TVキャスター上杉理恵子 其の一
お疲れ様、 はい、ご苦労さん、 ハ~イ お疲れ、 関東NBCテレビの報道局 第一スタジオに今日も無事に報道ニュースの終了を告げる赤ランプの点滅と共にスタッフの軽い声が飛んでいた。
ハ~イ、 理恵ちゃん、 今日も良かったよ、 お疲れさん、 この報道番組のディレクターを務める細川良助の明るい声がメインキャスターを務める上杉理恵子に掛けられたのだ。 ふうっ、 疲れるわね、 良ちゃん、 中継が遅れたからって最後、アレはダメでしょ! 中継の後は私のコメントで終わらせてって前から云ってるでしょ、 本当に分って無いんだから! この日の上杉理恵子は何時もの様に気嫌が悪かった。
上杉理恵子、42歳独身、 日本外語大学フランス語学部を首席で卒業、 英語、フランス語が堪能で入社二年目にして報道番組のニュースキャスターとして異例の大抜擢をされたのである。 美人だが冷たい表情でニュース原稿を殆ど見る事も無く堂々とした語り口調で視聴者を真っ直ぐ見つめるように話す姿勢が人気だったのである。 だが最近はさすがに十七年もキャスターを務めるこの大ベテランのキャスターに交代の声があがっていたのだ。 視聴率も年々下降線を辿り若いキャスターを望む視聴者の声やスポンサーの要求に理恵子はイライラが募っていたのだった。 この報道局のディレクターを務める同期入社の細川もそんな理恵子のわがままな態度に最近は悩まされていたのだ。
良ちゃん、 お願いよ、 明日は最後私の時間を三分取って、 明日は時間が無かったなんて云わせないわよ、 視聴者も私のコメントを楽しみにしてるんだから、 じゃぁ、 お願いね、 あぁ、 そうだわ、 純ちゃん、 頼んであったハイヤーもう来てるかしら、 理恵子はクルッと振り返ってアシスタントの純子に声を掛けたのだ。
ハ~イ、 大丈夫で~す、 地下の第二出口にもう来てますよ、 園田専務も下で待ってらっしゃいますから、 純子の声に理恵子は、 そう、有難う、 良ちゃん、 それじゃぁ、 もう私は行くからね、 本当に明日はお願いよ、 背が高く自分のスタイルに自信を持っていた理恵子は何時ものウエストをキュッと締めつけたウーマンスーツに短いタイトスカート姿でスタジオを後にするのだった。

