"編曲家"坂本龍一というテーマでツボにはまる新発見が暫くの間無くて残念だが、そんな中でも最近のイチオシは南佳孝の"モンロー・ウォーク"である

郷ひろみが歌ったカバー版「セクシー・ユー」の方が圧倒的に有名であるが、この原曲版はアレンジを担当した"カミソリ坂本"の本領が文句無しに発揮されていて、オケとしての完成度がより高い

本作のプロデュース的な過程にどこまで彼が関わったかは定かではないが、恐らく自らオファーした小原礼、高橋ユキヒロを配置した豪華なリズム隊が全編を心地よく引き締める下地の上に、今ではあり得ないが当時としてはごく普通のサウンドとして重宝された生音達がいい仕事をしている

それもただ鳴るのではなく生ブラス、生弦とシンセベースっぽい音を絡ませるオーケストレーションのタイミングとバランスのセンスが絶妙で、今更ながら一流の編曲家の仕事ぶりを堪能できるのだ




 

いい機会なので、一応既にお気に入りになっている坂本氏によるアレンジが聴ける何曲かについても簡単なコメント付きで書いておこう

 

大貫妙子「春の嵐」(アルバム「copine」収録)

この曲は以前の坂本氏を取り上げた記事で紹介したことがある、彼が敬愛するクラウス・オガーマンのオーケストレーションをパクったと公言していたアレンジを聴けるのがこの曲だと公言当時から思っている

 

 

「からっぽの椅子」(アルバム「SUNSHOWER」収録)

曲の途中から詞のメロディーラインとは別のシンセ持続音による"歌う"ベースラインがユニーク

 

 

高橋幸宏「今日、恋が」(スネークマンショー「戦争反対」収録)

高橋氏が敬愛するフランシス・レイによる映画「男と女」の超有名なテーマ曲へのオマージュ

「スネーク…」のアルバムの為に作られた全編インストの楽曲で、ドラマティックに始まる冒頭から編曲家坂本のセンスと実力が味わえる、知る人ぞ知る逸品である

 

 

飯島真理「Love Sick」(アルバム「ROSE」収録)

この曲も紛れもなく"カミソリ坂本"による傑作、飯島さんがこの曲を書いたのは16歳の頃だそうだが、若さ溢れる瑞々しい感性を活かしたまま、坂本氏のそれを包み込むようなポップだが実は重厚な編曲が聴ける

曲の冒頭の生弦の小気味よい短いイントロの後、ドラムとオルガン系のどちらも電子音を中心としたエレクトロポップが続くと、序盤控え目に鳴る生弦が終盤にかけてバランスが変りつつ電子音と複雑だが嫌味なく絡みながら最後は弦厚めのアレンジで終わる、是非その妙は高精細の音源とヘッドフォンで視聴してもらいたい

ちなみにこのブログを書き始めるまで知らなかったのだが、かのNight Tempoが彼女のファンらしく、3年前この曲をサンプリングしたリエディット版をリリースしていたとのこと

趣旨が違うが聴いてみるとこちらもなかなかである

 

 ついでに書くと、彼の追悼も兼ねて、この編曲家 坂本のテーマでレコード会社横断で作品を集めたコンピアルバムが企画されたら本望だ