8月24日は、妻の誕生日だった。
ALSの疑いを持ったのが、昨年の9月10日だ。その直前にあたる8月は、難病のことを考えずに過ごした最後の時期だった。
誕生日には、仕事の休みを取って、お祝いの食事に出掛けるのが恒例だった。
昨年は仕事の都合が付かず、日にちを2日ずらし、8月22日に、片道一時間半かけて、妻の気に入りだった低糖専門キッチンに出掛けた。
その頃、妻の口数が極端に減ったことを気にしていた。
昨年7月頃からだと思うが、夜寝るとき「おやすみ」と声をかけても「んー」と答えるだけになり、「おやすみ」を返してくれなくなった。妻に聞くと、蓄膿で痰が絡んで話しづらいのだという。
一応納得したものの、なんだか寂しく、あまり僕と話したくないのかな、などと拗ねたように考えていた。昨年の8月は、そんなことを考えながら、少し憂うつ気味に過ごしていた。
食事に出掛けたその日も、片道一時間半の車中、ほとんど会話がなかった。
うちの夫婦はこんな風だったかなと思い、あまり寄り道もせずに帰って来た。
まさかALSのせいで話しづらくなっているとは思わなかった。
あの時の車中の様子を時々、頭に思い浮かべることがある。会話が少なくなったことだけを気にしていた、今にして思えばのんきな悩みだった。
今年の誕生日は、これといった食事には出掛けなかった。
ALSの症状で嚥下が低下し、食べられる物が限られてきたからだ。
食事の時間がかなり長くなったことや、咳き込んだときには吸引器が必要なことなどもあり、レストランに入るには勇気がいる。
加えて、食前・食後に、薬や追加の栄養などを胃ろうから注入するので、家でのんびり食べた方が気楽だ。
そういったことから、最近は外食を避け、往復一時間程度の短い外出しかしないようになった。
妻は、短い距離なら歩くことができるし、右手も動く。だからもっと出かけても良いのだが、遠出がほとんどないのはそういう事情による。
朝出掛けて、出先の思い付いたところで昼食を食べ、夕方に帰って来るという、一年前には当たり前だったことが、今は懐かしく思える。外食が難しいと、1日かけた外出そのものが難しくなるのだ。
食事と会話と外出の楽しみを、ALSが奪っていった。それくらい残してくれてもいいだろうというものを、この病気は容赦なく奪って行く。
久しぶりのブログ更新なのに、暗い記事になってしまった。
誕生日には妻にちょっとしたプレゼントを贈ったが、あまり気が利いてないなぁと思い、昨日こういうぬいぐるみをネットで注文した。
内緒にしておくつもりが、昨日、バレてしまった。妻も娘も喜んでくれたようだが。
今日あたり宅配が届くと思う。出来ることの中で楽しさを探したい。