※ ネットからお借りしました。

 

枯山水というのがありますね。

20歳台の頃、
僧侶を目指していた友人から、
休日に京都のお寺を巡りに
誘われたことがあります。

京都の寺と言えば
鹿苑寺金閣とか慈照寺銀閣とか、
南禅寺・竜安寺・大覚寺・・・
などでしょうか。

因みに、タクシーの運転手さんに

「慈照寺までお願いします」

と言ったことがあるんですが、

「はっ?」

と怪訝そうな表情を
されたことを覚えています。

「慈照寺銀閣です。」
そういうと、

「ああ~! 銀閣寺ね!」

実は、
金閣寺とか銀閣寺は、
正式には存在しませんので、

「本場」のタクシーの運転手さんに

正式名が通じるのかどうかを

試してみたのですが、

アカンかったですね。

「金閣」とは、
鹿苑寺の中で最も大切な
仏舎利を安置した建物のことです。

薬師寺や法隆寺や四天王寺の場合は
最も大切なものを保管するお堂を
「金堂」といいますが、

風水的に最も良い所に
「金閣」や「銀閣」という
建造物があるのでしょうね

その友人が案内してくれたのは、
そういう有名どころではなくて、
哲学の道を1本奥に入った道に沿って
ひっそりと佇むお寺でした。

ここに素晴らしい庭があるのです。
ところが、
本来なら存在するはずの水がない。

「ああ、だから枯山水なんだ。」

まあ20歳そこそこですからね。

おまけに、この年齢になったからこそ
ではありませんが、

古代史に始まって
何だかんだとちょっとは本も読みで、
かけら程度ですが、
それなりな知識も
持てるようになりましたけれど、

当時はそんな知識のかけらすら
持っていなかったので、
その味わい方なんて無縁のものでした。

でも、友人は枯山水に対する
単なる言葉としての知識だけでなくて、
その意味合いも味わい方も
知っていたのですから、
すごいなと思わされました。

これとは別に
20歳台の夏休みに、
別の友人と
道南と東北地方一周の旅行を
したことがあります。

そのとき、歴史好きだった友人の
たってのリクエストということで
訪れたのが中尊寺でした。

教科書などでよく目にする写真に
金色堂があります。

実際は、博物館の中の
分厚いガラス張りの中に
収められています。

というのは、
寒暖の差や湿度の差が激しい
外気に触れさせたり、
間違っても
雨ざらしになどにできないし、
撮影のときのフラッシュでさえも
悪影響を及ぼすというところまで
老朽化しているからです。

中尊寺には長い参道があります。
その参道の脇には
小さなお堂がいくつかあり、
その参道の終わりには
広い境内があるのですが、
ちょっと違和感があったのです。

大きな杉の木が
どことなく
計算された配置になっていているように
感じたからなのです。

それから20年ほどして
枯山水のお寺に誘ってくれた友人から、
京都の永観堂の見返り観音像を
拝観しに行かないかと誘われたので、
喜んで受けました。

大抵の観音様は
正面を向いていらっしゃいますが、
見返り観音像は
体は正面なのですが、
お顔は左側を向いていらっしゃいます。

それは、まるで、
後に続くわれわれ人間を

「大丈夫か?
 着いて来ているか?」

とでもお声を

かけて下さっているような
慈悲溢れる表情をなさっています。

それを拝見した後、
永観堂のお庭を見たのですね。

例によって枯山水のお庭でした。

このとき、初めて
枯山水の味わい方を
ほんの少し理解出来たのです。

本当に、いきなりでした。

本来なら存在するはずの水の流れを
わざとなくして、
見る人それぞれの脳裏で
想像を広がらせるという
何とも粋な計らい・・・。

優雅ですね。

でもその優雅さの陰で
人知れず、見る人に
想像させることが出来るように
長い時間をかけて
隅々にまで気配りを届かせ、
完璧な形に整えておくという
庭を造る人の心意気を楽しむ。

その庭が醸し出す空間は
その庭を造り管理する
主の心そのものなのです。

ああ、そういうことか!

それがやっと理解出来たとき、
40歳になっていました。

それから数年後に
中尊寺を訪ねました。

その境内を見たとき、
20歳台のときに覚えた違和感の正体が
理解出来ました。

境内の大きなスギの配置は
そのまま巨大な枯山水として
巧みに利用されていたのです。

巨大な杉の木ですから、
人間の力で配置を換えることは
極めて困難です。

それならば、
これを動かさずして
配置そのものを利用し、
枯山水の庭にして進ぜよう。

何とも粋な計らいが

ここにもありました。

 

 

 

 

 

 

 

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