『持たざるもの』 | 洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

大正時代に金沢市を見下ろす卯辰山の山麓に時計台が建築され、洋風文芸館として今に残っています。文芸館の管理人”おにょにょ”は映画や文学、ときに音楽をこよなく愛する奇妙な生き物です。このブログはその”おにょにょ”が愛する作品達を、備忘録として残したものです。

私は持たざるもの

今朝の空は高く、私だけが愉しんでいる

教室の椅子に腰掛けて空を眺める

重たい体と太くなった腰回りに窮屈なズボンがみすぼらしい

高い青い虚空を眺めるとき私の魂は其所にある

 

私は持たざるもの

余計なものはすべて置いてきた

それなのに気づけばいろんなものがぶらさがっている

重くて身動きがとれないこともある

ぶらさげたのは当の本人だというのに

 

私は持たざるもの

積み上げたものはもう崩れ去った

船の航跡のように儚いものだ

薄紅の泡だけが私の道のりを知っている

それでいい、泡を抱いて寝るとするか