「巨人の星」とか「愛と誠」とか(例えが古くてスミマセン)、フィクションの世界では良く用いられるタイトルと物語の“掛け合わせ”が、本作でもウソでしょ?と言いたくなるくらい見事に決まっている。

 

そもそもがこの監督の舞台劇だったという本作。買い物帰りの若い女性が自宅に着くなり声を掛けられるところから始まる尋問劇。疑問やじれったさがわんさか湧き出る一方で、台詞の一つ一つがノンフィクションである点を宣告されている観客は、只々その推移を固唾を飲んで見守るしかない。

事実とフィクションの境界線を極限まで曖昧にした作品。これが監督デビューとなるティナ・サッターは、大きな社会問題を題材にしながらも先ずはこの会話劇を極上のサスペンス・ドラマとして仕立て上げている。キャスティングも見事。

 

世情に無知かつ本作の情報ほぼゼロで観賞した私は、この作品を映画として最も楽しめた観客であった筈。「観てから知るか?知ってから観るか?」という2択を迫られる作品でもありますが、絶対的に前者をお勧めします。

 

日付:2023/11/23
タイトル:リアリティ | REALITY
監督・共同脚本:Tina Satter
劇場名:シネプレックス平塚 screen5
評価:6