※貼り付けた画像を含めてかなりの長文になっているので読まれる時は覚悟して頂きたい

 

まず今回の考察(前後編とも)は東子さんが通年開催している弾き語りライブ、及びスポット的イベントでの演奏実績は原則参考にしない 

つまり抽出した演奏データは全て2010年代のバンドライブ編成で演奏した曲(バンドスタイルとしては変則的な2016年のビッグバンドとの共演を含む)とした

 

さて、ご存知ない方々向けに簡単に説明しておくと、BPM(Beats Per Minute)とは1分間あたりの拍数を数えた曲のテンポを表す数値で、これが多い程テンポの早い曲ということになる

これを踏まえて下記10月の品川公演のセトリのオリジナル曲のBPMと収録アルバムのその他の曲の一覧をまずはご覧頂こう(オレンジの背景の曲が品川公演のセトリを表している)

 

 

 

 

 

 

ご覧の通り、アルバム中にはセトリとして選ばれた曲よりBPMの数値がより大きな曲があるのがお判りだろう

つまり決してこの数値ありきで東子さんは「groovy」曲のチョイスをしたのではなさそうだ

次にセトリ順にBPMを並べた結果が以下の表だ

 

 

ご覧のように見事に序盤〜終盤に向けてBPMが増えていく曲順が意図的に選ばれているのが一目瞭然である

それに加えて、観覧された方は是非思い出して欲しいのだが、太枠同色背景で括ってある箇所は曲間をドラム担当の佐野康夫さんによるハイハット、バスドラ4ビート、ドラムイントロ等の演奏で繋いだメドレー構成になっており、東子さんのライブでは珍しいノリを切らさずgroovy感を高める演出が用意されていた

ところで、佐野康夫さんというドラマーはレコーディングや同期音源に合わせた演奏という制約下では、正確なリズムを刻みつつ微妙なタイミングのズレ、所謂跳ねた演奏でグルーブを生み出すのに長けたことで知られているが、例えばライブでテンポコントロールが必要がない場合は曲のスタートと終了時のBPMが10も違う、などという真偽が定かでない書き込みがwebで見られるような生粋のノリ重視のドラマーという評価もある

品川公演当日の演奏でも、今となっては検証しようもないが、明らかにその一瞬一瞬のテンポが瞬間的に直前より早くなったと感じる箇所が何箇所かあった 

これは佐野さんがサポートを務めた昔の東子さんのライブでも感じたことがある感覚だったので、今回のブログを企画するにあたり大変興味を覚えたポイントとなった

そこであるルートを通じてライブのバンマスを務める河野伸さんに直接問い合わせてみると、なんと、今回のライブは同期音源の用意がなく、リズムに関しては完全に佐野さんのリードに合わせた演奏だったという

因みにセトリの選曲については河野さんは関与していないそうで、東子さんが中心となってオリジナル曲のBPMの数値を参考にして、ライブ演奏時にリズムを支配する佐野さんによる終盤まで会場が一体となる高揚感が持続するリードによって最大限のノリが生まれる選曲と演出、これが古内東子的grooveの正体の一端であるとは決して言い過ぎではないだろう

 

前編の結論としてはこうなったのだが、しかし検証過程で実はセトリ選曲について他の理由が浮かび上がってきたのだ

実はその伏線が2019年前半、いやもっと以前から巧妙に貼られていたようなのだ

後編では選曲時の動機となったもう一つの要素について解説してみたい