剣岳 点の記 | 公務員ってこんなもん。

公務員ってこんなもん。

ある地方公務員の日常。
仕事もプライベートも、日記を通して公務員の実際をつづります。
なぞの職業「公務員」もこれで完璧?

見てきました。

映画としては、事前の論評どおり

カメラマン出身の監督だけに

見せ方、撮り方はすばらしいが

それだけという観があり

見ていても非常に記録映像的な

感じを持ちました。

しかし、さすがにCGに頼らず

現場での撮影にこだわっただけあって

山の美しさ、厳しさ、迫力は

十分に感じられたように思いました。

この映画は、家庭でDVDで見る作品ではないですね。

大画面であの迫力を感じなければ、見る意味はないと思います。



ところで

この映画は、旧陸軍測地部、つまり現在の国土地理院の物語です。

三角点の設置と、地図を作ることに命をかけた人たちのストーリーであり

史上初めて(だと思います。違ってたらごめんなさい)国土地理院が撮影協力を行った映画でしょう。

そして、映画としての盛り上がりが少ないということは

すなわち、国土地理院という官庁としての立ち位置を表しているでしょう。

つまりは、歴史において地図作りとは常に黒子なのです。

仕事の上で、以前国土地理院の三角点設置作業に同行しました。

まさに、この映画での作業と同じものを経験させていただいたわけです。

この映画のような、山岳部への三角点設置はほぼ終了し

最近はまちの周辺へでの作業がほとんどではありますが

それでも以前設置された三角点との測量をする必要性から

古い三角点が設置された山の上にも、今でも登ります。

測量作業自体は、GPS測量ができるようになり、精度はあがりましたが

三角点同士で測量をすること。

新たな三角点の設置のために、石の柱を運んで埋設すること。

車で近くまではいけるようになりましたが、最後は人の力で運ぶこと。

など、映画で描かれた測量風景と、基本的な部分は今でも変わりません。

こうした表に出ない測量士さんたちの力で、正確な地図作りが今でも行われているわけです。


以前、国土地理院の人たちと一緒に仕事をしたときに聞いた話を思い出します。

「山登りをした人たちが見る地図に描かれた登山道が間違っていて、遭難をした場合、その原因は地図の間違いにある。それを防ぐためには、絶えず正確な地図を作り続ける必要がある。
そのために、われわれは今でも山に登り、正確な地図を作る努力をしている」

地図はいつも、誰がどうやって作ったかなんて考えないで使われます。

でも、この映画を見て、地図がどれだけの人の努力と、熱意でできているか

少しでも感じていただければ、というのが

地図作りに少しだけ関わった人間としての、感想です。