昨年11月から、今年2月、3月と妻の入院が3回続いた。

この間に大変だったのが、娘の幼稚園の世話だ。娘の幼稚園には、週のルーチンがある。

・月曜日は、週一回の弁当の日で、家で弁当を作らねばならない。
・水曜日は、空のカバンを持たせ、汚れた遊び着を持ち帰ってくるので洗濯する。
・木曜日は、洗濯した遊び着を持たせるほか、週一回のスポーツ教室があるので体操服も持たせる。
・金曜日は、汚れた帽子と上靴と遊び着を持ち帰ってくるので洗濯する。

ややこしいが大体こんな感じだ。

11月に妻が入院したとき、僕は初めてこのルーチンを受け持った。これは難しいと驚き、事前に何度も確認し、紙に書きまとめた。妻はこのルーチンを2年半以上こなしてきたのかと感心した。

それでも2週間の入院期間をなんとか乗り越えたので一応自信がついた。

先日、2月の入院の際も同じようにルーチンをこなした。ところが幼稚園から帰ってきた娘が、この世の終わりのように怒って訴えてきた。

「今日、体操服が入ってなかった!」

そんなはずはない。木曜日じゃないし体操服はいらないはずだ。しばらく考えた後で、毎月配られているお知らせプリントを見てみた。

「2月○日は○○イベントのため、スポーツ教室の曜日が変わります。」

と書いてある。

ルーチンは、変わることがあるのか!毎月のプリントを読んでスケジュールを頭に入れておかなければいけなかったのか!

妻は当然知っていることだろうが、僕には全くそういう頭がなかった。

大人にとっての忘れ物と、子供にとっての忘れ物は重みが違う。かばんを開けて必要なものがないと分かったときは、さぞ悲しかっただろう。娘が怒って訴えるのも無理はない。今後はプリントを熟読しようと誓った。

ところが3月の入院で、また事件が起こった。屋外でイベントがあるので体操服がいる。しかし雨が降った場合には、イベントが中止になるので、体操服はいらないとプリントに書かれていた。

当日、雨か晴れかとても微妙な天気だった。カバンに体操服を入れて準備したものの、中止になるかもしれない。

中止になった場合には、朝8時までにスマホの幼稚園アプリで連絡が入るので、体操服をカバンから出し、持たせないようにする。しかしその頃僕は既に出勤しているので、娘を送り出す役の義母に頼むしかない。義母に説明した。

「もしアプリに中止連絡が入ったら体操服は持たせないでください」

しかしどうも義母は、よく飲み込めていない様子だった。晴れなら体操服はいるけど、雨ならいらないんですと繰り返し、通知のプリントを見せたところ、義母は「分かった」と言った。

夕方、帰宅すると、娘が怒って訴えてきた。

「今日、体操服が入ってなかった!」

結局晴れたためイベントは行われ、体操服は必要だった。あらかじめカバンに入れておいたから、そのまま持たせて家を出ればよかったのだが。

義母に聞いてみると、僕が体操服はいらないと言っていたからカバンから出して持たせなかった、ということだった。やはり、うまく伝わっていなかったようだ。

雨でイベント中止の連絡が入ったら体操服はいらないが、そうでなければいる。

確かに少しまわりくどい。誤解するのもわからないではない。これは義母を責めるのでなく、僕らの不慣れが招いた結果だ。とはいえ結局娘を怒らせてしまった。

大人なら、念のためにカバンに入れておき、不要なら使わずに済ませればいいと思う。しかし子供の場合はそうもいかない。

「今日は体操服いらないのに入ってた!」

と言って怒ることもあるのだ。お友達は持っていないのに、自分だけ持っているというのが恥ずかしいらしい。娘が満足するように準備するには、過不足どちらもあってはならないのだ。

さらに、今週。

卒園を控えた娘は、幼稚園に置いてあるお道具の類いを毎日少しずつ持ち帰ってくる。そのため、毎日空のカバンを持っていかねばならなかった。これも卒園間際ならではの事情だ。ところが僕はこれを知らず、空のカバンを持たせなかった。

娘が帰ってきて怒った。

「カバンがなかった!
やっぱり持ち物はママしか分からない!」

さらにランドセルの中に、お友達がくれたお手紙が入っていた。

「なかないで○○ちゃん、ずっとともだちだよ」

娘に聞くと、カバンがなくて泣いていたら、お友達が手紙をくれたのだそうだ。

なんとも不覚。しかし、プリント類をもう一度見返しても、空のカバンを毎日持たせろとはどこにも書いてない。妻にも聞いてみたが知らないという。一体どういう仕組みになっているのか??

そうこうしているうちに、娘の幼稚園通いは終わってしまい、謎はそのまま残った。あとは、週明け月曜日の卒園式を残すだけだ。

妻の病気をきっかけに、わずかながら通園の世話をし、僕にとっては貴重な体験をした。やり遂げた感じでなく、不慣れを叱られるうちに終わってしまった形だが。

妻にとっては、3年間、ほぼ一人で世話をしてきたのに、最後の半年はやり切れなかった感じがあるかもしれない。幼稚園バスの送迎も、2月7日、娘が交通事故に遭ったのを最後に、以後は義母らに任せることになってしまった。

胃ろう造設と娘の卒園が、ほぼ重なった。卒園式に間に合うよう手術を設定したから当然ではあるが。

明後日は、卒園式。色々な思いが重なる。