5月11日の月曜日、痰の絡みでかなりのピンチになった。

午後7時過ぎから調子が悪くなり、吸引しても次々と痰が湧き上がって取リ切れず、午後9時半をまわっても安定しなかった。 

ここ最近、僕の吸引の手技も多少マシになり、余程でなければ対処出来る自信がついていたが、紙のように白い顔色と、80を切りそうになったサチュレーションを見て、自分で処置することを諦め、訪問看護師さんを呼んだ。 

しばらくして駆けつけてくださった看護師さんは、身体を横に向けたり、胸を押して呼吸を補助したりと、あれこれ試し、1時間ほど休まず処置をしてくださった。10時半をまわった頃にようやく安定し、看護師さんは帰られた。

僕も娘も風呂に入っていなかったので、大急ぎですませた。  

ところが、風呂を片付けて様子をみると、30 分と経っていないのに、妻はまた苦しそうに咳込んでいた。バイパップをつけて休んでいたのに、サチュレーションは80台と低い。 

30分前、看護師さんが帰り際に、調子が悪くなったらまた呼んでねと言ってくださっていた。社交辞令なのは分かっていたが、少々心が折れており、申し訳ないがもう一度来てもらうよう、電話で頼んだ。 

看護師さんが再び来てくださり、処置を終えて帰っていったのは、夜半12時を軽く過ぎた後だった。こんな風に、2度も続けて処置をお願いしたことは過去になく、がっくりと疲れた。 

帰宅する看護師さんを、マンションのエレベーターまで送るとき、少し立ち話をした。この方は、妻を診ていただくようになった最初の頃から、最も頼りにしている方だ。 

「言いづらいけど、そろそろ気管切開をするか、しないか、意思を固めておくべきだと思います。今回みたいなことで病院に運ばれれば、おそらく救命のために気管切開をされると思います。少し前までは、まだぼんやり先のことで良かったけど、もうそのくらいの段階に来ていると思いますから。」 

「そうですね、それは感じます。半年前はまだまだと思っていましたが、この年明けくらいから切迫してきた感じがします。この先の半年、1年、持つかどうか。」 

「ここ半年の進みをみていると、正直、1年は厳しいかもしれません。」 

 「そうですか。確かに僕もそう思います。」 

まとめると、大体そんな会話だった。 

そんなことがあった2日後、5月13日の水曜日、ケアマネさんと義母や、先の看護師さんも同席して今後についての打ち合わせがあった。入浴介助のこと等を話したあと、また気管切開の話しになった。 

義母には、気管切開の話をこれまで幾度かしているが、理解が今ひとつなので、もう一度僕から念押しした。 

「気管切開して人工呼吸器を付ければ、今より痰の吸引などは楽になり、状態は安定すると思います。でも、呼吸器のチューブを差すわけですから、生活は今よりかなり制限されますし、24時間誰かが付き添わねばならなくなると思います。それから、10年単位で延命する可能性があるので、今よりずっと病状が進んで、意思疎通も全く出来なくなるかもしれません。例えば本人が、身体が痛くても伝えることも出来ないとか。」 

「痛いだけでなく、身体に褥瘡ができることもあります。」

 看護師さんが補足してくださった。

「気管切開をするかどうか、意思をしっかり決めておかないと、救急搬送されたときに困ります。本人は、望んでなかったのに、意識が戻ったら施術が済んでいて、とても悲しんだ例もあるそうです。いきなり切開でなく、口から挿管して呼吸補助をする場合もあるそうですが、結局その後、状態を安定させるために気管切開する流れになりやすいそうです。切開するか、挿管するかなど決めておかなければなりません。」 

そう僕が言うと、看護師さんが、 

「挿管や切開もそうですが、救急搬送そのものをするかどうか決めておいた方がいいです。例えば誤嚥性肺炎なら、入院して炎症を治すのも良いと思いますが、呼吸苦で搬送すると、どのみち延命治療になりますから。」 

 と言われた。

「呼吸苦で救急搬送しないとどうなりますか?」 

と尋ねてみた。 

「今の段階なら、処置していくうちにサチュレーションが回復していきますが、どこかの時点でいくら処置しても回復しなくなることがあります。そのときには、ご家族を呼ぶしかありません。」 

家で窒息するのを看取るということになるようだ。僕は、気管切開と人工呼吸器装着をするかしないかという風に考えていたが、救急搬送するかしないか、さらに言えば、延命治療をするかしないかをズバリ突き付けられることになるようだ。延命しないなら、家で看取るということになるらしい。 

義母は、以前に尋ねたときと同じく 

「私には分からないから」

 と言って、僕に任せると続けた。 

同じ、5月13日の夕刻、訪問医の先生の処方に従う形で、酸素吸入器が設置された。看護師さんの勧めもあって、先生にお願いしていたものだ。 



また5月18日から、訪問入浴を週一回お願いすることにした。

先日からヘルパーの導入を検討していたが、なかなか受け手もなく、ケアマネさんのプランニングで、月曜日に訪問入浴、水曜日と金曜日に、訪問看護による入浴介助を導入して、介護負担を減らそうという話しになった。 

今週は、バタバタとそんなことがあった。 

この記事は、隙間時間に少しずつ打っていたが、その間にも色々な出来事があり、昨日も痰の吸引に非常に長く時間がかかった。午後2時くらいから、午後9時半頃まで断続的に痰を取り続け、過去最長だったように思う。酸素吸入ができるようになったので、それだけは助かったが。 

追記。 

桃菜さんのブログにあったハンドマッサージ機、わが家も使い始めました。とても良いです。チームALSの中の普及率、すごいかも知れませんね。