ショスタコーヴィチ作曲の
交響曲第5番ニ短調『革命』。

ショスタコーヴィチの交響曲は
単なる楽曲だけではなくて、
表面的な部分と、
奥深くに隠された
メッセージの部分とがあります。

『ショスタコーヴィチの証言』という
書籍があるのですが、
これもまた曰く付きで・・・。

彼が生きていた時代、
二十歳台のときは
ドイツ軍による
レニングラード包囲の中で
日々の食糧ですらままならず、
国家からの給料の支払いも
半年以上止まったままという、

大阪弁で言うところの
「どないもこないも 
 なりまへんわ」の状態でした。

この時代のソヴィエトの指導者は
スターリン。
いわゆる恐怖政治の時代です。

政府の悪口や批判を
隣人にはもちろんのこと、
親類縁者にさえ言うことは出来ない。

なぜなら、
いつの間にか政府機関に通報され、
ある日突然、大男が住居に侵入し、
とらえられたが最後、
10年後に永久凍土から
遺体で発見されるという顛末・・・

ショスタコーヴィチは
スターリンの一言で
一夜にして音楽界から
非難の集中砲火を浴びて
失脚させられる。

そうかと思えば
スターリンの気まぐれな一言で
非難を浴びせたはずの連中が、
一夜にして嵐のような
賞賛をする側に立つ。

2年間の失脚の後、
その賞賛の嵐の中で
この作品は世界中に発表され、
ショスタコーヴィチの名が
世界にとどろいたのです。

エフゲニー・ムラヴィンスキーは
作曲家ショスタコーヴィチとともに
この恐怖政治下で
ソヴィエトで活躍した指揮者です。

勿論、ショスタコーヴィチの
『革命』の初演は
このムラヴィンスキー指揮で
レニングラード・フィル(当時)で
おこなわれたのです。

復活を記念してされた演奏。

 

新聞に発表された
ショスタコーヴィチの声は、

もちろん
「素晴らしい演奏でした。
作曲者の私が思っていたとおりの
理想の演奏ですよ」と
ムラヴィンスキーを賛美するもの。

なぜなら、
スターリンが監視しているから。

スターリンをしていわく
「これはソヴィエト版の
『歓喜の曲』である」。

その声に取り巻きの評論家が
命惜しさに表明した言葉が

「ネオベートーヴェニアン」

「新しい時代のベートーヴェン」が
誕生した。


『ショスタコーヴィチの証言』
には、このように書かれています。

「ムラヴィンスキーは狂人である。
私は、あのような演奏を
微塵にも望んでいなかった。」


自分の死後、
ニューヨークで発表することを
堅く約束することを前提に、
アメリカ人のとある新聞記者に
その原稿の全てを託したのです。

監視の目が恐ろしく厳しい当時、
このアメリカ人記者がどうやって
彼の原稿を
政府の監視員の目を逃れて
ソヴィエト国外に持ち出せたのかは
明らかではありませんが、
約束は完全に履行されました。

そして、謎だった
鉄のカーテンの内側の姿が
赤裸々に当時の西側世界に
示されたのです。

ただし、現在では、
彼個人の見解が多いので、
歴史的価値という観点からは
外されていると聞いています。

さて、この曲を聴いて
「歓喜の曲」に聞こえるか?

スターリンによる恐怖のムチで
厳しく打たれる民衆が、
無理矢理に悲鳴に似た
「歓喜の声」を叫ばされているように
聞こえないか・・・



※ こちらの演奏はムラヴィンスキー指揮ではありません。

解釈は聴かれる方に一任されます。

何はともあれ、楽しまれてくださいね。


第4楽章の冒頭部に至っては
重いその身を何者かに
無理矢理引きずられるように
スタートさせ、

さらに無理矢理に
演奏速度をアップさせられる。

終盤に至っては、
各楽器が持つ最高音を、
延々と演奏されるのを聴いて、
これが当時のスターリンが感じた
「歓喜の曲」なのか?

ショスタコーヴィチは、
「無能のスターリンには
これくらいでちょうど良い」として、
知識階級には「悲鳴」として
聞こえるように、
二重のメッセージを含ませて
書き上げたと、『証言』のなかで
告白しています。

私が持っている
ムラヴィンスキー指揮のCDは
彼の晩年の演奏です。

それにしても
特に4楽章は異様に速い。

指揮者ロリン・マゼールの演奏は
作曲者の意図をほぼそのまま
再現していますね(この指揮者の
演奏は賛否両論なのだけれど)。

もっとも彼はアメリカの指揮者なので
ソヴィエトに気兼ねは要らない。

そして、
ソヴィエト政府が倒れたその日に
地下のホールで演奏されたと
言われている

指揮者ヴラディーミル・
フェドセーエフによる演奏は
最も緊張感がみなぎるものとして
その歴史的録音が残されています。

その曲の解釈は
ムラヴィンスキーの解釈よりも
余程、作曲者の意志を
貫いているようです。

はて、そのCD、
どこにしまったかな・・・

帰宅して、探します。

 

 

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