ある漁師が小舟で沖に出た。

周囲の人間と上手くいかず、一人で生きていくためにどこの港にもよらなかった。

 

そうすると魚を釣って食べる以外の膨大な時間ができたが、沖合で何の電波も入らなかった為、ラジオも、テレビも使えなかった。

 

そうすると寝転んで空や星を見るしかなくなって、ずっと見ていた。

彼の手元には遠くを見るための望遠鏡があった。

 

今まで星空には興味が無かったが、ずっと見ていると星の輝きに目を奪われた。

興味が出てくるともっと知りたいと思い、何時間も望遠鏡をのぞき込んでいた。

何年もそうして観察し続けていると、色んな発見をしてノートに書き留めていった。

 

そのノートが何冊もたまるころには、それを誰かと共有したくてたまらなくなっていた。

何年かぶりに陸に上がって、そのノートを研究所へ持ち込んだ。

 

するとそのなかの一つが今まで発見されてこなかった小惑星があり、そこにかれの名前が付いた。

その後彼は天文学者になっていた。

 

彼にどうしてこの小惑星を発見できたのか訊いた人がいた。

 

「私にはそれしかなかったのです。それしかできなかったので、ずっと続けていただけです」と答えた。