なぜか私は検査のために入院しているひとと相部屋になることが多
く、どんな病症か知りませんが1週間で退院したと思ったら、また
別の病室でみかける常連さんもあります。なんでも彼らの会話から
聞こえてくるのは3か月待ち、いや半年待ったという方もいらっし
ゃいます。なんども検査入院を繰り返す方は腹が座っているという
か落ち着いて生活の一部という感じがしてどんな病症か知りたくな
ります。私なんか気が小さいので5ケ月も入退院を繰り返して迷惑

なんじゃないかと思っていたら看護師さん曰く”5ケ月なんか序ノ
口ですよ、免疫ゼロつまり無菌状態でないと生存出来ない患者さん
は病棟の最上階で、ずっと20年も病院暮らしというひともあります
因みに個人情報時代でシラケが多くなったいまでも患者さん同士、
とっても仲がいいです”とその病棟から移ってきた看護師さんが教
えてくれました。さて個人情報といえば傑作なことがありました。
破裂寸前で病院に駆け込んで一命はとりとめたものの、絶食状態で

化学療法のため意識が朦朧としているときに一番偉い先生が現れて
”あなたの容体を教えて欲しいというひとがありますが、どうしま
すか一応、個人情報の関係もありますから、あなたの意向を伺いに
来ました”と言います。私は医者の知り合いは思いつかなかなかっ
たものですから格好良く、”断って下さい”と言いました。すると
ものの数分もたたないうちに娘から電話がかかって来て”お父さん
なんて失礼なことすんのよ!病院にコンタクトして来たひとは、

アメリカの大学の教授で今はドイツの大学病院で研究をされている
私の叔父さんよ!たまに日本に帰って来て講演をしたり、学会では
有名な博士よ!”って叱るように言うじゃありませんか、たまには
食事をご馳走になるとも言っていました。私はびっくりして担当医
に話しましたら、PCで調べたのか血液ガンの権威だということを先
生もも知っていました。以来、なにかと情報交換をしているそうで
す。娘が勝手に婿を掴まえて結婚式に呼ばれて挨拶もそこそこに逃

げるように帰ってきたことがありましたが学会ではちょっとした顔
らしく、もし今回の治療がうまく行かなかったら渡米することも選
択肢としてあると担当医から言われたこともありましたが、まさか
そんな大物が紛れ込んでいたとは知りませんでした。気のせいでし
ょうが個室に移ったり偉い先生が顔を出す回数が増えたように思え
ましたが3回目からは4人部屋のままで治療は継続されていました
からそんなことはありませんでした。とんだ個人情報の顛末記では
ありました。

 転んで泣いてた我が子が 今じゃ”転ぶなよ”と我に言う
             ああ嫌だ嫌だ ぐっさんハイ
病院では俯きたい光景にぶっつかることがあります。筋トレの最中
でした。風采のあがらない、おっさんが若い女性に向かって、こん
な言葉を発していました、”恥ずかしか話ばってん、入院すること
になって息子に借金して来ましたと”。続けて”年金は12万円し
かなかばって家内が胃ガンで去年、死んでしもうたけん、その分要
らんごとなったばってん借家代から酒タバコ代など生活していくと
に厳しか”と愚痴っていました。女性は黙って聞いていましたが、

見も知らぬ、おっさんから聞きたくもない話を聞かされて早々に姿
を消していました。入院して気弱になって、つい隣りの女性にボヤ
いてしまったという風情でした。別のおっさんは使い慣れないケー
タイで”俺たい、いま入院しとったい、よかったら出てこんや”と
複数のひとに呼びかけていました。病人だとひと目でわかる窶れよ
うです、 どうでもいいことですが痩せこけた、てめえの姿を曝した
いご仁の気持ちがわかりませんな。かくいう私も骸骨のように痩せ

こけたうえに薬の副作用で頭はつるっ剥げ、眉毛まで抜けてしまい、
どっちが裏か表か分からない容姿になってしまい、親類縁者やお世
話になっている方にも一切連絡を断っての入院でした。一般のひと
には分からないと思いますが病人はひとに会って話をするのは案外
堪えるんです。私ならソッとしといて退院したらドンチャン騒ぎを
するっていうのがありがたいと思います。さて入院してイイことは
何もないと思っていましたがそんなことはありませんよ。入院のと

き子どもがスマホをもってきました。そうして退屈しのぎに使えと
言います。しばらくは放置していましたが、時間は腐るほどありま
すし持ち前の好奇心が頭を持ち上げてきて恐る恐るSWを入れました
沢山の見出しというか項目があります、その中のニュースをタッチ
しますと政治経済や国際情勢それに清原がシャブ漬けになって逮捕
されたなどの事件だとか大騒ぎをしてそれをネタに飯を喰う連中の
与太話などの記事がありました。入院生活は筋トレや歩行など単純

なものかと思っていましたがスマホがきてからは見るだけでなく家
族を始め友人とも無料で交信出来るし、病院内での出来事も書き込
んでタイムリーに自宅のPCに送信して帰宅してから修正するという
試みや、生きてPCの前に座りたいという願望も励みになりました。
因みにPCも入院前に新しいものに買い換えました。それに病院では
スマホの先生には事欠きません。最初は取り説をみていましたが、
ちんぷんかんぷんでさっぱりわかりません。そこで看護師さんに助

けを求めますとアッという間に問題を解決してくれます。立ち往生
しているときに助けてくれますから頭にはいり、かみさんに教える
ぐらいになりました。スマホをくれた子どもが驚くほどの腕前にな
りました。それに一生懸命教えようとする天使たちの横顔って素敵
ですな、一身にスマホを見詰めいる先生たちを見てるだけで若返っ
てきましたよ。帰宅して一度スマホの取り扱い店に行きましたら、
来客が多くイヤというほど待たされて病院が恋しくなりました。

   スマホがうまくなりたいひとは入院をおすすめします
               冗談くらぶ会員 ぐっさんハイ
ここで化学療法で問題になるというか頭の痛いことを思い出しまし
た。ひとつは治療のためカテーテル(人造の管)を24時間着けた
ままですから入浴するときが厄介です。お湯が管にはいったら最悪
の場合、風呂の湯が心臓近くまで流入しますから大変です。ですか
ら入浴のときは看護師さんが厳重にシールをしてくれて用心のため
腕をお湯が入らないように大きく上げて入浴します。このカテーテ
ルは入浴だけでなく、いつも付け馬みたいに点滴をぶら下げた金具

が付いて回ることになりますからストレスがかかります、寝相が、
悪いと絡まって薬の流れが悪くなったりストップして夜中なんか
異常を知らせるブザーが悲鳴をあげて看護師さんが飛んでくること
になります。それが鬱陶しいです。それから化学療法では身体の有
害な物質を出来るだけ速く外に排出する必要があります。そこで入院
時の体重を2キロオーバーしたら「利尿剤」を注射されます。つま
り体内の有害な物質を薬を使っておしっこと一緒に外に排出する

ための注射なんです。それをもらったら個人差はありますが20分
ぐらいから猛烈な尿意に見舞われます。待ったなしですから見舞い
客が居ようと食事中であろうとお構いなしでトイレに駆け込むこと
になります。体調によって異なりますが、それが深夜に及びます。
情けない話ですが夢うつつで放尿して看護師さんのお世話になって
深夜に看護師さんが2、3人で手際よくシーツなんかを取り換えて
くれますが、かみさんが気の毒がって、オシメを穿かされたことも

ありました、しかしなんですな、寝ているときの、おしっこは気持
ちがいいですな。ガキの頃を思い出して苦笑いをしました。まあ理
屈では分かりますが連日ともなりますと睡眠不足になり、注射を避
けたくなります。ですからパンツを脱いででも体重検査をパスした
くなることがあります、計量まえは、まるでプロのボクサーが緊張
しながら計測するような心境です。点滴の最中には朝夕2回看護師さ
んの立会いですからインチキは出来ません。最初のころはぶっつけ

本番で計測して利尿剤のお世話になっていたんですが馴れてきます
と、こっそり測ってみてパスしそうだったら計量まえに歩行したり
トイレに行って排泄するといったセコいことをやって難を逃れ?
ゆっくり飯を食ったり睡眠をとるという牢名主みたいなチエを働か
せるようになってきます。慣れてきますと大体イケるとかイカない
というカンが働きますから面白いですな。男性の看護師さんのなか
には靴下や時計を外せと耳打ちしてくれる頼もしい同志もあります
ハグしたくなります(あなた見境なくハグしたくなるんだ)。

  幸運とかツキは 口をあけて待っている
       だけでは参りません ぐっさんハイ