眠れない。

毎日、娘と一緒に寝ているせいもあって、9時過ぎには眠気に襲われるのだが、今日は全くだ。

明日は、娘の誕生日。
奇しくも今日の深夜から、妻が心待ちにしていた「おそ松さん」の3期も始まる。

気になるよね、りこ。
ほんとはもちろん、生きて見るはずだったんだもんね。
8歳になった娘の姿も、おそ松さんも。
今夜あたり、姿を見せてくれてもいいんじゃないの?
誰もいないのにテレビが勝手に点いてくれるとかさ。
今日しかないよね。
待ってるよ。

僕には、もったいなかった妻。
皆に釣り合わないと言われた妻。
漫画の才能が素晴らしく、その感性も魅力だった。
気が回らず、行き届かない僕も、妻がいてくれれば人生何とかなりそうだと思った。
人間として足りないところが多く、友達も少なく、将来孤独になりそうな僕だったが、妻がいれば何も怖くないと思った。
出来ないと思っていた子供も授かって、欲しかったものが全部揃ったと思った。

年頃になると女の子は、ママと徒党を組んで、パパを孤立させるケースが多いそうだ。将来そうなるのかなと心配した。でもそうなる前に君がいなくなってしまった。
娘の教育の仕方で、夫婦が対立することが多いそうだ。それも出来ないまま、君がいなくなってしまった。
定年退職して時間が出来たら、朝、喫茶店に行って、公園を散歩するのだろうと思っていた。そんな老夫婦を見て、自分たちの未来を想像していた。

病気がわかったとき、君がいなければ生きていけないから、僕も死ぬ、家族で死のうと言ったのに、そうできず、何故か今も生きている。

未亡人という言葉は、夫と共に死ぬべきなのにまだ死んでいない残された妻のことを指していうそうだ。では何故、夫のことを未亡人と言わないのだろうか。自分も妻とともに死ぬべきだったのに、未だ死んでいないのだが。

僕より妻の方が、人間として、生物として、高等で高級だったのに、何故下等で醜い僕が生き残ったのだろう。どう考えても間違いとしか思えない。何が間違ったのだろうか。

出会って仲良くなった頃、幸せだった頃のことを思い出すと、あれはもしかして幻だったのかと思えてくる。写真を見返すと、確かにその頃の姿が残っていて、幻でなかったと確認できる。でももうその妻がいないことを思って、何が現実なのか分からなくなる。

亡くなった後、じわじわと寂しさが襲ってくるというのは本当のようだ。

時間を巻き戻して、出会いのところからもう一度繰り返したい。今日、眠ったら、17年前に戻って目が覚めて欲しい。