2018年9月9日の晩、あまりに話しづらそうにしている妻をみて驚きました。
翌9月10日、自分も仕事を休み、妻を連れてそれまで通っていたのとは別の耳鼻科に行きました。

この時もまだ、蓄膿という診断に特に疑問を持っていませんでした。蓄膿で痰が絡むから話しづらいんだ、とにかくしっかり状態を訴えて強い薬を出してもらおう。そう思っていました。

初めて来たその耳鼻科では、朝一番に並んだおかげで、すぐに診察室に呼ばれました。先生は、ものの数分の問診の後、これは神経に原因があるかも知れません、市民病院に紹介状を書きますよと言われました。

神経?蓄膿じゃないの?
いままで2ヶ月も、蓄膿と言われ続けてきたのに?

「神経なんて言われるとちょっと怖くなるよね」

と妻と話し合いました。

会計待ちの時間に、スマホで「神経」、「話しづらい」等の語句を検索しました。
トップに上がって来たのがALSです。にわかに不安になり、紹介状をもらったその足で、市民病院に向かいました。

幸い、市民病院は目と鼻の先で、予約もなく駆け込んだというのに、午前のまだ早い時間のうちに診察を受けることができました。

さらに、問診のあと先生が指示した血液検査、MRI、肺活量検査なども、1,2時間の間に終えることが出来ました。そして再び診察です。

軽い隠れ脳梗塞が1つあるが問題ない、ヘルニアもない、といくつかの説明をされた後、先生は、横顔を写したMRI写真を示しながら、ここが舌の筋肉です、本来このくらいの球形をしているところ、小さくなって隙間ができてしまっています、と説明されました。
素人目にも歴然としているのに驚きました。

また先生は妻の両手を差し示し、親指と人差し指の間の股の部分、ここが凹んでますよね、普通は膨らんでいるでしょうと指摘されました。
確かに妻の手は痩せているのですが、もともと痩せ型なので、さして気にしていませんでした。
最近、さらに痩せたような気もしていましたが、年のせいかとも思い。しかし、膨らむべきところが凹んでいるのは、結構ショックで、言われてみると確かに凹んでいます。

今度は口をぷうっと膨らませてください、あまり膨らみませんね、などと言われました。これも驚きました。

僕は、さっきスマホで調べたばかりの「ALS」という言葉を口に出して、まさか違いますよね?と聞きました。
すると先生は、この市内に3人は患者さんがいる、人口30万人中、3人とそのくらいの割合だが、ないわけではない病気だと言われました。
今のところどんな見立てでしょうか?とさらに急いて尋ねると、筋肉、神経というと、すぐにALSを持ち出す人がいるが、それは極端ですよ、ここでできる検査は幾つかしましたが、パズルのピースを埋めるようににあと3つは検査をしないといけない、しかし残念ながらここには施設がないので、大学病院に検査依頼しましょう、と言われました。

診察が終わり、会計が済んだのは正午をだいぶ過ぎた時間でした。
朝、家を出るときは、病院が終わったら妻と二人で何か美味しいものでも食べようと思っていました。
降って沸いた不安にそんな気分は消し飛び、というか、何を話し掛けていいのか分かりません。

病院を出ると雨が降っていて、二人とも無言で車に乗り、病院近くのコンビニ駐車場で、それぞれ一口、二口くらいのものを口に入れました。

紹介を受けて大学病院にいく日はまだ決まっておらず、病院からの連絡待ちです。雨の中、やはりほとんど無言で家に帰りました。

合間合間の時間にスマホで情報を読んでいたので、車に乗る頃には、ALSに関する病状と進行の基本的なところは、調べ終えていました。
あえて話題にすることは、はばかられましたが、おそらく妻も同様に調べていたと思います。

もうすぐ娘が幼稚園から帰ってくる。
どんな風に接したらいいのかな、と思いました。