先月末のこと。娘に聞いてみた。
「クリスマスプレゼント、何が欲しいか、考えた?」
娘は毎年、サンタさんに向けて「〇〇をください」と手紙を書いている。リビングに手紙を置いておき、朝起きて、なくなっていたらサンタさんに届いたと解釈する。何年か続く、わが家の風習だ。
「忘れてた。早く考えないと。」
「早目にしないとサンタさんも困るからね。」
娘は、しばらくスマホを触って目当てのものを探した。
これは1000円だから安い。せっかくサンタさんに頼むのならもう少し高い物がいい、などと要らぬ忖度をする。
思案の末、娘は言った。
「このぬいぐるみが欲しい。」
「東方Project」というゲーム中心の作品群のキャラクター商品だ。しかし、スマホの画面を見ると、どうやら予約限定販売の商品らしい。
「こりゃ無理だろう。予約時期がもう過ぎてるし、今からじゃ買えないよ。」
「サンタさんでも無理?」
「困るだろう、サンタさんも。」
「あーあ、残念だなあ、何か手はないのかなあ。」
「メルカリででも探せば、出てくるだろうけどさ。」
案の定、メルカリには、いくつか出品があった。
しかし、定価より値が張る。
娘に、転売の仕組みを説明した。
「どうしても手に入れたければ、転売ヤーさんから買うしかないんだけどさ、そうすると元々の値段よりだいぶ高くなるわけ。値段が高いと困るだろう、サンタさんも。」
「そうか…」
「大体、メルカリで転売ヤーさんから買わないと手に入らないものを頼んだら、困るだろう、サンタさんも。」
「サンタさんはメルカリ使わないかな?」
「使わないと思うよ。」
「サンタさんにメルカリの画面を見せて、これをお願いしますって伝えられないかな?」
これは、そろそろタイミングだなと思い、聞いてみた。
「あのさ」
「うん」
「サンタさんて、ホントにいると思う?」
「いないと思う。」
「だよな!」
「うん」
「いつからいないと思ってた?」
「3年生のときくらいから。」
「去年は、サンタさんいると思うって言ってたじゃん。」
「何となく、そう言った方がいいのかと思って。」
なるほど、親が期待する娘像を、演じていたわけだ。
「じゃ、サンタって誰だと思う?」
「パパ」
「だよな。だから?」
「メルカリで買って。」
そういうことになった。
昨日、メルカリで手配した品が届いた。
が、まだクリスマスまで日にちがあるので、クローゼットにすぐに隠した。
しかし、サンタ信仰は崩壊したわけだし、いちいち隠す意味があるのだろうか。即、渡せばいい気もする。クリスマス・イブまで保管するのは、一体、なんのための手続きなのだろう。
幼少時に一旦、サンタの概念を教えて信じ込ませ、わずか数年でそれを卒業させて、その上で儀式だけは残して、毎年プレゼントを渡す。
この一連のプロセスが、何を目指して行われているのか僕には分からない。日本中のサンタさんが同じようにモヤモヤしていると思う。こんな風習を根付かせたのが悪い。困るだろう、サンタさんも。