育児レスパイトと言っていいと思う。この一週間、娘と離れて過ごした。
県内ではあるが、70km以上離れた場所に僕の母が住んでおり、その母が娘を引きとって面倒を見てくれたのだ。
さらに母の家の近くに住んでいる、僕の姉夫婦と甥・姪も面倒を見てくれた。
特にこの4月から保育士として勤める姪は、子供相手の練習になると言って、2日程相手をしてくれたそうだ。
結局娘は、母の家に5泊、姉夫婦の家にも1泊して今日の午後帰って来た。
計6泊、丸1週間の外泊。
これまで、娘を一人で外泊させたのは、幼稚園のお泊まり会でただ一度だけだ。それがいきなりの6泊。幼稚園が終わって小学校が始まる前という、今のタイミングだからできたことだが、何より寂しがらずに外泊してくれた娘と世話を引き受けてくれた親族に感謝するしかない。妻の闘病の助けにと、親族皆が気を配ってくれたのだ。
おかげで一週間、妻と二人だけで過ごすことができた。育児放棄では?という罪悪感があったものの、楽といったらこれくらい楽なことは他にない。本当に有り難かった。その間にできたこと。
・眼鏡を作りに眼鏡店に行った
・妻の友人と一緒に映画に行った
・期限を遅れてしまった確定申告をなんとか終わらせた
・胃ろうへの注入を6~7回行って、ずいぶん慣れた
僕としては、確定申告は助かった。妻の入院が続き、見舞いと育児で時間がなかった。
毎年、わが家の医療費控除のための確定申告と、義母の確定申告と2つ行っており、数時間はどうしてもかかる。なかなか手がつかなかったので、娘がいなくて正直助かった。
そして、最も助かったのは、なんと言っても胃ろうの練習だ。
薬をすりつぶしてお湯に溶いたり、チューブやシリンジを抜き差ししたりするときに、娘がそばにいると何かと心配だ。
怖がるかもしれないし、あるいは興味を持つかもしれない。いずれにしてもまず自分が手際よくこなせるようになっておかなければいけない。娘の相手をしながらあれこれと試行錯誤をしているわけにはいかないから。
今回の育児レスパイト中は、気兼ねなく練習でき、お陰でとりあえず迷わないくらいに慣れることができた。
そうして、育児レスパイトが終わり、娘が帰って来た。夕食後に今日も胃ろうからの注入をすることにした。
「娘ちゃん、ママのお腹にお薬入れるやつ、やっていい?」
と聞いてみた。
入院中に病院で2度ほど、娘に注入の様子を見せているが、あまりマジマジと見つめることもなく、質問も何もしてこなかった。
何してるの?どうしてこんなことするの?と本当は聞きたいだろうし、あるいはちょっと怖いと思っているかもしれない。
病院での注入を見てから、一週間以上経っている。自宅で初めて注入するのを見て、娘は、どう反応するだろうか。
妻がお腹を出して、ボタンを見せるが、娘の反応は特になし。何がお腹についてるのー?と言った質問もなし。
ミルトンに浸しておいたチューブやシリンジを取り出して接続し、薬や半固形剤を注入していくが、やはり特に反応なし。
リビングの、3人掛けのソファの端に妻が座り、娘はもう一方の端の近くの床に座って、ソファの座面を机にして、タブレットで動画を熱心に観ている。
ソファの端と端の距離しか離れておらず、怖がって遠くに行く様子もない。
ほどなく注入が終わり、妻は自室に戻って介護ベッドで休むことにした。
妻がリビングを出て行っても、娘は相変わらず動画をみている。
「娘ちゃん、ママの部屋に行って、
『お薬頑張ったね!』って言ってあげて!」
「うん!」
すぐに、娘は走って行き、「お薬頑張ったね!」と言った。
「なでなでしてあげて!」
「うん!」
娘は妻の頭をなでなでした。
「ママ大好きだよね?」
娘とママは、既にハグしていちゃいちゃしていた。
本当は何か思っているのかも知れないが、申し訳ないが娘にも慣れてもらおう。隠して隠せるものではない。
育児レスパイトは終わって、今夜から育児は再開した。