防衛計画の大綱見直しに関する党の提言:全文掲載(1/2) | 大野もとひろオフィシャルブログ Powered by Ameba

防衛計画の大綱見直しに関する党の提言:全文掲載(1/2)

『防衛計画の大綱』見直しに関する提言

民主党外交安全保障調査会

 今日の東アジアの安全保障環境は、冷戦終結後の世界的な地域紛争や破綻国家・脆弱国家の生起とグローバル化の進展により、また、これまで地域秩序をほぼ単独で支えてきた米国の力の相対的な低下、並びに新興国の台頭によるパワー・バランスの劇的変化により、不確実で不安定な情勢が続いている。

政権交代後初めての『防衛計画の大綱』では、憲法の平和主義や国際協調主義の理念を遵守することはいうまでもなく、上述した情勢変化に対応すべく、これまで正面から取組まれてこなかった安全保障上の諸課題に対する大胆な改革提言が求められている。私たちは、本年8月に公表された「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新安防懇)の報告書に示された我が国をとりまく安全保障環境に対する基本認識、および防衛力の在り方に関する問題意識を概ね共有するものである。我が国の安全と平和を守るためには、我が国自身の努力が第一義、その上で同盟国や友好国との協力、国連を始めとする国際機関・国際社会との協調により、我が国周辺地域および国際社会全体の平和と安定を維持・増進することが不可欠であるとの立場をとる。そのためには、これまでの受動的な一国平和主義国家から、国際社会の安定と繁栄を支える環境づくりに積極的に貢献する国家を目指し、新たな安全保障戦略を構築しなければならない。

この新たな安全保障戦略[i] は、国際平和協力活動、「人間の安全保障」の充実、更には、世界的・地域的な多国間安全保障の枠組み構築、自由で開かれた国際システムの維持等に主体的かつ能動的に参画してくことを目指す。併せて、縦割り行政を超えた政治主導を実現し、外交・防衛・経済・情報を一体とした総合安全保障の観点から、既存の国際および周辺地域の安全保障秩序や経済・社会環境を安定・発展させ、国際的、地域的な信頼を醸成しながら国益を最大化する外交を展開していくことが肝要である。

なお、最近の東アジア情勢、朝鮮半島情勢の不安定性は、我が国の安全保障上極めて深刻な懸念となっており、我が国としては、日米同盟の機能性や実効性を更に高めて行くとともに、日米韓の確固たる協力体制を構築しなければならない。同時に、日米同盟は、我が国自らが自らを守るという意思と覚悟と能力を備えてはじめて機能することに十分配意し、過度な対米依存に陥らぬよう我が国独自の取組みが一層求められることを改めて確認しておきたい。

このような情勢認識および目的意識を持ち、私たちは、新たな『防衛計画の大綱』の策定を絶好の機会と捉え、予算が限られる中であっても確固とした防衛基盤の整備に努めるべく、以下の6課題に焦点を絞って提言する。

1.動的抑止力向上と南西方面への対処:量から質へ

尖閣沖における最近の漁船衝突事案発生のはるか以前から、東シナ海等における中国海軍の動きが活発化している一方で、南西方面の我が国の防衛力は依然として手薄な状況が続いている。このため、冷戦型の重厚長大の旧式装備を中心とした静的抑止力による「基盤的防衛力構想」の考え方と決別し、「動的抑止力」を充実させるべく、①統合幕僚監部の体制強化、②旧式装備の戦車や火砲の大幅な削減、③南西方面における島嶼防衛に即応した機動的防衛力(装備の事前集積を含む陸自展開のためのインフラ整備および海空輸送力)の強化と同時に効果的な訓練地の確保と災害対処体制の維持、④海空自衛隊の抑止力と警戒監視能力の強化、⑤日米の統合・共同作戦能力向上のための共同作戦計画や共同訓練の拡充、⑥米軍基地の日米共同使用の拡大[ii] と基地負担の軽減、等を図る。

2.人的基盤: 実効力ある精強な防衛力を構築

隊員の高齢化と人件費の高騰が防衛予算を圧迫し、部隊の精強性を損ないかねない状況にある現状を抜本的に改革するため、「選択と集中」によるメリハリを利かせ、①米英の軍隊に比べ平均年齢で35歳高齢化している自衛隊全体の若返り、②1015年単位のロードマップ策定を通じた幹部・曹・士のバランス適正化、③自衛官の一部職域(後方職種)の事務官・技官への転換などを通じた一段の効率化、④政府・自治体、地域社会が一体となった若年退職者を含む再就職環境の整備、⑤陸海空自衛隊および統合幕僚監部における予算配分や人員構成の見直しを通じた総合的な防衛力の強化、等を図る。なお、大胆に現状変更を迫るこの機会に、国を守ることに命をかけている自衛官の名誉や尊厳を考慮する必要がある。



[i]  新たな安全保障戦略

「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」による「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想 -「平和創造国家」を目指して-」(20108月)は、日本が目指すべき国の「かたち」を「平和創造国家」として提言している。それは、自国の平和と安全を守り繁栄を維持するという基本目標を実現しつつ、地域と世界の平和と安全に貢献することを目指す、いわば、受動的な平和国家から能動的な平和を目指す国に変わるために、持てる資源や手段を最も効果的に利用すべきする概念であり、これを我が国の新たな安全保障戦略の基礎において、今後、本調査会において議論を深めていくべきものと考える。なお、ここでいう「平和創造」とは、PKOにおける平和創造(Peace-making:紛争発生前の予防措置)とは異なる概念であることを付言しておく。

[ii]  日米地位協定第2条4項b(2-4-b)

米軍が、自衛隊施設等の日本側の施設を一時使用することを以下の通り定めている。

【日米地位協定より抜粋】

4(a) 合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる。ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとつて有害でないことが合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る。

(b) 合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。