その607 | 大鐘 稔彦のブログ

その607

☆長生きしていると思いもかけないことが起こる。2か月前、関東は茨城県に住む三浦さんという方から電話が入った。私より一つ上の年配の方だが、若々しい声で、一度お目にかかりたいとおっしゃる。5年前から、年に一度のペースで「孤高のメス」「緋色のメス」を読み返し、現在5回目を読み返しているという。両方合わせて全16巻ですが、と言うと、ええすべて読み返しています、一度読み終えて半年ほどたつとまた読み返したくなるのです、ついては、ぜひ一度作者にお会いしたくなり、出版元の幻冬舎に尋ねてそちらにおられることを知りました、ほんの20分ほどでもいいですからお目にかかれないでしょうか、と返され驚嘆した。特についでがあるというわけでもない、そんな遠くからはるばる来てくださるのは何とも恐縮至極でお断りしたかったが、是が非でもと仰る熱意に負けて、お会いすることにした。

☆お会いしてみてその若々しさに吃驚した。なんと、夜行のバスで来たという。眠れましたかと尋ねると、いやなかなか眠れませんでした、でも大丈夫ですとさりげない返事。小柄で頭は真っ白だが、血色のよい顔に疲れは見られない。何と、数年前までフルマラソンに参加、100キロ走にもチャレンジしていたそうな。足を大怪我してここ暫くは走れていませんが、と。仕事もホークリフトなどなどの機器メーカーに勤め定年後も嘱託で続け80歳までこなしていたというから驚きだ。診療所においてある「緋色のメス」完結篇に目を止め、これが出ているとは知りませんでしたと言ってさっそく購入してくださった。さては、しげしげと私を見て、先生は、「孤高のメス」の当麻鉄彦より、「緋色メス」の佐倉周平が分身なのじゃないかと思っていましたが、やはりそうでした、と仰ったのには(鋭いな!)と感心した。

 帰られて間もなく、「早速完結篇を拝読しましました。大変心に残る終わり方でした。ただし、佐倉先生のあまりにも早い死が残念で残念ででなりません。大鐘先生を死刑にしたいくらいですが,続編を書いていただくことで無罪に処しますがいかがでしょうか?」

どこまでも作者名利に尽きるお言葉だった。

☆昨年、関西大学社会学部の学生さんから、地域医療をテーマにドキュメンタリーを作成したい、ついては半年間、密着取材をさせていただきたいがどうでしょうか、と、これも思いがけない申し出を受けた。殊勝なことと快諾した。先日、完成しました、ユーチューブで「離島の命【あるいは医師】」といれクリックしてもらえば見れますのでご覧になってください、と連絡があった。

 15分ほどの短編だが、なかなか良くできていた。私が朝ぎりぎりに出勤するとか、大学を何とか卒業して、とか、舌足らず、弁明を要する勇み足な表現もあったが、まあ許容範囲とみなした。お暇な折ご覧いただけたら幸いです。