我が家の一人娘は、今、幼稚園の年長だ。まだまだ小さいので、誰かが布団をならべて横に寝てあげないといけない。

この9月までは、妻に添い寝をさせ、僕は別の部屋に寝ていた。しかし、病気の心配が高まってきた10月からは、少しでも休めるようにと妻を一人で寝かせ、僕が娘と添い寝するようにしている。

娘にとっては、僕と二人で寝るのが新鮮らしく、そろそろ1ヶ月半が過ぎるが、
「今日も寝る前にお話ししよ!」
とせがんでくる。
明かりを消して、布団の中で話すのが楽しいらしい。毎日寝付くまで、長ければ30分程度は、あれこれと話す。

ついさっき、娘が寝付いたところだが、今日の「お話し」は、入院5日目の妻のことだった。


「ママに会いたくなってきた!」

「『離れていても心は通じあってる』ってやつ知ってるでしょ?よくプリキュアであるじゃん」

「あるある!プリキュアの映画であった!」

「娘ちゃんとママは、心が通じあってるんでしょ?」

「通じあってる! 100%!」

「お、いいな。パパと娘ちゃんはどうなの?」

「0%」

「なんじゃそりゃ」

「だって離れてないもん、近くにいるから話せばいいじゃん」

「なるほど離れていれぱいるほど点が高いのか。
でも、好きな人はその分、点が高いんじゃないの?
ママはいくつ?」

「100万%!」

「パパは?」

「まぁ2か3かなぁ」

「もうちょい上がらんかな」

「だって近いじゃん」


…なるほどこれが現実で、娘による格付けか。

まぁ、ママよりパパが好きな娘なんて、見たことないが。

しかし

「近くにいるなら話せばいいじゃん」

というのは、今の我が家にはちょっと辛い一言だ。

妻との会話は、ここ数ヶ月、ラインが主になっている。喋りづらさから、込み入った会話が難しいからだ。

少し前、妻が喋りづらさを感じていなかった頃、僕と二人で会話していると、娘が割って入って邪魔することがしばしばあった。

娘にとっては、自分が会話の中心でないことが気に入らず、妻と僕が、よくわからない会話で楽しそうにしているのが不愉快なのだろう。
邪魔する娘に、

「パパとママも話したいの!分かってね!」

とよく言ったものだ。

ラインでの会話も限界があるというか、なかなか込み入った内容は難しい。僕もコミュニケーションをしたいが、妻こそ、多くの友人と話したいのが本音だろう。
離れていても、心が通じあえばいいのだが。

明日は、妻が一時的に病院を出て、一泊だけ家に戻ってくることになっている。
100万%、楽しみで仕方ないのは、娘だけでなく僕もだ。