昨年の2月、妻が腕の不調を訴えはじめた頃、僕は「きっと頚椎ヘルニアだよ」と盛んに言った覚えがある。理由は数年前に自分も頚椎ヘルニアで苦しんだ経験があったからだ。

僕のヘルニアは、2014年の秋に発症し、症状がまずまず落ち着くまで数ヶ月かかった。
右の二の腕に強い痛みが出て、どういう姿勢をとろうが常時痛く、1日数回程度、発作的に万力で締められるような強烈な痛みが襲ってきて、そのときは小一時間は、うずくまって収まるのを待つしかなかった。
また、仰向けに寝たり、上の方を見上げたりすると、頚椎の後ろ側が締まって、その度に強烈な痛みが襲った。分かっていても、つい棚の上の本を見上げてしまって自爆するといったことがしばしばあった。

症状が特にひどかったのは2ヶ月間くらいで、寝るときも横になれず座って寝た。このままでは、仕事を辞めるしかないかとも思ったが、幸い峠を越えると段々と回復していった。

最初、整形外科にかかったとき、腕が痛いのに原因は首だと言われ、ピンと来なかったが、頚椎で神経に障ると、腕や指先にまで、痛み、しびれ、動きの悪さが来るのだそうだ。
その時の印象が強く、妻が二の腕の痛みや脱力、指のピクピクなどと言っていたので、それはきっと首のヘルニアだよと決めつけてしまったのだ。

妻に、仰向けに寝たり、上を見上げると痛くならない?と聞いたが、それはない、と言っていた。

自分のヘルニアとは違うなと思ったが、確か先生が、神経の障り方は三次元的に複雑だから症状の出方も色々だと言っていたなと思い返し、そういう場合もあるのかなと深く考えなかった。

リリカという薬が処方されたのを見て、僕のときと同じ薬だと思ったし、幾つ目かのクリニックでは、MRIを丁寧に撮影した結果、ヘルニアと診断されたようだった。一見分かりづらいが、神経に触ってる箇所がみつかった、というような説明があったと妻が言っていた。僕はその時の通院に付き添ってすらいない。

夫婦揃って首のヘルニアか、私もついにヘルニアになったか、などと話し合い、ヘルニアは、マクロファージが食べるから、数ヶ月できっと良くなるよと先輩面して話したりもした。

しかし、何ヵ月たっても良くならないので、何だろうとは思っていたが…

妻に謝りたいのは、痛みやピクつきと戦っているのが傍目からは分からないため、あまり気を使っていなかったことだ。

また、妻がネットで調べてALSかも知れないと言って来たこともあったが、また心配性が始まったなと、まともに取り合わなかった。

極端な激痛でもなさそうだし、僕のときより軽いのではとすら思っていた。申し訳ない。


人の痛みは分からない。

どれくらい痛いのか、昨日も今日も痛みが続いているのか、痛みが増しているのか、減っているのか、本人の言葉を通してか分からない。

また、相手が目の前で痛そうにしているとその瞬間はこちらも心が痛むが、離れていると気掛かりな気持ちが薄れてしまう。

僕が仕事に出て、妻が家にいるときもそうだし、ここしばらくのように妻が家を離れて入院している時もそうだ。そんなときに、自分はどの程度、薄情なのだろうか、標準レベル、許容範囲内なのだろうか、それともかなり酷い薄情なのか、などと考えてしまう。

ここ数日の記事で、自責は敵だとか、離れていても心は一緒(だったらいいな)とか、あれこれ書いたが、やはり、一切そういうことにとらわれずにいることは難しい。

要は、割合の問題だ。
ゼロにはできないが自責の割合が高くなり過ぎないようにしないと自分が潰れてしまう。
かといって、自責ゼロは問題で、妻のためには必要量の自責をして自身を正すべきだ。

専門の医師ですら診断仕切れなかったのだから、分からなかったのも仕方ないと思うことにしよう。
いやしかし、身近にいる者だからこそ、家族でしかできない気づきや気遣いがあるべきだったのではないか。

うーんちょっとループしてるな。
いやでもまだ全然大丈夫。
明日、仕事行けば、それでも気持ちが切り変わって「しまう」ので。