同地をめぐる情報については、数週間前にテュニジアとの国境でアルジェリアの地図や爆破装置を山積みした車両が拘束され、事件の日の朝にリビア政府がアルジェリアとの国境を封鎖し、あるいは英国のセキュリティ会社がイナメナスを名指しにしてイスラーム系過激勢力の標的になる可能性が高いと指摘していたことを知っているかと質しましたが、岸田外相からは回答をいただけませんでした。いずれにせよ、これらの動きに対応した海外安全情報は出されていません。


次に、中国による火器管制レーダー照射事件を取り上げました。小野寺防衛大臣に対しては、今回の火器管制レーダー照射という極めて危険で野蛮な行為が国連憲章の禁止する武力による威嚇にあたるかを問いました。さらに、東シナ海で日本の艦船などが警告に従わずに中国の艦船を追跡する場合には、日本の艦船へ射撃管制用レーダーを照射した上で「危険な行動に出れば断固として自衛する」と主張した18日付の中国与党共産党機関紙の羅援なる中国軍少将の寄稿は、「現実にはまだ武力を行使しないが、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するとの意思、態度を示すことにより、相手国を威嚇することをいう(平成14年の政府答弁書)」とされている武力による威嚇にあたるかを問いました。いずれについても政府からの明確な答弁はありませんでした。そこで、国連憲章第六章は、「この憲章に掲げる原則に執拗に違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基いて、この機構から除名することができる」としているところ、度重なる中国の蛮行を放置せず、国連に対して武力による威嚇として通報を行うべきと求めました。

また小生の質問主意書に対し政府は、1月30日の中国艦艇による火器管制レーダー照射事件が政府機関に共有されたのは、2月5日正午のことで、その直前には、斉木外務審議官がこの事件を知らないままに在京中国大使を呼び、別の事件で抗議していることを明らかにしています。この結果、危険な火器管制レーダー照射を日本側が取り上げずに黙認し、中国側からは正常な公務執行をしていると一方的に寄り切られたた形となってしまいました。さらに、8日夜になって自民党の高村副総裁は、以前から予定されていた行事として在京中国大使館を訪問し、会談すると共に中国大使に抗議したということでした。プレス向けの発言はともかく、事態の深刻さに対し、まったく行動が伴っていない状況を質しましたが、結局時間切れになってしまいました。


アルジェリアの事件対応にせよ、中国の火器管制レーダー照射事件にせよ、危機管理ができていないと考えます。安倍総理は口では危機管理と言っていますが、実際の対応は程遠いのが現実でした。自民党がこれまで主張してきたこととも、全く異なります。特にアルジェリアの事件については、報道機関にアルジェリア入国査証が出なかったために報じられていないことが多いのですが、政府の対応からはやる気が感じられません。情報収集のあり方に疑問があり、万全な体制を敷くことなく、外交交渉能力も欠如していたように思われてなりません。せめて政権交代前に事件が発生していれば、防衛省と内閣府の政務官を兼務していた自分が現地に赴き、人質になった方々のことを考えたよりましな体制を敷くことができたのに、と悔しい思いの質問になりました。与党ではないので、直接対処はできませんが、少しでも日本人の安全と安心を確かなものにできるよう、問題を指摘し、政府に改善を求めてまいります。