わが家の一人娘は、今年小学校に上がったばかりの6歳だ。一昨日、その娘が言った。

「いろいろな係をしっかり決めよう!
わたし、カギを開ける係と電気のスイッチ押す係やる!」

外出先から帰ったときに、家の扉を開けて照明を点ける係のことだ。

娘は続けて、パパは◯◯係、自分は◯◯係と、いくつもの係を指名していった。そしていくつ目かでこう言った。

「わたし、ママがむせたとき『大丈夫?』って言う係やる!何回も何回も何回も『大丈夫?』って言い続けるから、パパはその間に痰を吸う機械を持ってくる係ね!」

娘の発言には時々驚かされることがある。最近の発言で印象に残ったものをいくつか書いてみようと思う。

今月初めの6月1日に、小学校の授業参観があった。車椅子を押して妻と一緒に学校に行き、娘に近づいたところ、クラスメートがやや驚いた様子を見せた。間髪を入れずに娘がクラスメートに説明した。

「ママは長く歩けないから車椅子に乗ってるんだよ!」

状況に戸惑って言葉が出なかったりしてもおかしくなかろうに、しっかりと説明した娘に少し驚いた。親ばかだが、娘を偉いと思った。

娘が小学校に入学して2ヶ月以上経つ。毎朝登校のとき、義母が通学班の集合場所まで送ってくれているが、今週、その義母が熱を出してしまった。

義母が無理となると、僕は仕事に行かねばならないし、妻にも頼めないしで、誰も付き添いができない。

集合場所は家から2~30mの近さだし、もう2ヶ月以上毎日通っているし、一人で行ける?と娘にきいてみた。「大丈夫」と言うので、付き添いなしで出掛けさせてみた。結果、無事一人で登下校することができ、案ずるより生むが易しだった。

その日の夜、何か変わったことはなかったか尋ねてみた。

通学班の集合場所で見守りをしていた大人の人に「今日は一人なの?」と聞かれたのだそうだ。そこで娘は、

「ばあちゃんは熱を出して来れないし、ママも病気だから一人で来た!」

と答えたそうだ。

そう言えば、ママは病気だから送れないといった説明を特にしなかったと思う。言わなくても分かってくれたようだ。「ママ付いてきて」とダダをこねることもなかった。

少し前、訪問看護ステーションでカンファレンスを受けたとき、

『親が ”がん” になったとき子どもに何を伝え、どう支えるか』

という冊子をもらった。ケアマネさんや看護師さんらが、ALSとがんでは病気は違うが参考になるのではと言ってくださった。

『子どもは何かを感じ取っています。
「心配させたくないから子どもには知らせない方が良い」という考え方もありますが、子どもは、親の病気について情報が与えられなくても、いつもと違う何かが起こっていることに気づきます。
そして、何も知らされないことによって、一人で実際以上に悪い想像を膨らませ、より大きな不安感を持ってしまうこともあるのです。』

と書かれており、総じて隠すよりも家族の一員として説明した方がよいという主旨だった。
その他、子供は、自分が悪いことをしたせいでお母さんが病気になってしまったと思い込む傾向があることなどが書かれており、以前ブログでakikoさんに教えていただいたとおりだった。

会話が難しい他、入院、点滴、胃ろう、痰吸引、バイパップ、車椅子と、病気のことは隠しようがない。もちろん、娘も何かを感じ取っているだろう。

一方で、病名などは詳しく話していないが、どこかで、少なくともいたわるべき病気だと感じているようだ。

病気とは関係ないかも知れないが、娘はママに優しい。ねこのぬいぐるみを抱いて、


「ママ好きにゃー!」
と寄っていって、ママにじゃれついたりする。パパのところにも来てよというと、
「パパ嫌いにゃ、ガリッ!」
と言って、爪で引っ掻く真似をし、ママとパパをしっかり差別化する。

「大丈夫係」の娘に、今後どこまで話していくべきか悩んでいる。しかし本当は僕が、妻と娘への「大丈夫係」にならなければいけないのだろう。