スピルバーグ監督の自伝的作品と聞いて観ておかねばという気になった。「激突!」「ジョーズ」でハリウッドの寵児となった、私らの世代にとっては時代を共にしてきた現役映画監督。

とはいえ彼の監督作品を最後に観たのは1998年の「プライベート・ライアン」が最後。最高の娯楽映画や、時代のエポックメイキングとなる作品を世に送り出してはくれましたが、どれも「あー面白かった」以上の余韻が生じない。結果記憶にも記録にも残りながら、心に残るマイ・フェイバリットな作品には挙がってこない。

 

ー 監督をやるか、プロデューサーをやるか、どういう基準で決めるのか?

『それは勘かな。もし脚本にピンときて、そのストーリーにずっととり憑かれるような場合、これは監督する。でも脚本に魅了されて、少しでも早くその映画を観たい時は他の人を監督に起用して、プロデューサーになるよ。』

 

以前来日時のインタビューで監督をする基準についてこう答えてくれていましたが、監督作品の特別感がここ最近の作品からは感じられなくなってもいた。

 

 

ユダヤ系アメリカ人の少年が、映画を好きになり映画を撮るようになり映画で身を立てるようになるまでの、原題の通りフェイブルマン一家を巡るお話。

鉄道好きの乗り鉄と撮り鉄じゃないですが、主人公のサミーは映画を観る事よりも映画を撮る事が好きみたいで、最初から最後まで映画を撮ってばかり。青春を映画製作に捧げる彼が直面する家庭の問題と学校生活の問題。彼が手掛けるフィルムが、周囲の人々の心を動かす。米国におけるユダヤ人差別の実情を、ここまで正面切って描いた作品に出会ったのは初めてかも。

 

観賞後にWikiでスピルバーグ監督の経歴を見てみたら、ほぼこの作品の通りだった。これがスピルバーグ監督の自伝的作品でないとしたら、どれだけ楽しめただろうとは思ってしまうものの、後の彼の作品に繋がる人生の出来事が色々と散りばめられてもいる本作。私らの世代にとってはそれだけで観る意味があるとも思えた。

名匠ジョン・フォードとの邂逅は、果たしてここで描かれた通りだったのだろうか?気になるなぁ。

 

日付:2023/3/20
タイトル:フェイブルマンズ | THE FABELMANS
監督・共同脚本:Steven Spielberg
劇場名:TOHOシネマズ小田原 SCREEN8
評価:5