STさん。
言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist)。
先日、STさんから提案があり、妻の食事の様子を観察したいとのことだった。
祝日であれば僕も同席できるので、一昨日の昼食の時間帯に自宅に来ていただいた。
妻が食べて見せたのは、マクドナルドの朝メニューの、ソーセージエッグマフィン。
と言っても、普通にマフィンにかぶりつくのは、妻には少々難しいので、中物のソーセージとエッグだけを取り出し、1cm角の大きさに切って、フォークで食べてもらった。
このあたりのことは、一昨日の妻のブログにも少し書かれている。
早食いの僕なら2~3分で食べてしまうソーセージエッグマフィンだが、妻はその中物だけを一時間以上かけて食べた。ソーセージはなんとか完食し、エッグの部分は少し残した。
最近の妻としてはかなり良く頑張って食べきった方だ。コンディションによっては、ほんの一口、二口でむせてあきらめてしまうことも多い。
ちなみに余ったマフィン部分は僕が食べており、食品ロスはない。いわゆる、「スタッフが美味しくいただきました」である。マフィンだけ食べても油とチーズで割りと美味しいのには感心するものがあった。
STさんの評価によると、妻はとても上手に食べているとのことだった。
普段意識していないが、舌は口の中で、食べ物を喉へと送り込む、手のような役割を果たしている。舌の力が弱まると、その喉への送り込みが難しくなってくる。
STさんの観察では、
・妻は、絶妙なタイミングでとろみのついたお茶を飲み、食べ物を喉へ上手く送り込んでいる。
・固形物を喉に送り込むのは難しい。お茶がなければ、顔を上に向けて送り込まねばならないところを、お茶を使って、顎を引いた姿勢のまま上手く食べている。お茶を含むとき、口も上手く閉じられている。
・途中で幾度かむせたが、咳の力で食べ物を吐き出せている。むせたときに吸引器を使うと、息を吸い込めないのでかえって苦しいことがある。咳で出せているのは良い。
・妻なりの要領とタイミングで食べているので、これを他人が介助しようとすると本人のタイミングと合わず苦労することになる。早いうちから食べ方を観察したい目的は、そういった本人なりの要領を把握する意図もある。
ということだった。
素人の僕は、毎日見ていても、時々激しくむせているな、くらいのことしか分からないが、STさんに言葉で解説してもらうと、なるほどと思わされる。
嚥下というと、喉のことだけを考えてしまうが、舌の動きも密接に関わっているらしい。思った以上に複雑な仕組みであることにも驚かされる。
STさんはその後、食後のバイタルを計測し、通常80~90回/分の脈拍が、110回/分くらいまで上がっていると言った。
そのくらい負荷があり、疲れるということなのだそうだ。これも数字で示されると、なるほどだ。
またSTさんが、「あまり見ると穴が明きますから」と言って、妻を凝視したりせず、会話をしながら合間にチラチラ見る感じで観察していたのも流石という感じだった。
そうして、STさんは、また様子を見せてください、食べ方についても一緒に考えましょうと言って帰っていかれた。
ALSの場合は、主治医の診察もさることながら、訪問診療や訪問看護がとても重要であると改めて感じさせられる。
対して最近、僕がなにをしていたかというと、
しかし全種類揃えてしまった今、あとはもう、夫として妻の食べないマフィンを美味しくいただくくらいしか、できることがない。
これだけ買い集め、食品ロスもないのだから、そろそろマクドナルドから表彰されてもいいのではと、自我の肥大と腹の肥大を感じる最近である。