安全保障と選挙 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

安全保障と選挙

明日からの衆議院選挙に際しては、埼玉県を中心に応援に入り、ねじれ国会の中でできなかったこともあるが、大きく日本は変わり始めていると訴えていくことになろう。その一方で、北朝鮮のミサイル発射を始めとしたすぐ目の前にある安全保障上の危機が現存しており、そちらへの対処も続けているのが現状である。

このような中、衆議院選挙が公示される前に安全保障の問題について、気になる点を記しておきたい。

第一に、民主党の安全保障政策は平成22年の22大綱により、動的な防衛力を確保して大規模な災害対処や島しょ防衛を可能にする等、大きく前進した。また、政治主導により、防衛省所管部分を記すのが大綱という常識を打破し、内閣官房所管のNSCや経産省所管の武器輸出三原則の見直しを盛り込む等、この部分でも日本を変えてきた。これらの諸点については、これまでも記してきた通りである。さらに、この先には動的防衛力を軸とする我が国の防衛体制とリバランシングを軸とする米国の防衛体制、大綱でも強調したマルチの枠組みづくり等を通じて、日米ガイドラインの見直しにつなげるとのシナリオができており、前回の訪米の際にもガイドラインに関する下協議を実施してきた。

これらの政策は、国民の命と国の安全を守るために必須であり、妥協できないものと考えてきたのである。

他方、現在の自民党が主張する安全保障省政策には3つの点で不安がある。第一は、全体的な思想と今後へのシナリオが見えないことである。自民党の主張のうち、統合コマンドのようなよい主張がある一方で、国防軍のような選挙用にしか見えない練られていない構想もあり、これらは、多くの主張を盛り込んだだけの「お子様ランチ」のように見えるのである。ナショナリスト的主張と民主党の大綱とほぼ同じの日米同盟をにらんだ部分が同居しているが、一貫した思想と今後へのシナリオが見えない。第二に、自衛隊や海上保安庁に過度な負担を強いるもののように見える。「他国との交戦の際には、交戦規程に基づき行動する国防軍」といった主張や練習艦の無理な転用がそうである。国際法の常識に従えば、「他国との交戦」に際しては、中立的な地域における船舶の臨検等が含まれるはずだが、自衛隊はこれらの教育も法的根拠もなく、選挙キャンペーンのために自衛隊を踏み台にし、国家の安全保障をもてあそんではならない。第三に、過去の反省が生かされていないようだ。安倍政権時代のNSCの決定的欠点は情報コミュニティの改善を横において戦略のみを突出させたことであるが、この反省は見られていない。

もちろん、維新の党首となった石原さんの言うように、米国と中国の両方を敵に回す主張は論外である。

安全保障は、票のために国民の命や国家の利益を踏み台にするようなものではあってはならず、かりに他の党が政権の座に返り咲くとしても、この点だけは肝に銘じ、今一度安全保障政策をしっかりと練り上げなければならないと指摘させていただく。