始まる前は、ずっしりと気分が沈んだ3連休だったが、何とか乗り切ることができた。結果的には、

 
・13日の認定調査までに済ませたかった介護の細かい記録をまとめることができた。
・部屋のレイアウト変えをして、介護ベッドの周りを少し広くできた。
・持ち帰った仕事を1つ片付けた。
 
まずまず成果もあった。これと言うのも、昨日から、娘が僕の母のところにお泊りに行ってくれたお陰だ。そして、それというのも元をたどれば、実は義母のお陰なのだ。
 
というわけで先週あった、義母にまつわる話を書きたい。
 
 
先週月曜日、義母が爆発した。
 
この日、妻がかなり激しく転倒し、さらにタイミング悪く、1日の間に2度、小さい方を粗相してしまった。
 
転倒1回と粗相2回で、義母はヒステリーを起こした。
僕が帰宅すると、
 
「今日は大変だった!!」
 
と言ってバケツをひっくり返したように不満をぶちまけ始めた。話がひと通り終わると、また最初に戻って同じ内容で2杯目のバケツをひっくり返し、さらに、3杯、4杯と繰り返すので、僕は同じ話に酔って、目が回る思いがした。
 
「それは大変でしたね、ご苦労さまでした。」
 
話が早く終わってくれるための呪文として20回くらい唱えたように思う。とにかく義母のストレスは極限に達しており、どのくらいすごかったかと言うと、この日以来、妻が、あれだけ拒否していた紙おむつを履くようになったのだから、義母の爆発力には敬意を表するしかない。
 
しかしその義母の中の圧力は、妻や僕に爆発したくらいでは、下がりきらなかったようだ。その日の夜、義母は、僕の母に電話をした。
 
「このままでは、futaと自分が倒れる。もう限界だ、手伝いに来て欲しい。」
 
ちなみに、僕は倒れるとは一言も言っていない。言っていないが、そう言っているという体で僕の母に頼んだらしい。僕の母は82歳でヒザが悪く、介護は本来、無理だ。高齢だが、いまだに内職をしていて時間の拘束もある。
 
しかし母は「分かりましたやります」と答えたらしい。それだけでなく母は、僕の姉夫婦にも声をかけた。さらに姉夫婦から、保育士をしている姪にまで話が広がった。
 
翌日の朝、僕はLINEを見て驚いた。
 
母と姉夫婦と姪が、交代で手伝いに行くのでどうしたらいいか?と言った内容に発展していたのだ。義理の兄は元自衛官で、痰吸引もできるとか何とか。
 
有り難いと言えば有り難いが、これらの人達は、皆、70km程離れた場所に住んでいる。手伝いに来るのは容易ではない。
 
それに、例えば20歳そこそこの姪が手伝いに来てくれたとして、じゃあ頼むねよろしくと言って、僕が休めるとは思えない。義理の兄の場合も然りだ。
 
やむを得ず、1日家を空けるからその間だけ頼みます、みたいな場合ならともかく、平常時にそんな風に頼めるものではない。
 
とはいえ有り難い話ではあり、少し迷ったが、妻の介護でなく、夏休みに入った娘をしばらくあずかって、遊んであげてくれないかと頼んだ。
 
結果、昨日から、娘は僕の母の家にお泊まりすることになり、姉夫婦や姪が一緒に遊んでくれている。このまま数日はお泊まりしてくれる予定だ。
 
僕は、娘がいない間、妻の介護に専念でき、相当楽になる。義母の爆発が功を奏した形だ。
 
2日後の水曜日、当の義母に恐る恐る事情を話した。
 
「手伝いに来てもらうのでなく、娘をあずかってもらうように頼みました」
 
ひょっとして怒るのではと思ったが、
 
「ああそうだね、それがいいね、私もあの日は爆発したけど、よく考えたら手伝いに来てもらってもかえって困るわ」
 
こういう人だ。
おそらく、月曜日にした話は、義母の中で過去の出来事として終わっているのだ。
皆、かなり驚いてどうしたものかという話しになったのだが、気にしている風でもない。
 
ちなみに義母は、この3連休の間、一秒も顔を出さなかった。爆発から間がなかったので僕が、
 
「お義母さんは、3日間ゆっくり休んでください」
 
と言ったせいであり、そのとおりにしている義母に落ち度はないのだが。
 
それからこれも先週分かったことなのだが、妻の介護ベッドの脇にナースコールのように取り付けている、この呼び鈴の話。
 
不思議なことに、僕が仕事から帰るとほぼ100%、この呼び鈴が取り外されてしまっている。固定のゴムは、かなり固くしておいたので、間違って外れることは恐らくない。ベッドへの移乗のときに邪魔になって、看護師さんが外したのかな、などと思っていたが、先週、義母が言った。
 
「チンチン鳴らしてうるさいから、私いつも外してるよ」
 
そりゃ呼び鈴だから鳴るけど。
妻が鳴らせるように取り付けたのに、それを取り外してしまうとは。
 
「呼び鈴がないと呼べないじゃないですか」
 
「私、あの音嫌いなのよ、チンチンうるさくて」
 
取りつく島がないので、妻に聞いてみた。
 
「昼間、呼び鈴外されて、鳴らせなくなってるの?」
 
コクリ。
 
さすが義母。
クヨクヨ悩んでいるのがバカバカしくなる豪胆さだ。
明日の朝、3日ぶりに義母が来てくださると思う。
 
「3連休はゆっくり休めましたか?」
 
と聞くと若干イヤミになる。ここは、
 
「それは大変でしたね、ご苦労さまでした。」
 
例の呪文で乗り切りたいと思っている。