『鉄の扉が鳴る』 | 洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

大正時代に金沢市を見下ろす卯辰山の山麓に時計台が建築され、洋風文芸館として今に残っています。文芸館の管理人”おにょにょ”は映画や文学、ときに音楽をこよなく愛する奇妙な生き物です。このブログはその”おにょにょ”が愛する作品達を、備忘録として残したものです。

鉄の扉が鳴る

静まりかえった団地に響いている

扉のむこうにはシンデレラがいるという

醜いアヒルの子は扉のこちらで腹をする

がらんとした六畳間

アヒルはシンデレラを仰ぎ見る

アヒルはシンデレラと一緒にいたくてたまらない様子である

こんなアヒルを見るのは珍しい

時間は過ぎ去る

ベルはアヒルに別れを告げシンデレラは去って行く

アヒルが思いを伝えたくても届くわけもなくかなうわけでもない

アヒルは羽をばたつかせてシンデレラを見送った

鉄の扉が鳴る

アヒルはいつもシンデレラを夢見ている

鉄の扉が鳴るたびに

アヒルの心は高鳴るのだ