当店の着物のお仕立てを半世紀以上担当してくれた現役の和裁士さん。
先日99歳でお亡くなりになったとの報あり。
2年前から体調を崩されて、自宅療養中ではありましたが。昭和三十年頃から、コロナ真っ只中の令和までの約60年間。
当店での和裁のお仕事をお願いしていました
ワイ自身も、納品が多いときは週４回はご自宅にお伺いしていました。
訃報を聞いてからというもの、なんとなく放心状態。半世紀以上にわたり、何百件、何千件とお仕事をお願いしてきたのですから。
和裁士の仕事ぶりというのは、
原則名前が残りません。
その仕事は当店のたとうしに包まれた中。岡崎の街のどこかの、家には必ず残っているのですが、着物のお仕事は完全な分業製。
糸を染める人、型紙をつくる人、色を挿す人、そして、最後に縫い上げる人。
振袖なら30を超える工程、さまざまなな職人の手が入っています。
きものにはそうした名の残らない職人たちの、
尊い仕事がたくさんあるのです。
その一方で糸一本作れないくせに、たとう紙に名前が残るのは呉服屋だけ。感謝の言葉を受けるのも呉服屋です。
ワイはそのことに種の罪悪感を感じることがあります
せめて職人たちの仕事を伝える必要がある
そんな思いで毎日、着物の仕事について駄文をしたためては、ひたすら解説、説明しています。
それが着る人への親切だけでなく、
作る人に対する私なりの敬意だと思うから
戦争も乗り越え、子育てをしながら
一つの仕事を80年近く着物を縫い続け、
現役として生涯を、全うする。
どんな境地にたどり着くのだろうか。
ワイには想像もできない。
着物に関することいろいろなことを教わった
もっともっと教えを請うておけばよかった
言葉はいつも想いには足らないものです
どこまでできるかわかりませんが
せめて、心こめた血の通ったお仕事しようと思う
合掌。
城下町に着物姿を増やしたい男、おおがや7代目でした。
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