先日の木曜日、娘が体操着を持ち帰ってきた。

体操着は、毎週月曜日に学校に持って行き、一週間の授業で使った後、木曜日に持ち帰って洗濯する。そういうサイクルだ。


洗濯をしようとして、しまったと思った。もうずいぶん気温が高くなっていたのに、いまだに長袖の体操着を持たせていたのだ。


今週あるいは、先週には半袖に変えておくべきだった。自分は既にクールビズにしているというのに。


言い訳だが、朝、着替えて身につける服は、まだしも目が届く。それでは暑いとか、一枚羽織ったらどうかなどと言える。しかし身に付けずに袋に入れて持たせる体操着は、つい忘れがちになる。洗濯をして、そのまま何の気なしに畳んで袋に入れてしまっていた。何とも情けない。


さらに金曜日。

朝から相当の大雨だったので、久しぶりに長靴を履かせることにした。下駄箱から出してみると、なんとサイズが小さい。


最近の娘の靴のサイズは、20〜21cmだというのに、長靴は19cm。そう言えば、これを買ったのはいつのことだったか、記憶があいまいだ。


これも言い訳だが、時々しか履かない長靴は、普段から履いている靴に比べて忘れがちになる。


と、ここに至ってハタと気付く。そう言えば、体操着もそろそろ小さくなっているのでは。考えて見れば、一年生の時に大きめのものを買ったとはいえ、それ以来2年、買い替えていない。


あわててサイズを見てみると140cmで、現状のジャストサイズだった。とりあえずは大丈夫だが、2年も経ったのだから、そろそろ買い替え時だろう。大きめのものを買った方がいい。


ママのいる家庭ではこんなことはないのだろうなと思う。いや、体操着や長靴のように気付いたことはまだいい。本当の問題は、気付きもせずに過ごしてしまっていることがおそらくたくさんあるだろうということだ。



忘れているものがあるなと思っていたところに、本当に忘れていた用事がもうひとつあった。


旗当番だ。




木曜日の夕方、郵便受けにこの旗が丸めて差し込まれていたのに気付いた。


あわてて、年度初めにもらった旗当番の割当表を確認してみると、金曜日と月曜日がわが家の当番になっている。


完全に忘れていた。


日本全国でこのようなことが行われているか甚だ疑問だが、わが市では、通学路のあちこちに保護者が輪番で立って、児童の横断を旗を振って補助するのだ。


昨年までは義母にお願いしていたため、自分で旗を持つのは今回初めてになる。場所などはプリントに書かれているが、実際のところ、行ってみないとイメージがつかめない。


旗を振ってから出勤すると、仕事の始業時間に間に合うのかも微妙なので、急ぎ職場に連絡した。


実はこの旗当番、昨年度から大変に議論が交わされ、何度となくプリントが配られていた。話がそれるがその議論の概要を書く。



・昨今の少子化で、保護者の数も減っている。通学路を安全に見守る旗当番が足りなくなり苦慮している。


・かと言って輪番の回数をあまりに増やすと、保護者の負担が大きくなる。そこで、通学路を変更したいと考えている。通学路を変更して交差点の横断の回数を減らせば、旗当番の人数を一人減らすことができる。そうすると輪番回数を増やさずに済む。


・しかしそのためには、大きな信号交差点を横断することになる。かえって危険とも考えられる。どう考えるか、アンケートにお答えください。


〈アンケート〉

①現状のままの通学路で、旗当番の輪番回数を増やすべき。

②通学路を変えて旗当番の人数を減らし、輪番が増えないようにすべき。

③通学路の旗当番は、そもそも不要で廃止すべき。



大体、こういった内容のアンケートだった。


僕は、③にマルを付けて提出した。信号を守って横断すれば十分なように思うし、自分が子供の頃もそうしていた。何より、旗当番という制度が煩わしい。正直に言うと煩わし以外の理由は、ほぼ後付けだが、とにかく煩わしい


しばらくして、アンケート結果がプリントで通知された。



・アンケートの結果、大部分の方が②に賛成でした。

よって②を採用します。

・なお、③の回答数は2票でした。


2票か。僕の他に味方は一人しかいないらしい。


僕の気持ちは民意からかけ離れていたようだ。皆、真面目であり、子供を心配しており、旗当番の役割に大きな期待をしているのだ。


実は、郵便受けに旗が差し込まれていたのを見て、一瞬、気付かなかったことにしようかと考えた。シングルファザーだ。仕事が、立て込んで郵便受けを見過ごして気付かなかったという言い訳も成り立つのではなかろうか。


しかしそう思ったのは一瞬で、旗当番に関する民意のことを思い出すと、サボッた時の批判をかわしきれないように思えた。いわゆる同調圧力か。


大雨の中、当番の場所になる信号交差点に立ってみた。なんと、僕の他にあと2人、旗を持った方がお見えだった。


やや驚いたが、そう言えばそのことも書かれていた。


保護者による旗当番以外に、高齢の方で毎日、ボランティアで旗を振ってくださっている方がいるらしい。


それにしてもあと2人、僕を含めれば3人が一つの交差点に立っているのだ。どうなのか、これは。


娘達の通学班は、その交差点を2段階に、L字型に横断する。


そのL字型の、3つの各頂点に、3人の旗振りが立った。

やってみると、確かに一人で切り盛りするのは難しい。3つ程の通学班が次々に交差点を渡ろうとするので、西端にいる間に、南端に他の班が来ているなどという事態になるのだ。


しかしそもそも、この人力誘導を省力化し、機械化したのが信号機ではなかったのか。信号機がある上で、なお旗当番は必要なのか?


「ありがとうございました、ご苦労さまでした。」


全ての通学班の通過が終わって、3人の旗振りは挨拶を交わして散開した。僕は、ギリギリで始業時刻に間に合うことが出来た。


なんの話だったか分からなくなったが、今回の記事は、シングルファザーがつい忘れ勝ちなさまざまな事を書き連ねるのが目的であった。


体操着、長靴、旗当番。細やかとは言えないシングルファザーのしわ寄せが娘に行かないよう気を付けたい。


明日も、大切な旗当番の役目を果たさねばならない。