モダンダンスの師 能藤玲子が93歳の誕生日を祝った。

弟子たちが集まり、師のご希望でもあり身内だけのお祝い会ではあったが気持ちのいい日であった。

 

私は20歳から篠原邦之バレエ教室に出入りし舞台人としての体つくりが始まった。篠原先生は劇団民芸のメンバーでもあって新劇の演技や劇場のこだわりなど丁寧に教えて下さった。バレエの修行はその後も少しづつ続き道内のバレエ教室発表会等にも出演させていただきギャラを稼げることに驚いた。

この経験が後の舞台監督業に進むことになった。

 

さて、モダンダンスと出会いは第1回札幌芸術劇場公演「オイデプース」に主演したことが始まりだった。当時の演出津川良太氏に勧められコロスとして参加していた能藤玲子創作舞踊団に籍を置くことになった。

津川先生は「舞台人として体つくりはモダンダンスだ」とおっしゃって強く進めてくださった。

バレエの華やかさからモダンダンスの精神性を重視したダンスにひかれていった。レッスンの厳しさは超一流で「世界一稽古する!」という自負に支えられた作品にも出させていただいた。

レッスンは「身体育成」と言われドイツのモダンダンスの流れを汲む邦正美のレッスン方だった。体の芯を作るレッスンで私の体はダンサーになった。

50年になる。師の教えは変わらず「稽古をしなさい」「テーマを考えなさい」「安易に動かない、深く考えなさい」「無駄な動きをそぎ落としなさい」「体の深くを動かしなさい」

[人間の内的緊張が外的緊張と結びつく]つまり[思想が肉体と結びつく]ことによって表現が出来上がる。

93才に師は決して褒めない。「いいです」とは言わない「さらに工夫しなさい」と評価する。この「更に」という言葉は「良い」という褒め言葉から「更に良くしなさい」という激励なのだ。

先日は

私の「歩く」姿勢に小さな声で「美しい」とつぶやいて下さった。美しく歩く…この基本の難しさにまだまだ右往左往している。

歩く・・・余計に力を入れると ふらつく。

ふらつかずに歩くには芯を意識する。

日常のレッスンの「身体育成」に答えの全てがあった。

 

師が居るのはありがたい。