日付:2010/7/1

タイトル:川の底からこんにちは

監督:石井裕也

劇場名:K's cinema

評価:★★★

  

前日観た「さんかく」の吉田恵輔監督が技巧派的に演者の絡みを演出するタイプなら、こちら石井監督は撮り手のテンションというか"味"をそのままスクリーン上に反映させるタイプ。映画映画した押しつけがましさが無いせいで、本編の上映が始まった事に最初気付きませんでした。 

 

愚鈍で要領も悪く、自分を卑下して現状を容認し流されていく、勝間和代さん的上昇志向者とは正反対の、カツマー連中に白眼視されそうな生き方をしている木村佐和子(満島ひかり)。

自称「中の下」の佐和子が、見た目でその下のランクに位置付けられそうな同僚達から憐れみを受ける事で、彼女のダメさ加減を演出しようとするあたりに、この監督の「オトコの視点」が丸出しになっている。

 

そんな佐和子が地元に舞い戻って一念発起するという、大して珍しくもないプロット。何一つうまく行かない窮状に対して開き直るに至る臨界点ももう一つ曖昧だし、ハリキリだしてからの事態の好転振りも出来過ぎ。そもそも、あなたも私もみんな中の下と言いつつ、佐和子以外は中の下なりに人生楽しんでいる。

 

これで「人生"応援"活劇」といえるのか、少々不可思議でもありますが、この作品の魅力はそんな主題とは別のところにある気がします。まだ「インスタント沼 」の方がその手の作品と言えるような。

  

と改めて不満点を論えば幾つもあるものの、一つ一つのエピソードの積み上げが丁寧に面白可笑しいので観ていて飽きません。

 

ただ身銭を切って観に行った立場で言わせてもらうと、「さんかく」といい本作品といい、W杯の本選出場は果たすものの予選リーグで敗退してしまうチームのレベル相当な感じがします。最近の映画はメディアとの親和率が高いせいで、露出度合いに合わせて評判がやや過剰に高止まりする傾向があるような気がしてます。


映画の記憶・・・と記録-川の底からこんにちは