昨日は、娘の7歳の誕生日だった。

一昨年の誕生日は、妻と娘と僕の三人で、レストランに出掛けハンバーグを食べた。

東海地区ではメジャーな「ブロンコビリー」というレストランで、誕生日祝いのケーキが付き、記念写真を撮ってフォトフレームに仕上げてくれ、それらのサービスが全てタダだった。これはいいね、誕生日の記録を残せるし、毎年行こうと話し合った。

昨年の誕生日は、約束どおりブロンコビリーに出掛けてフォトフレームをもらった。

しかし、ALSの診断が付く直前のタイミングになってしまったため、今でもその写真を見ると不安な気持ちを思い出す。

10月13日が誕生日で、5日後の18日に筋電図検査を受け、19日に診断が下っている。

そして今年は、妻の嚥下の低下で外食は無理になり、残念ながらブロンコビリーは取り止めた。毎年と話し合ったのに、まさか1年しか続かないとは思わなかった。

普通の食事も味気ないので、代わりに宅配ピザを取った。

僕と娘はピザを頼み、妻は、サイドメニューのグラタンを取った。柔らかいクリームなら食べられるのではと思ったが、少し食べて激しく噎せ込み、中断した。

娘が、

「グラタンでもこうなる(噎せる)なんて、何ならいいの?治って欲しいよ!」

と言って泣いた。

「ママが一番辛いんだからね、なでなでしてあげてね」

そう言うと娘は、泣きながらも妻の頭を撫でた。僕は、もう大きくなった娘を抱き上げて高い高いをしたりして誤魔化したりした。

妻が噎せ込むのをみて、娘が泣き言を言ったのは初めてではないかと思う。

そんな一幕があった後、オモチャ屋に出掛けて、かなり高いオモチャを2つ、プレゼントに買った。さらに最近はまっている、DVD付きの図鑑なども買った。

ちょっと買い与え過ぎだが、少しでも喜ばせたいと思い、妻も同意してくれた。

夕方には、頼んでおいた、すみっコぐらしのケーキが届いた。台風で遅れたが、なんとか誕生日の間に着いてよかった。





娘はまずまず喜んでくれたと思う。

夜、いつものように娘に、公文教室の宿題プリントをやらせた。

宿題の誤りを確認しながら僕もプリントを読むのだが、国語のプリントに「三年峠」という話が書かれていた。

有名な話らしいが、僕は聞いたことがなかった。

「三年峠」で転ぶと、三年しか生きられないという。ある日、おじいさんがその三年峠で転んでしまった。その日からおじいさんは寝込み、病気になってしまった。

というところまであらすじ紹介が書かれており、あとは自分で本をよみましょうという内容だった。気になったので、続きをネットで検索してみた。

ふさぎ込んでいたおじいさんは、病気が治る方法があると教えられる。もう一度、三年峠で転べばいいという。

「一度転ぶと、三年生きる。二度転べば六年生きる。何度も転べば長生きできる。」

そういう説得を受けて三年峠の病の悩みを抜けるという話のようだ。なるほど、プラス思考を勧める話だ。

ALSもこんな風に乗り越えられたらいいのにと思った。
ALS峠でもう一度転べばなんとかならんかな。

来年も再来年も娘の誕生日を祝いたいし、記念写真も撮りたい。何より妻と娘の笑顔が見たいと思う。