これまであまりあからさまに書いていないが、実は主治医とあまり上手くいっていない。

最初は、先生のはっきりした物言いを頼もしく感じ、勇気付けられたこともあった。しかしそう思ったのは初診から3回くらいで、だんだん微妙になり、1月以降は、正直通院するのがちょっと辛くなっている。

3日前の火曜日、今月の定期診察があったが、真面目に今後を考えるくらい雰囲気が悪くなった。

もともと僕は、喋りづらい妻に代わって病状を説明するために付き添っているようなものだ。その僕の会話で雰囲気が悪くなったのでは冗談にもならない。

診察で揉めると、揉めたせいで治療の風向きが悪くならないか、こんな風に揉めてしまう夫に妻は失望していないか、歯がゆいと思っていないかなどとあれこれ考え、かなり落ち込む。

幸い、先生のことを知っている方の話しによると、その先生を苦手に思っている人は僕だけでなくかなり多いそうで、自分だけではないと思うようにしているが。

どんな風に揉めるのか、いくつか例を挙げてみる。

今年の1月の診察のときの会話。
食事のときにどのくらいの頻度でむせるかと聞かれた。数回に1回くらいで、ひどくむせるのは食事でなくむしろ痰が絡んだときですと答えたら、

「今聞いてるのは、食事のときにどのくらいむせるかについてだ。痰が絡むのは別のことだから今聞いていない」

と叱られた。

やはり1月診察で、バイパップの導入を勧められたときのこと。
やまいもさんのブログで、早期バイパップの効果について読んでいたので、
「早期にバイパップを始めると良いらしいですね」と言おうと思い「早期に…」まで口にした途端、

「だから早期に導入するよう考えて勧めてるんだろうが」

と叱られた。

だいたい、こういう感じだ。

例に挙げた話しに限らず、先生からの問いかけに「そういえば」と連想で話を膨らませると必ず、

「順番に聞いてるんだからあれこれいっぺんに話すな」

と叱られるので、最近は、尋ねられたことに一問一答で簡潔に答え、余分なことを交えないよう心掛けている。おかげで受け答えの際はかなり緊張している。

病気のことを知りたくてあれこれ質問した時期もあったが、こちらから小賢しく質問するのが気に入らない様子なので、今は質問もやめた。

このブログで診察結果の記事が、1月を最後に途絶えているのは、そういう事情による。

しかし必要な事項については尋ねざるを得ないのだが、こちらから話を持ち出して尋ねると確実に揉める。

2月、3月と連続で入院した際、ラジカットをどうするか決めたいと尋ねたときは、2度とも忘れられないほど揉めた。

そして今回の診察でも、主治医に尋ねなければならないことがあった。

妻は構音障害で4級の身体障害者手帳を受けているが、上肢、下肢についての認定は受けていない。今度、福祉車両を購入するので、可能なら認定を受けておきたい。

訪問医に相談したところ、上肢、下肢は可動範囲の細かい測定が必要で手間がかかるので、訪問看護で主だった測定を済ませておき「参考値です」と言って主治医に提出すると処理が早いですよと勧められた。

その参考値を測定してもらい、記録したペーパーを持参して診察室に入った。しかし先生に、

「相談があります、これ見てください。」

と言って話しかけるような気安さはない。
ペーパーを出したいが、先生がどんどん問いかけてくるので、話を割ってペーパーを差し出すことができない。

先生の目につくようにペーパーを手にもって、今にも差し出そうという姿勢をしたり、何か話しかけたそうな素振りをややオーバーに示すが、察しているのかいないのか、一切無視。

そうこうしている間に先生は、上肢、下肢の障害認定に関するヒヤリングのようなことを始めた。今しかないと思い、会話の一瞬の途切れ目に、

「先生、実は…」

とペーパーを差し出すと

「だから今、それをみるために質問してるんだろうが!」

と激しく叱られた。
僕も、

「順番が悪かったのならお詫びします、申し訳ありませんでした!」

と大きな声で叫んだ。
なんでこれしきのことでこんな思いをしなければならないのか、本当に悲しくなった。

特に名医でなくていい。
普通に会話をして欲しい。

月に一回の通院だ。訪ねてみたいこともある。愚問もあるだろうが、それを口に出し、先生に答えてもらえれば、そのやりとりだけで救われるかもしれない。一般の人のアドバイスと医師のアドバイスでは力が違うのだから。

質問に要領よく答えられないかもしれない。首尾よく答えず脱線するかもしれないが、こちらとしては何かの足しになればと思って思い付く情報を口にしているのだ。必要な情報だけ喋れという要求は酷でないか。

患者や家族は無知だが、病は切実で、考えていることは真剣だ。下らない真剣を、下らないと思っても少し我慢して聞いて欲しい。

名医でなくてもいいと言ったが、それをしてくださる先生は、本当の名医だと思う。