鉄の扉が鳴る
静まりかえった団地に響いている
扉のむこうにはシンデレラがいるという
醜いアヒルの子は扉のこちらで腹をする
がらんとした六畳間
アヒルはシンデレラを仰ぎ見る
アヒルはシンデレラと一緒にいたくてたまらない様子である
こんなアヒルを見るのは珍しい
時間は過ぎ去る
ベルはアヒルに別れを告げシンデレラは去って行く
アヒルが思いを伝えたくても届くわけもなくかなうわけでもない
アヒルは羽をばたつかせてシンデレラを見送った
鉄の扉が鳴る
アヒルはいつもシンデレラを夢見ている
鉄の扉が鳴るたびに
アヒルの心は高鳴るのだ