『おかえり』と言える、その日まで | Whistle Stop Cafe Ⅱ

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Les Aventuriers Deuxième étape


『おかえり』と言える、その日まで
山岳遭難捜査の現場から
中村富士美著 新潮社刊 

 

 


最近読んだ面白い本の一冊。

山岳で遭難、行方不明者を探す民間の山岳遭難捜索チームLiSS代表
因みに代表の中村さんは、高度の登山のスキルはもちろんのこと
現役の看護師でもあり、かつ国際山岳看護師の資格も有しておられる。

 


主に山岳遭難救助と言うと、主に警察の山岳救助隊や
地元の有志による救助隊を想像するが、これは民間の遭難捜索の組織である。
前述の公的な機関による捜索は日程的な限界があり、捜索そのものは
一定期間を過ぎたものは、捜索が打ち切られる。
中村さんたちの組織は、遭難し行方不明となった家族からの依頼を受け、
そこから行方不明者を探し出すのが主な仕事だ。
もちろん、行方不明者の家族のケアも含めて聞き取り調査を
徹底的に行い、現地に赴き、あらゆる可能性を想定しつつ
山での捜索を行うのである。

 

 

本著はその活動のリアルな記録の一部であり、
行方不明者といっても生きて還って来る例より、
ご遺体となり発見されるケースの方が圧倒的に多い。
実に生々しい話が書かれている。

一気に読み進む事の出来る本だが、山のベテランでも
これを読むと遭難にあってしまう事がわかる。
又、中村さんの民間の捜索組織へ依頼するとなると
捜索自体も長期になり、捜索費用も家族の負担は大きい。
もちろん山岳保険などに事前に入ってさえいれば
万一の遭難時の費用は保険適用になる。
山行、登山を目指す人は保険に必ず入る事を本書を読み思い知った。

 


再度いうが生々しい記録であるが、中村さんのような方やその
組織にあるおかげで、発見され家族の元へ帰還されるのである。