その608 | 大鐘 稔彦のブログ

その608

☆奇怪な夢を見た。昨夜は午前零時前に寝て目覚めたのは午前6時、珍しくそれまでトイレに起たずやれやれと思ったが、6時間では足らない、それに今日は診療に出なくてもよいので2度寝を決め込んで、再度目覚めたのが8時、その夢はこの2時間の間に見たものだ。

 私がかつて食道がんの手術をした人【女性】の葬式になぜか立ち寄ったのだ。もうずいぶん前に亡くなられた人だ。ところが、お参りしようと棺に近ずくと、なんと死んでいるはずのその人が上体を起こし、E?T のようにやせ細った手を私に差し出したのだ。思わず私も握り返すが、彼女は一言世話になったとかなんとかかすかに微笑んで言葉を放ったから驚いた。私の背後にいた人々にも彼女はそうして手を差し出し、一言二言何か口ずさんで別れの言葉を放っている。

☆目が覚めて何とも不思議な夢を見たものよと、しばらくボーとしていたが、ふと我に返ってこんなことを思った。棺桶に入るのは息を引き取ってからではなく、あと数時間でお終いというときに入り、家族はもとより知人友人に集まってもらったら、別れの言葉を吐いて死ねるのに、と。生前葬の新しい形になるのではないかと夢想した次第である。

 昼時、たまたま朝ドラの「虎に翼」を見ていたら、ヒロインともこの母親がいっとき預かって面倒を見ていた孤児やとも子と最後の言葉を交わすシーンが出て来た。そうだこんな風にしっかり言葉を残して死ねたら悔いはない、と思われたが、現実にはなかなかそうはいかないし、私の今朝方の夢も所詮は現実化しえないものだろう。

 とも子の母親の最後の言葉、「いろいろなことがあったけれどいい人生だった、悔いはないわ」は胸にしみた。果たして私はそんな風に言い残せるだろうか?しばし深く考えさせられた。