僕の仕事には盆休みがないので、昨日も通常通り出勤した。
午前9時半、事務所で仕事をしているときに電話が鳴った。

「りこが、座り込んで立てなくなった、おしっこが漏れて紙おむつもズボンも濡れてる。どうしたらいい!?」

義母からのSOSだ。時々かかってくる義母からの電話は、こんな風に丸投げの問いかけであることが多い。

「りこが転んだ。どうしたらいい!?」
「りこが気持ち悪いって。どうしたらいい!?」
「娘が学校に行きたくないって。どうしたらいい!?」

いきなり聞かれても、詳しい状況も良くわからないのに答えようがない。しかし実はここで真面目に答えても仕方ないのである。実際のところ義母は、解決策を求めているわけではない。

「こんなトラブルが起こって私は大変だ、futaも、のんびり仕事してないで、私が大変だということを『知れ』!」

この「知れ!」が本題なのだと思う。もちろん義母はそんな風に言うわけではないが、僕はそうであると分析している。
「どうしたらいい!?」は、「私が大変だということを知れ!」に置き換えて理解すれば良い。

「すいません、僕がのんびり仕事をしている間に、家では大変なことになっていたんですね、お義母さんが見ていてくれなかったら一大事でした、申し訳ありません。立てないのなら看護師さんを呼んでみてください。」

よってこのくらいの返事になる。すると義母は、朝からどのように大変だったかをざっと2回どおりくらい説明して、

「もう、本当に大変だったよ!」

と言って電話を切ってくれる。内容が余程の場合には、仕事を早引きして帰ることもあるが、大体は、爆発エネルギーを受け止めて、1人で対処させてすみませんと謝ればミッション完了である。

しかし疑問が残る。義母が世話をしているときに、大変なトラブルが起こる割合が異常に高いのだ。

小を粗相して、そのまま座り込んで立てなくなったなどという事態に、僕は出くわしたことがない。僕が世話をしている間に小の粗相が起こったのは、過去3ヶ月で3回程だ。

少し前に別の記事にも書いたが、先週の月曜日、義母が世話をしている間に、1日に転倒1回、小の粗相2回があったらしい。昨日も、小の粗相を2回したそうだ。

なぜ義母が世話をしている間にだけ、それほど頻繁にトラブルが起こるのか。

これも少し前の記事に書いたが、僕が仕事から帰宅すると大抵、ベッド脇の呼び鈴が取り外されており、義母によると「チンチンうるさいから外してるよ」ということだった。

そうして呼び鈴を外しているせいでトラブルがあっても気づかないのかも知れないが、それだけでは説明がつかない。

呼び鈴は、ベッド脇だけでなく、リビングとトイレにもあり、こちらは取り外された様子がないのだ。

もちろん日中取り外しておいて、僕が帰るまでに元に戻し、さも取り外していなかったかのように工作している可能性もあるが、そんせせこましいことを義母がするとは思えない。ベッド脇の呼び鈴を取り外して放置して、悪びれもせずに「外してるよ」と言えるのが義母であって、隠し立てをするような性格ではないのだ。

妻は、昼間の大半の時間を、リビングでアニメを観て過ごしている。用事があれば電動昇降ソファの足元の呼び鈴をすぐに鳴らすし、特に頻尿の妻は、尿意を催すとチンチンと激しくベルを鳴らす。

娘の世話などでリビングを離れていても、呼び鈴の音は聞こえてくるし、いよいよトイレに行きたくなれば、妻は1人でヨチヨチ歩いてなんとかトイレに辿り着くことができる。トイレに辿り着くとそこにある呼び鈴をチンチン鳴らして介助を呼ぶ。ズボンを下ろしたり便座への着座は一人でできないので、そうして人を呼ぶのだ。

僕が世話をしている限り、リビングとトイレの呼び鈴かあれば、粗相をすることは余程少ないように思う。ところが義母は、

「ちょっと目を離したらビショビショで参ったわ。」

といった言い方をする。どうすればそうなるのか分からない。

僕は普段、リビングに隣接した和室に座って妻の様子をみていることが多いが、それを見た義母はこんな風に言う。

「そこだと、りこが見えないでしょう。私はいつもりこの隣に座って様子を見てるよ、そうしないと世話ができないからね。」

隣に座っていて、ちょっと目を離したらビショビショ…

どういう状況だ?あながち嘘をついてるようにも見えず、分からずにいるのが現状だ。

「私はもう疲れたよ、早くヘルパーさんに入って欲しいねえ。」

僕もヘルパーさんに早く入って欲しい。その一部には、昼間、義母がどんな行動を取っているのか知りたい気持ちがある。会話のできない妻から聞くことはできないし、そういう意味でも早くヘルパーさんが入ればなあと思う。