「5分だけください」から始まった、私の報告。

妊娠11週3日。
やっと、上司に妊娠の報告をした。

職場にはまだ誰にも伝えていなかった。
私の場合、上司は社長だ。

いつも忙しそうで、なかなかタイミングが掴めない。
「今日こそ」と思っても、気づけばそのまま一日が終わることも多かった。

本当は、LINEで伝えるつもりだった。
そのための文章は、2ヶ月前から考えてメモ帳に保存してある。

でも今日、出社すると珍しく社長がいた。
しかも「すぐ出ちゃうんだよね」と言っている。

——今しかない。

思い切って、「5分だけお時間いただけますか」と声をかけた。

「第一子を授かりました」

いざ口にすると、不思議なくらい言葉はするすると出てきた。
あれだけ考えていたからだと思う。

普段、社長と話すときは少し緊張する。
威圧感というか、うまく言葉を選ばなきゃと身構えてしまう。

でも今日は違った。

隣には、幼稚園くらいの娘さんがいた。
そのせいか、いつもの“社長”というより、どこか“お父さん”の顔をしていた。

だからこそ、今だと思えた。

5分という短い時間の中で、できるだけ自分の思いを伝えた。

産休や育休は考えていないこと。
産後は、できれば在宅で続けたいこと。
辞めるつもりはないこと。
これからもサポート役として働きたいこと。

正直に言えば、伝える前は覚悟もしていた。

「在宅は難しいから、引き継ぎを」
「このまま退職で」

そう言われる可能性もあると思っていた。

これまでパートで妊娠・出産をした人はいなかったし、前例もない。
だから、ある程度の覚悟はしていた。

でも、返ってきた言葉は、予想と少し違った。

「ここまで信頼できる人はなかなか見つからないと思うから、在宅でも続けてほしい」

「とにかく無理しないで、体調第一で。休んでも全然いいから」

一瞬、ちゃんと聞き取れなかったくらいだった。

ああ、伝えてよかったな、と思った。

ただ、やっぱり緊張はした。

私は昔から、自分の本当の気持ちを相手に伝えるのが苦手だ。

言わなくてもいいことは、できるだけ言わない。
波風が立たないほうを選ぶ。

でも今回は違った。

自分のこれからに関わることだから、
ちゃんと伝えなきゃいけないと思った。

「5分だけください」

その一言で始まった今日の報告は、
思っていたよりも、ずっとやさしい形で終わった。

ただ、やっぱり緊張はしていたらしい。

そのあと、早速仕事のメールを一通、送り先を間違えた。
ああ、やってしまった、と思った。
信頼という言葉をもらった直後に、早速ミスをして落ち込む。

やっぱり私はミスが多いのかもしれない、と思う。
でもきっと、大事なのはそこじゃない。
ミスをしたあとにどう動くか。
その積み重ねで、また信頼に近づいていけたらいいなと思う。