明日の朝一番で、市役所に出向き、重度訪問介護の担当者数名と面談することになった。
僕の住む市では、なかなか重度訪問介護の認定が下りないので、ケアマネさんらとともに、必要性を説明に行くことにしたのだ。
病状など、どんな風に説明しようか、何か文でも打っておくべきかなどと思案していたら、小学2年生の娘がこんなことを言い出した。
「パパ、わたし明日、スピーチしないといけない。何話していいか分からない。」
状況が、奇妙に娘と一致した。ともに明日、どう話そうか悩んでいるわけだ。
「よし、考えてあげるよ。」
◆題:ニードルフェルト
この間、パパとニードルフェルトで工作しました。
ニードルフェルトは、ふわふわの綿のような物を、針でチクチク刺していくと、だんだん小さく固くなっていって、好きな形に、好きな物を作れるものです。
「なんで針で突くと固くなるの?」とパパに聞いたら、綿の毛がどんどん絡まって、固まっていくからだよと教えてくれました。アクセサリーが出来上がってとても楽しかったです。』
まぁ、作ったのはこれなのだが。
「どう?ニードルフェルト」
「アクセサリーじゃないよ!さとりのサードアイだもん!」
「そんなこと言っても誰も分かんないって」
「うーん、ニードルフェルト、ダメ!」
「分かった新しいの考えるよ。」
◆題:ねぞう
わたしは朝起きると、ベッドの上で逆さまを向いていることがあります。理由がわからないので「どうして?」とパパに聞いたら「それは寝相が悪いからだよ」と言われました。
「寝相ってなに?」ときいたら、「寝てる間に動いて逆さまになることだよ」と言われました。
「パパはどうして逆さまにならないの?」と聞いたら、「大人は寝相がいいからだよ」と言われました。
わたしは早く大人になりたいです。
「どう?ねぞう」
「みんなのスピーチはもっと真面目で、笑いとか取らない」
「ダメか?」
「ダメ。ニードルフェルトの方がいい。でもパパのは、全然スピーチの形になってないから、ダメ。いつ、だれが、どこで、何をした、それから感想、という形じゃないとダメ。」
「そうか」
◆娘作 ニードルフェルト
この間、お家で、パパと私で、ニードルフェルトでアクセサリーを作りました。とても楽しかったです。終わりです。
「それで終わり!?」
「みんなこれくらいだよ。いつ、だれが、どこで、何をした、それから感想になってるでしょ」
「確かにそうだな」
「パパのは長すぎて、形に合ってない」
「そうか…」
そんな話をして、なんとか寝付いた娘をそっと置いて部屋を出た。今、妻の介護ベッドの隣で添い寝している。
市役所に行くのは朝一番なので、ちょうど娘がスピーチしている頃に、僕も説明しているのじゃないかと思う。
長くて形になってない。ごもっとも。何となく的確な指摘を受けた気がした。
さておき、僕の市ではとにかく認定が受けられず、身内の住所に住民票を移して、別の市で認定を受けた人もいるのだとか。
あまり期待できないが、短く話してなるほどと思わせたいものだ。
親子ともスピーチ、うまくいきますように。