ゴジラの咆哮に魂震えた前作から7年。東宝さんがこのキラーコンテンツをいつまでも遊ばせておく訳がない。そして日本映画界におけるVFXの第一人者でもある山崎監督のゴジラ映画への登板は、ある意味この時代の“エース”登場とも言えます。

 

怪獣映画と人間ドラマの両立がこの手の作品の重要成功要因ですが、本作において山崎監督はゴジラを主役の座から降ろしてしまったかの如く、特攻帰りの敷島(神木隆之介)に重たい十字架を背負わせた上で、彼が過ごす3年間を描き続ける。今回ゴジラは敷島にとっての復讐の産物でしかない。

 

関東一円が焦土と化した終戦直後から僅か2年での復興の様子は、敷島家の様子からしか窺い知ることが出来ないし、ゴジラの出演シーンが限られる中で奴が蹂躙する街並みの描写も非常に限定的。

結果ゴジラが街を破壊する事で得られるカタルシスを、私は十分に感じることが出来なかった(どうしても前作と比較しちゃいます)。

 

そして第一作へのオマージュなのは分かりますが、この非常時にゴジラの目の前を電車が走っていたりとかするのは、「ALWAYS 三丁目の夕日」でTVを点けたら力道山が空手チョップを見舞っているシーンと同じくらいリアリティに欠けていて、少々興覚めしてしまいます。

 

とはいえ、VFXを駆使した映像のダイナミズムとゴジラの迫力は、もはや着ぐるみと特撮には戻れない“進化”を感じます。ゴジラ映画を撮る上での最難題事項でもある筈の「ゴジラ殲滅作戦」も、前作の“歯医者さん作戦”よりは理に適っている気がする。色々と突っ込みたい箇所はあるものの、この作品でのゴジラとの向き合い方や落とし処(結末)は、さすが山崎監督といった感じ。国を挙げてのゴジラ退治ではなく、先の大戦を生き延びた者達による、祖国を守るもう一つの戦い。その相手となったゴジラに対し果敢に挑む姿は、どこか懐かしくもオーソドックスな、少年ジャンプの「友情・努力・勝利」の方程式のようでもあります。日に日にリピート意欲が高まってもいます。

 

私がこれまで劇場で観た山崎監督作品は「Returner リターナー」に「ALWAYS 三丁目の夕日」「ALWAYS 続・三丁目の夕日」と「SPACE BATTLESHIP ヤマト」。彼の作品を一言で表すと、「卒がない」という言葉が一番ピッタリくる。どの作品も手堅く仕立て上げていて、観に行ってそこそこの満足感を得られる一方で、心に残る作品かというと微妙。そんな印象です。今回の作品も、凄まじいまでの真っ当さを感じつつ、驚きはなかった。

 

数年後には再び製作されるであろう昭和のキャラクターを用いた東宝怪獣映画。時代と共に歩む大変さも伺い知れますが、その商品価値は作り手次第でまだまだ健在な気がしました。

 

日付:2023/11/6
タイトル:ゴジラ-1.0
監督・脚本:山崎貴
劇場名:シネプレックス平塚 screen7
評価:6