社会保障と税の一体改革に関する三党合意 | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

社会保障と税の一体改革に関する三党合意

社会保障と税の一体改革に関する民主・自民・公明の三党協議が合意に達し、我が国にとりきわめて重要なこの問題に関する将来が見えてきた。この一連の法律は、社会保障関連費が毎年増え続ける中で消費税の増税をお願いし、その増加分を社会保障および社会保障の安定のための財源にすることを目的としている。政治の役割は、「100年安心な年金」などと、できもしないアピールをすることではなく、政治主導で受益と負担のバランスが取れた信頼のいただける制度を構築し、国家の債務を若者や将来の層に無責任に押しつけ無いようにしていかなければならない。

今国会においては、すでに民主党の主張通り合意されたいくつかの法案に加えて、衆議院社保・税特別委員会において、以下の法案が審議されてきた。

消費税法改正

地方税法・地方交付税法改正

国民年金法改正(年金制度強化)

厚生年金法改正(年金制度一元化)

子ども・子育て支援法

総合こども園法

子ども施行法

その一方で3月に党内政策調査会での手続きを了した経緯を踏まえて、三党間で協議が行われ、基本的な合意ができあがった。これらの経緯を通じて明らかになったのは以下の3つの分類であろう。

1.民主党案で成案に至ったもの

社会保障分野では、医療・年金・介護・子どもの4分野における信頼のおけるシステムを構築し、それを消費税値上げ導入前に決定させることが合意された。税分野では、14年までに8%、15年までに10%に上げることが合意された。年金の制度改革については一体化の主張が受け入れられており、国民会議の審議を経た上で大綱にある通り来年度提出への道筋ができた。社会保障番号制度については早期導入が合意され、低所得高齢者への給付額制度も維持されている。こども園については、自公の制度では幼児教育の機会を等しく与える制度として定着していない中で、幼稚園は文科省、保育園は厚労省という縦割り行政を廃し、内閣府で一元化して取り扱うということが合意された。小規模型保育についても原案通りで、待機児童の解消を含めた子育て支援は幼保一体化を柱として進められることになる。

税分野では、8%への引き上げ段階からの低所得者に配慮する簡易な給付措置の導入が合意され、導入の際の経済成長目標を数値として残し、引き上げ時期の政権が実施の判断を行うこととされた。また、独占禁止法・下請法の特例条項を付して消費税の適正な転嫁を担保できた。

2.民主党案から落ちたもの

総合こども園法案については取り下げることになったが、認定こども園法改正となる中身については民主党の手法が大きく取り入れられることになり、名ではなく実を採る形になった。ただし、株式会社の参入部分は落とされたが、この部分は党内議論でも異論の大きかったところであった。保育費の徴収主体も自治体のままとなったが、恣意による認可ができないよう厳しい条項を付した。最低保障年金は年金制度の外で対応することになったが、拠出元や実施主体は同じであり、ここでも名ではなく実を採ることになった。後期高齢者医療制度の廃止については平行線であったが、「必要があれば国民会議に委ねるとして、早期に決着をつける方向で努力することになった。高額所得高齢者への年金額調整規定は削除され、その分の財源が減ったため、低所得者への加算額が6000円を基準から千円引き下げられた。

3.社会保障制度改革国民会議に委ねられたもの、将来の検討として先送りになったもの

上記の合意を主とする三党合意に従った年金制度、医療・介護保険制度、更なる少子化対策を国民会議で審議する。本年閣議決定された社会保障・税一体改革大綱を含めた幅広い観点からこの会議は審議を行うことになる。委員は総理により指名されるところ、民主党の考え方の反映は担保されたと考えている。なお、民主党政権はかねてより、この問題は政権が変わったからといってころころ変わってしまってはならないために超党派の協議を呼びかけてきた経緯があり、協議の枠組みができあがったことは重要とも考えている。

控除に関する考え方、軽減税率か給付付き控除か、歳入庁を設置するかについては、与野党の考えが対立しており、25年度税制改正をにらんで改正していくことになろう。軽減税率は高所得者優遇の逆進性があり、給付付き控除には所得の把握ができるかという問題点があるため、マイナンバー制度のあり方を含めた議論が進められていくことになるであろう。

小生は参議院に出馬するにあたり、新聞社のアンケートに対し、「消費税は15%位になるよう政策を作らないと、遅くなればなるほど事態は深刻になる。しかし、国民に負担をお願いする前に自ら身を切ることを示すためにも議員定数の削減をすべきである。」と回答した。その新聞社は数字だけを取り上げ、参議院選挙の候補者の内、ただ一人消費税増税論者として報じられ、ご批判をいただいた経緯がある。しかし、問題が深刻であり、政治家としていやがられてもやらざるを得ないことがあるというのが当時の認識であった。その一方で、議員定数の削減はまだ満足いく形で収れんしておらず、その点はお詫びするしかない。議員定数削減問題については、改めて記させていただくとするが、ここではそのための努力を継続することのみとしたい。

社会保障と税の問題はきわめて重要であることは、前述の通りである。だからこそ、信頼のおける社会保障のシステムの構築は、国民一人一人に等しく重要である。そうであれば、本件は政争の具にしてはならず、社会保障のあり方や税制のあり方に異なる考えを有するとしても各党が国民主体で検討していかなければならないと考えている。このような観点から、この問題が幅広い議論を喚起し、近い将来信頼できるものとして完成していくことを強く願っている。