洗濯は、朝晩2回。初日はプラスもう一度した。普段、何事も雑な僕だが、タオルが汚れているように思えて怖く、つい何度も洗濯してしまった。

トイレマットと便座カバーは、取り払った。なければなくても構わないし、そのほうがアルコール消毒をしやすい。

手消毒用のアルコールを、狭い家の3箇所において、動作の度に一番近くにあるアルコールで消毒した。

台風が過ぎさったのを見計らって、窓を開けて換気した。

しかし、不安である。

ツバをゴクリと飲んだとき、喉が少し痛かったような気がする。不安になって何度もツバを飲みなおして確認するが、続けているうちに正常か異常か分からなくなってくる。

仕事を自宅ですることにして、かなり根を詰めてパソコンに向かったが、眼精疲労を感じたときに、これは頭痛か微熱でないかと疑って、体温を何度も測り直してしまう。

感染してから発症するまでの潜伏期間は何日くらいなのだろう。

月曜日の午前中まで娘とベッタリで過ごしていたのだ。今更アルコールだ、換気だと言っても遅いのではないか。

ネットを調べてみても、潜伏期間は○日から○日と、幅のある記述がされているばかりで、不安は打ち消せない。

こんな緊張感で一週間もやっていけるのだろうか。感染への恐怖もだが、感染防止のストレスが半端ではない。

ところがだ。

不思議なもので、最初の2日を過ぎた頃から、急激に気が緩んできた。

消毒などは、変わらず頻繁に行っているが、ほぼ脊髄反射で動いていて、もはや何も考えておらず、ストレスもない。

なんとなく感染せずに乗り切れそうな、根拠のない自信のようなものが湧いてきた。

何より、娘の回復の速さだ。初日、2日目までは体温、38度台だったが、3日目には、36度台になった。その後も頭痛が残ると言っていたが、4日目にはそれも収まり、わずかに咳が残るだけになった。

回復とともに、おそらく娘が排出するウイルスの数も減っているだろう。

今度出勤したとき、皆に大変でしたねと言われたら、

「ああ、ほんとに大変なのは最初の2日くらいですよ」

などとちょっと武勇伝ぽく答える自分が想像できた。

娘も、

「そろそろ一緒にゲームやろうよ」

と誘ってくる。明らかに緊張感が低下しているようだ。
いやいやそんなことではいかん、緊張感を取り戻そう。何度も思い返すのだが、気付くと気が抜けている。

そのうちに、
「精神論で感染が防げるなら苦労しないよな、緊張感の有無なんて、感染リスクとなんの関係もないわけだし」

と得意の屁理屈に思考が傾いていった。

(つづく・今日はここまで)