(その2からの続き)

もう一つ、別の観点として今年2月のアルバムリリースの後に開催されてきたライブ活動についても触れなければならない

東京から遠方の開催公演もあるので全ての内容を把握しているわけではないが、結構頑張って地方公演の様子も確認しているつもりである

それによると、各所ライブの演奏陣はベースとギター(これは石成正人さんのことだが、ご存知の通り「体温、鼓動」のアルバムにギターパートは登場しない)を除き、キーボード、ピアノは「体温…」のレコーディングメンバーを東子さんは起用している

これは「体温…」のリリース以前、ここ数年に限れば指定席的な人選なので特に不思議はないのだが、10月のホールツアーが「体温…」に関連する演奏活動のゴール地点と考えると話が変わって見えるのだ

 

ここで、東子さんが過去に同じサポートメンバーを従えた小規模ライブツアー終盤でよく言ってきた「今夜でこのメンバーによる演奏は終わり」「今宵限りのスペシャルな編成」云々という言葉の裏に、彼女自身がもっと色々な切り口の演奏ができる筈だという、ずっと胸に秘めてきた欲が隠れているのではないか?という問題を提起したい

 

例えば同じ楽器の編成でもステージによってアレンジは勿論、電子楽器の音色も変えて奏でる曲のイメージをコントロールすることができるし、そもそも演奏メンバーの入れ替えによって弾き手の感性に頼る土台的な部分を変えてしまえば、大きくアンサンブルとしての様相が変化する

公演毎にその要素を取り入れて音楽性を再構築したり目新しさを演出することが出来る訳だが、「体温…」リリース以降、東子さんは敢えてそのチョイスは積極的に選択していないように見えるのだ(昔の東子さんは、アルバム、ライブハウス、ホールの演奏陣を意図的に使い分ける傾向があったが、近年は「体温…」制作陣を中心にした「古内組」固定メンバーでの活動カラーが明確だ)

俺が問題にしたいのは、彼女が意図しているのが演奏メンバーを固定しつつ、豪華な大人数の編成によるクオリティの追求ではなく、10月のホールライブを見据えた小人数編成という条件、かつアレンジ面などある程度の演奏スタイルの「縛り」を課した中での演奏としての「エイジング」を狙い、結果的に最良と思える安定の演奏がいつでも出来る布陣でホールライブを開催することをゴールにしているのではないか、という視点である

 

またその推理と関連して「経済学」的な落とし所としての狙いが同時にあると思っている

ここからは今までにも増して完全に妄想の域だが、ホールライブのメンバーが決定した段階(公式にメンバーを発表したのは今年3月のブルーノート公演時で、東子さんとしてはこれは異例の早さだ)で、そこに至るまでの地方を含む各ステージにおいて、例えば「松本圭司さん どことどこの公演合計△回でギャラなんぼ」というサブスク的な契約が演奏陣の各メンバーとの間に結ばれていて、各公演毎の人選を含むマネージメントの手間を減らすとともにギャラのコストをカット、演奏陣からすれば中期的な安定収入が確保できる両者ウィンウィン的な戦略がこの数ヶ月の間、進行していたとは考え過ぎだろうか?

※6月4日ビルボ大阪公演時に当時のメンバー(Pf 松本圭司 Ba 山本連 Dr 菅野智明)のことをドリームチームと称して紹介したらしいが、これが上記で展開してきた古内組長期ロードの所信表明の言い換えであったと思いたい

 

以上、3回に渡りお金の問題として最新アルバム「体温・鼓動」の分析を勝手気ままに書いてみた

実は分析が浅くて書けない内容がまだあったりするのだが、全体の視点のまとまりに影響しそうなので今回はカット、機会があったら番外編として書き進めたいと思う

いよいよ来月芸歴30周年の集大成的ホールライブが開催待ち、過去曲の演奏も踏まえてホーンパートの編成も加わったことが告知された

俺が書いてきた通り、東子さんがこれまでで恐らく一番腐心したであろう30周年記念の準備活動の結果に相応しい演奏をファンに見せてくれるのか、妄言をくどくど書いてきた俺の勝手苦労が報われる内容を期待したい