朝日新聞の2~3日前の朝刊に
生物学者の本川達雄さんが
コラムにコメントを寄せていた
少し長くなるが、
『命が延びて不安が増えた』という
タイトルのコラムの導入はこうだ

『細胞の老化を遅らせて長生きできるようにする
長寿遺伝子の研究ですか? 
聞いたことはありますが・・・。
「長生きしたい」とか、あらゆる人間の欲望に
火をつけるのが、医療や科学技術です。
満たされれば「もっと長く」となって、きりがない。
永遠に生きたいね、となっちゃう。』

本川さん曰く、老後とは
医療と科学技術が作り出した「命」であり
生物学上、次世代を産んで適当なところで
消えてリレーをつなぐ、そのシステムが
本来の生き物としての「命」であるという

なるほど、極論的なロジックが
見え隠れするものの、
この理屈なら
年金を含めた高齢化社会問題、医療費の他
若者の就職問題などに対して、
完全な解法とはならなくても、
今よりは柔軟な対応が検討できそうだ

先日世界の総人口が70億人を突破したという
人口増加を加速させているのは
先進国ではく新興国や途上国であり、
多少の色違いがあるものの、
各国の基本的な年齢構成はピラミッド型をなす
そこでは上記のようなロジックに基づいた
世代間のリレーが、少なくとも日本の
現状よりは機能しているように感じられる
その違いが、医療、そして原発の運用を
含めた科学技術の発展によると
本川氏は説いている
また彼は、先の震災後の電力不足などで
高齢化社会が実にこうした科学の力に
負っていることが明らかになって、
しかしそれをまた科学が克服して
僕らは、長生きに対する不安を
忘れて、余生を享受できると信じる
日々が再来する、という

自分が思うに、「人道上」という
もっともらしい文句を並べつつ
その構図を利用するのが
科学者であり、いやらしくも経済活動を
先導する企業なのである
ギリシャやイタリアの財政問題を
見ても分かるとおり、
社会の成熟にともなって、人間の業としての
この課題のつけの先送りに
待ったをかけられているのだ